外国人労働者の採用で注意すべきことは何ですか?

 年末調整の繁忙も一段落付いたという連絡を受け、大熊は服部印刷を訪問した。今日は外国人労働者の雇用に関する相談を受けることとなった。



福島さん:
 大熊先生、今年もなんとか年末調整を終えることができました。今月は残業続きで、先週は特に辛かったです。
大熊社労士:
 お疲れ様でした。今年の大仕事は済みましたね。
宮田部長宮田部長:
 いまが総務部にとって一番の繁忙期ですから。福島さんもベテランになってきましたので、今年は安心して任せることができました。総務はこれで一山越えましたが、会社全体としてはこれから年度末に向けて忙しくなります。
大熊社労士:
 そうですね、1月から3月までが御社にとって繁忙期でしたね。
宮田部長:
 そこでご相談ですが…。最近は求人募集をしても十分な人材が確保できない状態が続いています。今後もしばらくこの状況が続きそうだと服部に報告したところ、外国人労働者の活用を考えてはどうかという話がありました。しかし、これまで外国人労働者を雇った経験もないものですから、一度ご相談したいと思っていました。
大熊社労士:
 そうですね。求人の環境はここ数年ですっかり状況が一変し、人事管理の最大の課題はいまや「如何に優良な人材を安定的に採用・育成し、確保するか」ということになっているように感じています。自社のOBを採用したり、パートタイマーを正社員化するといった動きもあり、企業はあの手この手を使って人材の確保に動いています。外国人労働者のそのひとつに当てはまるでしょうね。それでは外国人雇用に関する基本からお話していきましょう。外国人の方は様々な目的をもって入国をしています。例えば、観光であったり、語学の先生であったり。
福島さん:
 日本で働くタレントや俳優さんもいますね。
大熊社労士:
 そうです。外国人の方は入国する際に、上陸許可というシールをパスポートに貼られることになっています。つまり、このシールにある在留資格に応じた活動をするために入国している訳ですが、さきほどの俳優であれば「興行」という在留資格を持っています。
宮田部長:
 つまり、在留資格を必ず確認する必要があるということですね。
大熊社労士大熊社労士:
 そのとおりです。採用するにあたっては、その外国人がどのような在留資格をもっているのかを必ず確認します。実際に、この在留資格を見ただけでは、どのような活動ができるのか分かりません。そのため入国管理局が出している在留資格一覧表等と突合せてみて、会社が求める仕事をすることができるか否かを判断することになります。この在留資格一覧を見ていく上で、ポイントとなる点は3つあります。
在留資格は「活動」と「身分又は地位」の2つに大きく分かれる。
 「身分又は地位」に基づく在留資格としては、永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者の4つがあります。これらについては活動に制限がないので、日本人と同じように働くことができます。
「活動」には就労できる在留資格と就労できない在留資格がある。
 就労できない在留資格(例えば短期滞在、留学)の場合、原則として働くことができません。ただし資格外活動許可を得ている場合は、許可された範囲で就労が可能です。この場合、資格外活動許可を得るということが必ず必要になっています。
在留資格に基づいて定められた活動のみをすることが許されている。
 在留資格に基づく活動以外の活動を行い、報酬を得た場合は不法就労となってしまいます。ただし、この場合も資格外活動の許可を得れば、その許可の範囲内で別の在留資格の業務に就くことができるようになっています。
宮田部長:
 なるほど。この一覧表を手元に置いておきます。在留資格は、パスポートを見せてもらう他ないのでしょうか?
大熊社労士:
 外国人登録証明書という運転免許証のようなカードがあります。
宮田部長:
 具体的には、どのような在留資格をもった方なら雇うことができますか?
大熊社労士:
 実務においては技術、人文知識・国際業務、技能といった在留資格の方を雇うことが多いでしょう。
福島照美福島さん:
 例えば、在留資格の技術を持っている方がいて、通訳の業務をお願いするとしたら、ポイントであったように、資格外活動許可を得なければならないということですね。
大熊社労士:
 その通りです。なお、在留資格の話ばかりしてきましたが、在留期限も確認する必要があります。そもそも、この在留期間に限り活動をすることが認められているのですから、労働契約を結ぶ際には、会社が求める仕事が在留資格の範囲内であり、在留期間が過ぎていないかどうか等をチェックすることになります。
宮田部長:
 偽造パスポートで入国して不法就労をしていたというような報道を目にすると、少し心配な面もありますね。
大熊社労士:
 年々偽造も巧妙になっているとも聞いています。実際に雇用することになれば、パスポートや外国人登録証明書のコピーを取っておくべきでしょう。また、入国管理局で就労資格証明書という、就労可能な在留資格を有することを証明した文書を交付してもらえます。安心して雇う上で、別途提出を求めるといった対応も望ましいでしょう。


>>>to be continued


[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。今回は外国人雇用の基本について取り上げてみました。最近は様々な場面で外国人の方が仕事に従事する姿を目にするようになりました。先日もあるシステム系の企業をお伺いした際、「近い将来に外国人を雇用することになると予想されるので、いまのうちからその受け入れ態勢を構築しておきたい」という相談を受けました。今後もこういった相談は増加すると思われますので、今週と来週は外国人雇用について取り上げたいと思います。


 平成11年8月に閣議決定された「第9次雇用対策基本計画」において、外国人労働者受入れの基本方針が定められましたが、その内容は「専門的、技術的分野の外国人労働者の受入れをより積極的に推進し、いわゆる単純労働者の受入れについては、日本の経済社会に多大な影響を及ぼすこと等が予想されること等から十分慎重に対応することが不可欠である」とされ、実務面でも様々な制限が課されています。外国人雇用をする際には、外国人登録証明書または旅券面の上陸許可、在留資格変更許可、就労資格証明書等により、その在留資格や在留期間を確認するようにしましょう。



参考リンク
厚生労働省「外国人労働者の適正な雇用・労働条件の確保と不法就労の防止に理解と協力を」
http://www2.mhlw.go.jp/topics/seido/anteikyoku/gairou/index.htm
東京外国人雇用サービスセンター「在留資格一覧表」
http://www.tfemploy.go.jp/jp/data/reside.html
入国管理局「就労資格証明書」
http://www.immi-moj.go.jp/tetuduki/zairyuu/syuurou.html
入国管理局「資格外活動の許可」
http://www.immi-moj.go.jp/tetuduki/zairyuu/shikakugai.html
入国管理局「『不法就労外国人対策キャンペーン月間』の実施」
http://www.moj.go.jp/PRESS/070601-1.pdf
岐阜労働局「不法就労について」
http://www.gifu-roudoukyoku.go.jp/taisaku/contents/gaikokujin/gaikokujin.htm#2
厚生労働省「外国人を雇用する場合のルールが新しくなります。(H19.10.1~)」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/gaikokujin13/index.html


(福間みゆき)


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