解雇無効時における金銭救済制度の報告書が公表 今後は労働政策審議会にて検討
先日、厚生労働省より「透明かつ公正な労働紛争解決システム等の在り方に関する検討会」の報告書が公表されました。この検討会は、「日本再興戦略」改訂2015などを踏まえ、20回にわたって開催されてきており、今回の報告書はその中で検討された内容がまとめられたものになります。
この報告書では、個別労働関係紛争解決システムの改善と解雇無効時における金銭救済制度についての議論の内容が記載されており、解雇無効時における金銭救済制度については、以下のような考えが記載されています。
[金銭的予見可能性を高める方策]
紛争の迅速な解決を図るとともに、裁判等における金銭の算定について予見可能性を高めることが重要であり、そのため、解消対応部分(+その他慰謝料的な「損害賠償的部分」)については、上記の金銭の性質を踏まえ、一定の考慮要素を含め、具体的な金銭水準の基準(上限、下限等)を設定することが適当であると考えられる。この点については、今後の議論において、事案は多様であり上限、下限等を含め金銭水準の基準を設定すべきではないとの意見や、上限設定は不当な解雇を誘発しかねないとの意見、本来考慮すべき要素を切り捨てることにつながり得るとの意見があったことを斟酌することが適当である。
[時間的予見性を高める方策]
その具体的な期間については、
・迅速性という制度趣旨に鑑みれば、賃金債権の消滅時効の期間(現行2年)に合わせることが考えられる
・民法の改正も踏まえると、一般債権の原則である「権利者が権利を行使することができることを知った時から5年」より短くすることはあり得ない
・解雇の有効・無効の立証の観点からも、5年という期間設定は人的・物的な立証上の問題から困難。解雇に関する重要な書類の保存期間も、現在は3年とされている(労働基準法第109 条)
等の意見があり、今後、民法改正の動向を踏まえつつ、議論を進めるとしています。
検討会では十分に意見がまとめ切れなかったという印象も残りますが、この解雇無効時における金銭救済制度は、今後、労働政策審議会における検討を進めるとしており、今後、法整備への検討が行われることになっています。
参考リンク
厚生労働省「「透明かつ公正な労働紛争解決システム等の在り方に関する検討会」の報告書をとりまとめました」
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000166366.html
(福間みゆき)
当社ホームページ「労務ドットコム」にもアクセスをお待ちしています。
最新情報の速報は「労務ドットコムfacebookページ」にて提供しています。いますぐ「いいね!」をクリック。
http://www.facebook.com/roumu
当ブログの記事の無断転載を固く禁じます。