変容するわが国の人事制度 急増する役割・職務給の導入
近年、深刻な人材不足の状態が続いていることもあり、企業の人事制度改定の取り組みが積極的に進められているという印象を強く受けています。更に来週には大企業、2021年4月には中小企業での施行される同一労働同一賃金、更にはその後やってくる70歳までの継続雇用制度の導入という流れの中で、我が国の人事制度は大きく変容していくことが予想されます。そこで今回は、先日、日本生産性本部が公表した「第16回日本的雇用・人事の変容に関する調査」の中から、賃金体系の経年変化についての結果を見てみたいと思います。なお、この調査は上場企業1,947社の人事労務担当者を対象に実施されたもので、回答企業は102社となっています。
この調査では、役割・職務給、職能給、年齢・勤続給それぞれについて管理職層、非管理職層にどの程度導入されているかを尋ねています。その結果は以下の通りとなっています。
管理職層
役割・職務給 78.5%
職能給 57.8%
年齢・勤続給 26.7%
非管理職層
役割・職務給 57.8%
職能給 76.5%
年齢・勤続給 47.1%
この経年変化は左上のグラフを見ていただくとよく分かりますが、特に管理職層では、年々、役割・職務給の割合が増加し、職能給が徐々に減少してきていることが分かります。一方、非管理職同についてはまだまだ職能給が根強く採用されていますが、役割・職務給の割合が急増しているのは管理職層と共通しています。
今回の法改正による同一労働同一賃金の導入においては、その際の説明責任が企業に課せられることを考えれば、どうしても曖昧になりやすい職能給よりも役割・職務給を選択するというケースは増加すると予想されます。また労働時間短縮の流れからも、時間に関わらず、役割の達成度や成果で評価する必要性が高まっており、やはり役割や職務に基づいた人事評価制度・賃金制度の導入を後押ししていくことになるでしょう。
一方で、特に非管理職層においては人材育成という大きな課題も存在しますので、現実的には役割や職務の明確化と共に、職務遂行能力を高めるような仕組みを人事制度の中で明らかにしていくことが求められます。いずれにしても、かつてないレベルで人事制度の再構築が重要なテーマになっていくことは間違いありません。
参考リンク
日本生産性本部「第16回日本的雇用・人事の変容に関する調査 結果概要」
https://activity.jpc-net.jp/detail/esr/activity001561/attached.pdf
(大津章敬)
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