中小企業に影響の大きいパートタイム労働法の改正 その2

 来年4月から施行されるパートタイム労働法の改正のポイントについて、大熊社労士から説明を受けている服部社長と福島さん。大企業より中小企業の方が影響が大きいという説明が理解できなかったため、詳しい説明を求めた。



服部社長:
 大熊さんは大企業より中小企業への影響が大きいと言われましたが、どういうことでしょうか。大企業の方がパートの数は多いので、対応は大変だと思いますが。
大熊社労士:
 確かに大企業は最近パートの雇用をかなり増やしているというデータがありますので、就労条件が異なるパートの労務管理は今回のいろいろな義務化で大きな負担になるであろうと予測しています。
福島さん:
 それでもあえて中小企業への影響が大きいというのは何故でしょうか?
大熊社労士大熊社労士:
 今回の改正内容の中でももっとも影響が大きいとされる「均等のとれた処遇の確保の推進」について考えてみましょう。パートタイマーの雇用が、正社員と比較して「業務の内容や責任」「人事異動(配置転換)の有無や範囲」「契約の期間」のすべてにおいて同じと判断されると、正社員と同等の処遇で取り扱うようにしなければなりません。パートという名称だけで差別的に取扱うことを禁止しているのです。
福島さん:
 そのことは厚生労働省のホームページで改正情報が出ていましたので、知っています。でも、正社員と同等のパートはいるのだろうかと思いました。
大熊社労士:
 大企業では、正社員の人事制度は独自のものが構築され、運用されています。パートにも能力に応じた人事制度を作って運用されている会社が出てきているようですが、人材活用の範囲でみれば、やはり正社員のものとは違うでしょう。また、勤務場所や配置において限定して雇用契約を結んでいることが殆どのパートと、配置転換や人事異動が当たり前の正社員とでは大きな違いだと思われます。ですから大企業では正社員とパートとの労働の形が同じであるケースは少ないのではないかと思います。
服部社長服部社長:
 それは理解できます。妻の友人も大手流通会社でパートとして10年以上働いているベテランですが、正社員の場合は入社して2~3年もすればかなり幅広い範囲の仕事と責任を持たされており、また定期的に異動もあるようなので、パートとの差は大きく違うといっています。
大熊社労士:
 そうですね。それでは中小企業の場合はどうでしょうか?例えば、事業所が一つしかない会社で、職種によっては正社員であっても配置換えや昇進もない場合、同じ職種で働くパートも当然配置換えや昇進はありませんので、「人材活用の仕組み」は同じと考えられます。そして、正社員が定型的な業務しかしておらず責任の程度もそれほど大きくないケースでは、それと同じような仕事をベテランのパートがやっている場合には「職務」も同じと考えられます。
福島照美福島さん:
 一般事務を考えれば比較的分かりやすいかもしれません。正社員であっても配置転換や昇進のない会社はあります。働く時間の長さの違いはありますが、正社員とパートとがほぼ同じような仕事内容で、責任も大きく違わないとすると「人材活用の仕組み」「職務」は同じと考えられます。そういうことですよね、大熊先生。
大熊社労士:
 さすが福島さん、察知が早いですね。さらに、そのベテランパートの雇用契約が長期間働き自動更新の契約によって事実上「無期の契約期間」であると、このベテランパートは正社員と同視すべきとして、正社員との差別的取扱いは禁止されます。このようなケースは、中小企業では結構考えられると思いますがいかがでしょうか?
服部社長:
 確かにそういわれてみれば、職務内容や人材活用の範囲が狭いのが中小企業ですから、正社員とパートとの差は大企業に比べると少ないでしょう。
大熊社労士:
 福島さんは一般事務を例に挙げてくれましたが、他にも小規模の小売店舗や工場などでもよく確認してみれば同様のケースが出てくる可能性があるでしょう。御社では、残業の有無やクレーム対応などで仕事の内容や責任に違いがあるため正社員とパートでは働き方が違いますので、正社員と同一の処遇をしなければならないということはありませんが、仕事の内容や成果、能力などを十分考慮して処遇するように努めてください。
服部社長:
 わかりました。わが社も今後はパートであっても残業をしてもらったり、よりレベルの高い仕事を担当してもらうことも考えていますので、処遇は改めて検討することにします。


>>>to be continued


[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。今回はパートタイム労働法の改正のうち「均等のとれた処遇の確保の推進」について取り上げてみました。正社員と同等の働き方であると判断されると、賃金や教育訓練、福利厚生においてパートであるからという理由だけで差別的な取り扱いをすることが禁止されます。大企業に比較すると「職務内容」や「人材活用」の範囲が狭い中小企業ではそれらに違いがあるのかどうかを十分に確認しておく必要があるでしょう。そして、同等であると判断された場合はパートの時給引き上げなど処遇の見直しが必要となります。



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https://www.meinan.net/seminar/seminar20071129rom.html



関連blog記事
2007年10月29日「中小企業に影響の大きいパートタイム労働法の改正 その1」
https://roumu.com/archives/64703146.html
2007年9月7日「平成20年4月改正 パートタイム労働法のポイント」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51061223.html
2007年9月11日「平成20年4月改正 パートタイム労働法のポイント2 均衡のとれた待遇の確保の促進」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51062839.html
2007年9月18日「平成20年4月改正 パートタイム労働法のポイント3 通常の労働者への転換の推進」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51062853.html
2007年9月21日「平成20年4月改正 パートタイム労働法のポイント4 苦情処理・紛争解決援助」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51063284.html
2006年12月31日「パートタイマーに関する再チャレンジ支援策の動向とパートタイム助成金」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/50840276.html


参考リンク
厚生労働省「改正パートタイム労働法関連資料」
http://www.mhlw.go.jp/topics/2007/06/tp0605-1.html
厚生労働省「パートタイム労働法の一部を改正する法律(平成19年法律第72号)の概要」
http://www.mhlw.go.jp/topics/2007/06/tp0605-1a.html
厚生労働省「パートタイム労働法が変わります(改正パートタイム労働法 広報用リーフレット)」
http://www.mhlw.go.jp/topics/2007/06/tp0605-1b.html
厚生労働省「雇用均等・両立支援・パート労働情報」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/index.html


(鷹取敏昭)


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