内定者が鼻ピアスをして来ました!

 先週の金曜日、大熊は就業規則の不利益変更に関するある弁護士さんのセミナーに参加した。大熊は賃金制度や退職金制度などの改定も多く手掛けているので、ノイズ研究所事件など、成果主義人事制度の導入をめぐる最近の裁判例について押さえておきたかったのだ。セミナーでは簡潔にそのポイントを聞くことができ、この情報をお客様にフィードバックしなければならないなぁと思っていたところ、携帯電話の着信音が鳴った。



大熊社労士:
 はい、大熊です。
宮田部長宮田部長:
 あぁー、良かった、繋がって。服部印刷の宮田です。大熊さん、また社内で困った問題が起きまして….。週明け早々にも社長の服部が面談のお時間を頂戴したいと申しておるのですが、ご予定はいかがでしょうか?
大熊社労士:
 はい、分かりました。今週は月曜日が祝日ですので、火曜日の朝9時でいかがでしょうか?お伺いさせて頂きます。



「宮田部長、なんだかいつも以上に焦っている感じがする。何かトラブルでもあったんだろうな。嫌な予感がするなぁ」。大熊は直感的に思ったのであった。そして火曜日の朝…。



大熊社労士:
 おはようございます!大熊です。服部社長にお約束を頂いておりますが。
服部社長服部社長:
 おぉ、おはようございます、大熊さん。連休明けの朝一番にお呼びたて、すみませんね。さあさあ、お上がり下さい。
大熊社労士:
 はい、ありがとうございます。金曜日の宮田部長のご様子だと、何かトラブルでも発生したのではないかと思っているのですが。
服部社長:
 えぇ、そうなんですよ。まあ、状況は宮田部長から説明してもらうことにしましょう。
宮田部長:
 はい、当社では4月に3人の新入社員が入社します。先日、入社まで2ヶ月ということで、社員との懇親を目的に、当社の新年会に参加させたのですが、その際、男性の内定者の一人が、鼻に大きなピアスをしてやって来たそうなのです。社長も私もその日は業界団体の会合があって、実物は見ていないのですが、社員からの報告によると文字通り、目を疑ったというのです。
大熊社労士:
 それは大変でしたね。その日は特にそれ以上の動きはありませんでしたか?
服部社長:
 えぇ、翌日に当日の参加者から報告がありまして、それで急いで大熊さんにお電話させていただいたのです。
大熊社労士:
 そうですか、分かりました。それで服部社長としてはこの内定者をどのようにされるおつもりでしょうか?
服部社長:
 はい、それが今日の相談事項なのですが、さすがにこのまま勤務させるわけにいかないので、ピアスを外すのか、さもなければ内定を取り消したいと思っています。
大熊社労士大熊社労士:
 なるほど。日本ではまだまだピアス、それも今回のような鼻や唇など、耳たぶ以外へのピアスは社内的な認知も低いので、禁止されている会社がほとんどでしょう。また御社の就業規則では、服務規律の中で「服装などの身だしなみについては、常に清潔に保つことを基本とし、他人に不快感や違和感を与えるようなものとしてはならない」と記載されています。さすがに「鼻ピアス禁止」とまで具体的には書かれていませんが、御社の社員さんの場合は、営業だけではなく、製造現場の方も外部のお客様と打ち合わせなので顔を会わせることが多いことを考えれば、鼻ピアスは禁止されると考えて問題ないでしょう。
宮田部長:
 そうですよね。それが当然と思うのですが、表現の自由だとか言われないものでしょうか?
大熊社労士:
 あくまでも会社で働くということは、就業規則などで定められたルールの中で勤務する必要があります。もちろん仕事にまったく関係のない事項まで禁止するのは、権利の濫用として認められませんが、今回は職場の最低限の秩序、そしてお客様との良好な関係を保つために必要な最低限度の制限ですから、仕方がありません。まずは本人に連絡を取って、一度面談の場を設けてはいかがでしょうか。その場で就業規則の説明もしながら、入社にあたっては鼻ピアスは認められないので、外すようにと伝えてください。まあ、大学生活の最後で、少し羽目を外してしまっただけでしょう。話せば分かってくれますよ
服部社長:
 そうですね、ありがとうございます。少し安心しました。しかし、私の娘も耳にはピアスをしていますが、男性で鼻に穴を開けているとはびっくりしてしまいました。ありがとうございました。


>>>to be continued


[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイスこんにちは、大熊です。今回は労働時間から離れ、問題社員の対処方法について取り上げてみました。今回は容姿について問題のある社員が登場しましたが、かつては茶髪が多くの企業で問題となりましたが、最近はヒゲを生やしていたり、ボディピアスやタトゥー(刺青)などをしている社員についての相談を受けることが増えてきています。いずれもそれが他の社員やお客様の目に触れるような場合には、服務規律違反として指導や懲戒の対象となると考えることが一般的でしょう。もちろんこの基準は、会計事務所職員と炭鉱労働者のように、その業種や仕事の内容、社風が変われば、当然変わってきますので、ピアス=懲戒というように一律に考えることは適当ではありません。こうした問題は今後、年々増加すると思われますので、場合によっては社内の服装等のガイドラインを定めることも有効でしょう。


(大津章敬)


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