過労死事案等で労働時間の的確な把握等を再度指示した厚労省の通達

tuutatu 例年2月に発出されることが恒例となっている通達「労災補償業務の運営に当たって留意すべき事項について」について、来年度のものが2019年2月19日に発出されました。来年度も今年度と同様に、以下の3つの事項を重点的に推進するとのことになっています。
①過労死等事案などの的確な労災認定
②迅速かつ公正な保険給付を行うための事務処理等の徹底
③労災補償業務の効率化と人材育成

 昨年から内容が大きく変更になった印象は受けないものの、過労死等事案に係る的確な労災認定を行うために、労働時間の的確な把握を以下のように再度、指示しています(昨年度の通達から若干の変更あり)。
「労災認定のための労働時間は、労働基準法第32条で定める労働時間と同義であり、その把握に当たっては、労働者が使用者の指揮命令下に置かれていたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであることに留意の上、当該労働者の労働時間の把握に当たっては、使用者の指揮命令下にあることが認められる時間を的確に把握すること。そのためには、タイムカード、事業場への入退場記録、パソコンの使用時間の記録等の客観的な資料を可能な限り収集するとともに、上司・同僚等事業場関係者からの聴取等を踏まえて事実関係を整理・確認し、始業・終業時刻及び休憩時間を詳細に特定した上で、当該労働者が実際に労働していると合理的に認められる時間を的確に把握すること。その際、事業場において休憩時間とされている時間であっても、黙示を含む使用者の指揮命令に基づき労働者が業務に従事している、又は手待時間と同様の実態が認められるなど労働からの解放が保障されていない場合には、労働時間として算入すべきことに留意すること。

 これに加え、4月から高度プロフェッショナル制が始まることから、適用対象者の場合には事業主に把握が義務付けられる健康管理時間について「労働時間の特定に当たっては、健康管理時間の記録も参考とすること。」と追記されました。

 また、法制化が検討されているパワー・ハラスメント(嫌がらせ、いじめ)による精神障害事案について、以下のように昨年度のものより踏み込んだ内容が盛り込まれています。
「上司、同僚等からの聴取等の調査を尽くした上で、業務による出来事の事実認定を行っているところであるが、特に、請求人が嫌がらせ、いじめを主張する事案については、関係者が相反する主張をする場合がある。このため、当事者の事業場内における役割、指揮命令系統を把握した上で、できる限り客観的な第三者から聴取等を行い、業務指導の範囲を逸脱した言動等の有無につき、確認を行った上で、嫌がらせ、いじめに該当するか否かの判断を行うこと。」

 そのほか、4月に改正入管法の施行されることに伴い、「外国人労働者への懇切丁寧な対応」も指示しており、労災保険制度の周知及び請求勧奨の取組、相談対応指示し、労働局や労働基準監督署の相談について、平成31年度から対応言語を6言語から8言語(英語、中国語、ポルトガル語、スペイン語、タガログ語、ベトナム語、ネパール語、ミャンマー語)に増やすことが予定されていることも周知しています。
↓平成31年度の「労災補償業務の運営に当たって留意すべき事項について」はこちらで確認できます
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T190220K0010.pdf


参考リンク
法令等データベース「労災補償業務の運営に当たって留意すべき事項について(平成31年2月19日労災発0219第1号)」
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T190220K0010.pdf


(宮武貴美)
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