配偶者の兄弟姉妹が亡くなったときの特別休暇はどのようにすればよいの?

 大熊は今日も定期訪問で服部印刷を訪問していたが、60歳以降の継続雇用制度の問題も解決し、一安心という雰囲気が流れていた。いつものように社長室で服部社長、宮田部長と面談をしていると、総務の福島が相談があるということで、社長室にやって来た。



福島照美福島さん:
 ご面談中失礼します。いま三沢係長から、奥さんのお兄さんが亡くなったという電話連絡が入りました。2日程度休みをもらいたいのだが特別休暇が利用できるのかと聞かれたのですが、どのように返答したらよいでしょうか?
服部社長:
 そうか、先日も三沢係長から具合が悪いとは聞いていたのだが、残念なことだな。
宮田部長宮田部長:
 えっと、就業規則の記載はどうなっていたかな?どれどれ、あぁ、あったあった。確かにわが社の就業規則では、「兄弟姉妹の死亡の場合 2日」の特別休暇を与えるとなっているね。しかし、これは実の兄弟姉妹をイメージして作成していたはずで、配偶者の兄弟姉妹の死亡で問い合わせがあったのは初めてだなぁ。大熊先生、どうしたらよいでしょうか?
大熊社労士:
 そうですねぇ、兄弟姉妹といえば一般的には実の兄弟姉妹を指しますが、現在の規定では、配偶者の兄弟姉妹も適用になると解釈できますね。三沢係長が葬儀が終わって出勤されたときに話し合って特別休暇の取扱いは実の兄弟姉妹のみのため有休で処理してもらいたいことを伝えるか、これを機会に義理の兄弟姉妹も特別休暇扱いにするかのどちらかでしょうね。
服部社長:
 三沢係長も話せば分からない人ではないので、出勤したら有休で処理してもらうよう私から話をしてみよう。しかし、規定であまり細かく書き過ぎると分かりにくくなるし、書き足りないと曖昧になるので、表現はなかなか難しいですね。ところで福島さん、葬儀の場所は分かるかね。
福島さん:
 はい、連絡を受けた際に確認しておきました。当社からですと、車で約1時間のところです。式の時刻と会場までの地図を用意しておきます。
大熊社労士:
 社長ご自身で参列されるのですか?
服部社長服部社長:
 できるだけそうしていますよ。もちろん、都合で行けないときもありますが、そのときは宮田部長に代わりに参列してもらうようにしています。親族が亡くなるということは、とても悲しいことです。社員はわが社としては家族のようなものですから極力参列するようにとの、先代からの教えを引き継いでいます。
大熊社労士:
 それは素晴らしいですね、感激しました。社員を思いやる気持ちと心遣いが服部印刷の現在の良い社風を生み出しているのでしょうね。ところで、特別休暇は会社内の慣習で取り扱いが決まっていればそれに基づいて対応することが一般的でしょうが、今回の問い合わせのようなケースもありますので、特別休暇の規定を改定し、実の兄弟姉妹と配偶者の兄弟姉妹を区分しておくと明確になるでしょう。
宮田部長:
 先生、ついでにお聞きしますが、特別休暇に土曜や日曜をはさむ場合は、どのように考えればよいのでしょうか?休日をその日数に含めるのか、含めないのか?
大熊社労士大熊社労士:
 良いご質問をいただきました。もとから労働義務のない休日に休暇は成立しないと考えられますので、疑問を持たれて当然です。ただ、特別休暇については労働基準法などに規定されているわけではありません。よって会社の裁量で決定することになります。兄弟姉妹の区分と同様、その取り扱いを決めておく必要があります。もし休日を含むのであれば「特別休暇は暦日で計算し、休日を含む」というように明記しておいた方が良いでしょう。一例を挙げてみましょう。
本人が結婚する時 7暦日
配偶者、子、実父母が死亡したとき 5暦日
実の兄弟姉妹及び祖父母、配偶者の父母が死亡したとき 3暦日(但し、喪主を務める場合は5暦日)
配偶者の祖父母及び兄弟姉妹が死亡したとき 2暦日(但し、喪主を務める場合は3暦日)
天災事変のためのやむをえないとき 会社が必要と認めた暦日数
その他、前各号に準じ会社が必要と認めたとき 会社が必要と認めた暦日数
 また、この特別休暇は有給なのか、無給なのかも明示しておく必要があります。例えば、有給の扱いとする場合は「特別休暇については所定労働時間労働したときに支払われる通常の賃金を支払うものとする」と記載します。
服部社長:
 わかりました。どのような表現がよいのか検討してみたいと思います。


>>>to be continued


[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。今回は「特別休暇」について取り上げてみました。特別休暇は、労働基準法上などの法令に基づいて与えるものではなく、企業としては福利厚生の一環として恩恵的に与える休暇になります。しかし、一旦就業規則などで規定をすると、社員にとっては請求できる権利となります。そこで、無用なトラブルを防止する観点から、運営が曖昧にならないように付与する事由(対象)、休暇の日数、請求の手続き、休暇中の給与の有無、試用期間中やパートタイマーなど正社員以外の者の適用はあるのかなど、ルールを明確にしておく必要があります。また、実務的には、例えば午前中仕事をし、午後から忌引のため早退したときの特別休暇の取り扱いをどうするのかなどを取り決めておく必要があるでしょう。その日一日を特別休暇に含めてとして取り扱うこともできますが、特別休暇を無給としている場合は、早退した日の午前中の賃金は支給しなければならないことはいうまでもありません。



関連blog記事
2007年6月1日「慶弔見舞金規程」
http://blog.livedoor.jp/shanaikitei/archives/54367891.html
2007年1月20日「休暇(欠勤)届」
http://blog.livedoor.jp/shanaikitei/archives/51723593.html


参考リンク
労務行政研究所「慶弔休暇の日数に休日を含めて定めることは、法令上可能か」
http://www.rosei.or.jp/service/faq/faq0/faq0403_04.html


(鷹取敏昭)


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