未来投資会議が案を示した70歳までの就業機会確保努力義務化の方向性

70歳まで 今朝の日本経済新聞トップにも掲載されておりましたが、昨日(2019年6月5日)、未来投資会議において「成長戦略実行計画案」が提示されました。この中で、2019年5月16日のブログ記事「【超重要】未来投資会議 70歳までの継続雇用制度の概要案を公表」でも取り上げた70歳までの就業機会確保の内容がより具体的に示されています。

 以下ではその該当箇所を引用しましょう。


(多様な選択肢の許容)
 人生100年時代を迎え、働く意欲がある高齢者がその能力を十分に発揮できるよう、高齢者の活躍の場を整備することが必要である。高齢者の雇用・就業機会を確保していくには、70歳までの就業機会の確保を図りつつ、65歳までと異なり、それぞれの高齢者の特性に応じた活躍のため、とりうる選択肢を広げる必要がある。
 このため、65歳から70歳までの就業機会確保については、多様な選択肢を法制度上許容し、当該企業としては、そのうちどのような選択肢を用意するか、労使で話し合う仕組み、また、当該個人にどの選択肢を適用するか、企業が当該個人と相談し、選択ができるような仕組みを検討する。

 法制度上許容する選択肢のイメージは、
(a)定年廃止
(b)70歳までの定年延長
(c)継続雇用制度導入(現行65歳までの制度と同様、子会社・関連会社での継続雇用を含む)
(d)他の企業(子会社・関連会社以外の企業)への再就職の実現
(e)個人とのフリーランス契約への資金提供
(f)個人の起業支援
(g)個人の社会貢献活動参加への資金提供
が想定しうる。

 企業は(a)から(g)の中から当該企業で採用するものを労使で話し合う。それぞれの選択肢についての企業の関与の具体的な在り方について、今後検討する。

(第一段階の法制整備)
 70歳までの就業機会の確保を円滑に進めるためには、法制についても、二段階に分けて、まず、第一段階の法制の整備を図ることが適切である。第一段階の法制については、法制度上、上記の(a)~(g)といった選択肢を明示した上で、70歳までの就業機会確保の努力規定とする。また、必要があると認める場合は、厚生労働大臣が、事業主に対して、個社労使で計画を策定するよう求め、計画策定については履行確保を求める。

(第二段階の法制整備)
 第一段階の実態の進捗を踏まえて、第二段階として、現行法のような企業名公表による担保(いわゆる義務化)のための法改正を検討する。この際は、かつての立法例のように、健康状態が良くない、出勤率が低いなどで労使が合意した場合について、適用除外規定を設けることについて検討する。

(提出時期及び留意点)
 混乱が生じないよう、65歳(現在63歳。2025年に施行完了予定)までの現行法制度は、改正を検討しないこととする。手続き的には、労働政策審議会における審議を経て、2020年の通常国会において、第一段階の法案提出を図る。

(年金制度との関係)
 70歳までの就業機会の確保に伴い、年金支給開始年齢の引上げは行わない。他方、年金受給開始の時期を自分で選択できる範囲(現在は70歳まで選択可)は拡大する。加えて、在職老齢年金制度について、社会保障審議会での議論を経て、制度の見直しを行う。

 このような取組を通じ、就労を阻害するあらゆる壁を撤廃し、働く意欲を削がない仕組みへと転換する。

(諸環境の整備)
 高齢者のモチベーションや納得性に配慮した、能力及び成果を重視する評価・報酬体系構築の支援、地方公共団体を中心とした就労促進の取組、キャリア形成支援・リカレント教育の推進、高齢者の安全・健康の確保など、高齢者が能力を発揮し、安心して活躍するための環境を整備する。

 また、女性会員の拡充を含めたシルバー人材センターの機能強化など、中高年齢層の女性の就労支援を進める。


 「個人の社会貢献活動参加への資金提供」とはどのような内容を指すのかなど、具体的な内容は分かりませんが、来年の通常国会に法案を提出することなどが明確に示されています。このテーマについては今後も重点的にチェックしていきたいと思います。


関連blog記事
2019年5月16日「【超重要】未来投資会議 70歳までの継続雇用制度の概要案を公表」
https://roumu.com
/archives/52171007.html

参考リンク
未来投資会議「未来投資会議(第28回) 配布資料」
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/dai28/index.html

(大津章敬)

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