喫煙対策をどのように進めれば良いのでしょうか?

 服部印刷では健康診断の結果が従業員の手元に届いており、社員の間で健康管理への関心が高まっていた。そのため、今日は宮田部長から、普段相談の受けない内容である従業員の喫煙について相談を受けることとなった。



宮田部長:
 大熊先生、こんにちは。実は従業員から、喫煙コーナーからタバコの煙や臭いがするのでなんとかして欲しいという苦情がありまして、会社としてどのように対応したら良いのか困っていまるのです。
大熊社労士:
 なるほど、タバコを吸わない方にとってはその臭いがすることで不快な思いをされることもありますからね。いまや喫煙対策は、職場の労務管理の一環として取組むべき問題になっています。
宮田部長宮田部長:
 当社では喫煙コーナーを設けて分煙を行っていますが、実際にタバコの臭いや煙が多少なりとも漏れてくることがあります。喫煙コーナーを設けるだけでは不十分なのでしょうか?私は、随分昔にタバコをやめましたが、以前は喫煙していましたのでタバコを吸う人の気持ちが分からないでもありません。
福島さん:
 そうだったんですか?私が入社した頃にはもうタバコを吸っていらっしゃらなかったので知りませんでした。だから宮田部長はこの問題についてあまり厳しく注意されないのですね。
大熊社労士大熊社労士:
 タバコを吸う/吸わないは個人の自由ですので、強制的に禁煙させることはできませんね。しかし、最低限のマナーは守るべきであり、会社としても受動喫煙への対策を打って行くことが求められています。この件に関し、2003年に厚生労働省から「新たな職場における喫煙対策のためのガイドライン」が出されたことをご存知ですか?
宮田部長:
 いいえ、知りません。新たにと言うことは、何か変わったということですね?
大熊社労士:
 はい。新ガイトラインになって内容が充実されています。要点としては次の3点です。
設備対策
[旧ガイドライン]
 喫煙室又は喫煙コーナーの設置等を行うこと
[新ガイドライン]
 受動喫煙を確実に防止する観点から、可能な限り、非喫煙場所にたばこの煙が漏れない喫煙室の設置を推奨すること
喫煙室等に設置する「有効な喫煙対策機器」
[旧ガイドライン]
 たばこの煙が拡散する前に吸引して屋外に排出する方式またはたばこの煙を除去して屋内に排気する方式(空気清浄装置)のいずれかの方式によること
[新ガイドライン]
 空気清浄装置はガス状成分を除去できないという問題点があることから、たばこの煙が拡散する前に吸引して屋外に排出する方式の喫煙対策を推奨すること。やむを得ない措置として、空気清浄装置を設置する場合には、換気に特段の配慮をすることが必要。
追加事項
[新ガイドライン]
 職場の空気環境の基準に、喫煙室等から非喫煙場所へのたばこの煙やにおいの流入を防止するため、喫煙室等と非喫煙場所との境界において、喫煙室等に向かう風速を0.2m/s以上とするように必要な措置を講ずること。つまり、喫煙コーナーに換気扇や空気清浄機を置いただけでは、新ガイドラインの基準を満たしたことにはならないのです。
宮田部長:
 このような基準が定められているのですね。受動喫煙を確実に防止できるように、そもそもの喫煙コーナーの場所や換気扇の台数などについても見直しが必要ですね。実はもう一つ問題がありまして、休日出勤をした際に事務所内でタバコを吸っている社員がいるようなのです。
福島照美福島さん:
 それについては間違いありませんね。月曜日出勤するとタバコの臭いがするので、誰か絶対に吸っていますよ!休日出勤したときには喫煙を嫌がる人はいないかもしれませんが、私をはじめ周りのスタッフは困っています。何か打つべき対策はありませんか?
大熊社労士:
 やはり人が少ない休日出勤時や夜遅い時間帯にルール違反は起こりがちですね。直接従業員が喫煙をする従業員に文句を言いますと、お互いの関係が悪くなってしまいますので、会社が間に入る必要があります。例えば、喫煙コーナーに注意文書を貼って、注意を促すことなども検討すべきではないでしょうか。
福島さん:
 そうですね。早速、私の方で案を作成します。
大熊社労士:
 この他には、衛生委員会の場で対策の検討を行い、委員会の方から注意を促すという方法もあります。
宮田部長:
 なるほど。ちょうど来週、衛生委員会の会議がありますので、こちらについても早速検討してみます。
大熊社労士:
 最近は非喫煙者が増加したことでタバコに関する許容度が徐々に低下しているように感じます。喫煙者と非喫煙者との関係を悪くしたくありませんので、できれば円満に解決したいものです。


>>>to be continued


[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。最近では、積極的に禁煙のサポートを行っている会社があるようです。例えば、敷地内を全面禁煙にしている会社、喫煙する社員に一時金を支給して禁煙を促進している会社などが見られます。企業としては、受動喫煙による影響を喫煙者に理解してもらいながら、このような禁煙サポートをしていくことでより効果的な喫煙対策を行っていきたいものです。また、非喫煙者についても、文句ばかりを言うのではなく、例えば「健康を考えると禁煙した方が良いと思うよ」というように、禁煙しようと思わせるような雰囲気を作っていくことが望まれているのではないでしょうか。



関連blog記事
2008年9月22日「進められる企業のたばこ対策~88.5%の事業所で禁煙・分煙措置を実施」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51412076.html
2007年6月6日「89.4%の企業が職場の分煙・禁煙を実施」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/50989032.html
2006年6月8日「一段と進められる健康増進法による喫煙対策」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/50592250.html


参考リンク
厚生労働省「新たな職場における喫煙対策のためのガイドラインの策定について」
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2003/05/h0509-2.html
厚生労働省「職場における喫煙対策のためのガイドライン」
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2003/05/h0509-2a.html
厚生労働省「職場の空気環境の測定方法等」
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2003/05/h0509-2b.html
安全衛生情報センター「新職場における喫煙対策のためのガイドラインに基づく職場の分煙対策」
http://www.jaish.gr.jp/user/anzen/sho/kitsuen/kitsuen.html


(福間みゆき)


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