従業員50名以上になったときに求められる安全衛生管理体制とは?

 いよいよ来月、新入社員が入社することで、服部印刷の従業員数が50名を超えることになりました。新入社員に入社式の案内などを連絡を済ませ、仕事が一段落したところに大熊社労士が訪問してきました。



宮田部長宮田部長:
 当社ではこの4月に3名の従業員が入社してきます。しばらく50名に達するか否かのところを推移していましたが、ようやく50名を超えることが確実となりました。
大熊社労士:
 ついに、従業員50名ですか。着実に会社の規模が大きくなっていますね。
服部社長服部社長:
 ありがとうございます。2000年に先代から会社を引き継いだときから、社員数を50名にするという目標を持っていました。5年くらいでクリアする予定が8年もかかってしまいましたが、まずは目標達成となり、一つの壁を越えたなぁと実感しています。
大熊社労士:
 そうでしたか、それはおめでとうございます。ところで、従業員50名以上になると、安全管理者や衛生管理者を置かなければなりませんね。
福島さん:
 安全管理者ですか?
宮田部長:
 労働安全衛生法で定められているもののことだよ。いまの人数規模だと「安全衛生推進者」を置くことになっていて、私がその推進者をやっているんだよ。知らなかった?
福島さん:
 はい、すいません…。
大熊社労士:
 福島さんにとっては、あまり馴染みのないものでしたね。そもそも労働安全衛生法は労働基準法から独立したもので、労働者の安全と健康を守り、快適に働くことのできる環境をつくることを目的にしています。そして、この目的を達成するために、安全管理者や衛生管理者を置くといった安全衛生管理体制を構築することが必要になっているのですが、業種や従業員の規模によって、選任しなければならない人たちが異なっています。まず、印刷業の場合は製造業(屋内産業的業種)に該当します。そして、製造業の選任基準に照らし合わせて、どのような体制をつくらなければならないのかを判断することになります。
福島照美福島さん:
 つまり、当社の場合、従業員が50人以上になることによって、安全管理者や衛生管理者を置く必要があるということですね。この人たちは、どのような仕事をしなければならないのですか?また、何か特別な資格が必要なのでしょうか?もしそうであるならば、研修に行ってもらうことも考えないといけませんね。
大熊社労士:
 まず、安全管理者について説明しましょう。安全管理者とは、安全に関する技術的事項を管理する業務を担っています。つまり、作業場等を巡視したり、設備や作業方法等に危険のおそれがあれば直ちにその危険を防止するための措置を講じることが求められます。危険性が高い業種については総括安全衛生管理者を選任することになっていますが、この総括安全衛生管理者を選任する必要がないところについては、安全管理者の果たす役割は大きいでしょう。そのため、会社としては安全管理者に対して、安全に関する措置をなし得る権限を与えていくことが求められます。
宮田部長:
 なるほど。
大熊社労士大熊社労士:
 次に安全管理者になるための資格ですが、試験がある訳ではありません。厚生労働大臣が定める安全管理者選任時研修を修了することと、学歴にプラスして実務経験が必要になっています。具体的には、次のとおりです。
大学または高等専門学校の理科系統の卒業者(職業能力開発総合大学校の長期過程を含む)
 卒業後、産業安全の実務に従事した経験が2年
高等学校の理科系等の卒業者
 卒業後、産業安全の実務に従事した経験が4年
労働安全コンサルタント
以上のほか厚生労働大臣が定める者

 かつて研修を修了することは課されていませんでしたが、平成18年10月より安全管理者の資格要件が見直されました。そのため、安全管理者として選任された経験が2年未満の人は、安全管理者として選任されるためには研修を受ける必要があります。併せて、必要となる経験年数が上記では3年から2年へ、では5年から3年に短縮されています。
福島さん:
 産業安全の実務に従事したというのは、どのような意味でしょうか?もう一つ確認ですが、1人いればよいのですか?
大熊社労士:
 これについては、必ずしも安全関係専門の業務に限定する趣旨ではなく、生産ラインにおける管理業務を含めて差し支えないという比較的ゆるい解釈が通達(昭和47年9月18日 基発601号の1)でなされています。次に、人数ですが、労働安全衛生規則では安全管理者の人数に触れていませんので、1人で構いません。
宮田部長:
 わかりました。早速、従業員に上記の条件を満たす者がいないかを確認してみます。


>>>to be continued


[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。今回は、安全衛生管理体制について取り上げてみました。会社には安全配慮義務が課されおり、従業員が安全で快適に働ける環境をつくっていくことが求められており、安全衛生管理体制を整えていくこともその一つとなります。安全管理者は事業場に専属でなければならないとお話しましたが、以下に該当する事業場については、少なくとも専任の安全管理者1名を置かなければならないとされています。専任とは、安全管理の任務を専門としていることで、通常の勤務時間のほとんどを費やすものということになります。
建設業、有機化学工業製品製造業、石油製品製造業
 常時300人以上の労働者を使用する事業場
無機化学工業製品製造業、化学肥料製造業、道路貨物運送業、港湾運送業
 常時500人以上の労働者を使用する事業場
紙・パルプ製造業、鉄鋼業、造船業
 常時1,000人以上の労働者を使用する事業場
林業、鉱業、運送業(前掲(2)に掲げるものを除く)、清掃業、製造業(加工業は含むが、前掲までに掲げたものは除く)、通信業、電気業、ガス業、水道業、熱供給業、自動車整備業、機械修理業
 常時2,000人以上の労働者を使用する事業場であって、かつ、過去3年間の労働災害による休業1日以上の死傷者数の合計が100人を超える事業場



参考リンク
厚生労働省「総括安全衛生管理者等の選任義務」
http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/saigai/anzen/anzen00/5.html
安全衛生情報センター「労働安全衛生規則第5条第1号の厚生労働大臣が定める研修に係る具体的事項について」
http://www.jaish.gr.jp/anzen/hor/hombun/hor1-47/hor1-47-3-1-0.htm


(福間みゆき)


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