労基署によるサービス残業の是正指導 昨年度より増加し約127億円の支払いを指導

労基署によるサービス残業の是正指導 先月、厚生労働省は「監督指導による賃金不払残業の是正結果(平成28年度)」を公表しました。これは全国の労働基準監督署が賃金不払残業に関する労働者からの申告や各種情報に基づき企業への監督指導を行った結果、平成28年4月から平成29年3月までの間に不払いになっていた割増賃金が支払われたもののうち、その支払額が1企業で合計100万円以上となった事案の状況を取りまとめましたものになります。その結果は以下のとおりとなっています。
是正企業数 1,349企業(前年度比1企業の増)
支払われた割増賃金合計額   127億2,327万円(同27億2,904万円の増)
対象労働者数 97,978人(同5,266人の増)
支払われた割増賃金の平均額 1企業当たり943万円、労働者1人当たり13万円

 グラフを見れば分かるとおり、「支払われた割増賃金合計額」は増加に転じ、これを業種別にみてみると、企業数が最も多いのは商業304企業(全体の22.6%)、製造業267企業(同19.8%)、その他の事業160企業(同11.9%)、保健衛生業158企業(同11.7%)の順となっています。

 また賃金不払残業の解消のための取組事例が4つ紹介されており、以下では木材・木製品製造業の事例をとり上げましょう。
【賃金不払残業の状況】
・インターネット上の求人情報等の監視情報を受けて、労基署が立入調査を実施。
・会社では、労働者が「申告書」に記入した超過勤務時間数により賃金計算を行っていたが、パソコンのログ記録とのかい離、夜間の従業員駐車場の駐車状況、労働者のヒアリング調査結果などから、賃金不払残業の疑いが認められたため、労働時間の実態調査を行うよう指導。
【企業が実施した解消策】
・会社は、パソコンのログ記録や警備システムの情報などを用いて調査を行い、不払いとなっていた割増賃金を支払った。
・賃金不払残業の解消のために次の取組を実施した。
(1)代表者が「賃金不払残業撲滅宣言」を行うとともに、全店で説明会を開催した。
(2)「申告書」とパソコンのログ記録に30分以上のかい離が認められた場合には、理由を明記させ、所属長の承認を得ることとした。
(3)総務部職員が定期的に、労働時間が適正に把握されているかについて実態調査を行い、必要な指導を行うこととした。

 この事例のように、パソコンのログ記録とのかい離がみられることがあるため、企業としても実態に問題がないか確認し、問題があれば早めに対策を行いましょう。併せて、2017年1月20日に「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン 」が策定され、現在はこのガイドラインに基づいて指導が行われていることから、こちらも目を通しておきましょう。


参考リンク
厚生労働省「平成28年度の監督指導による賃金不払残業の是正結果を公表します」
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000174218.html
厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」
http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/dl/151106-06.pdf

(福間みゆき)

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