来年5月21日から始まる裁判員制度とはどのようなものですか?

 11月28日に裁判員制度の候補者に向けて、裁判所から通知が発送された。そこで宮田は、裁判員制度が開始されることに伴って会社に求められる対応について、大熊社労士に相談することにした。



宮田部長宮田部長:
 大熊先生、こんにちは。いよいよ裁判員制度の通知が発送されましたね。マスコミでも数多く取り上げられていましたので、自分に通知が来ないのかドキドキしましたよ。結果的には来ませんでしたけれども。少し興味があったので、ちょっとだけ残念ですね。
大熊社労士:
 そうですか。今回通知されたのは、全国で295,027人だそうです。通知に併せて、専用のコールセンターが来年の1月31日まで臨時に設けられましたが、「裁判員になりたくないので、名簿から外して欲しい」といった訴えもあったようですよ。御社では通知が来たというような話は出ていますか?
宮田部長:
 いいえ、はっきり分かりませんが、通知が発送されて1週間経っても社員からの問い合わせがありませんので、社員の中には対象者はいないようです。
大熊社労士:
 そうですか。単純な確率から言えば、御社では対象者が出る確率の方が低いですからね。もっとも郵便物を確認していない人がいるかも知れませんし、来ていても会社には報告していない人もいるかも知れませんので、もしかすると一人くらいはいるかも知れません。朝礼などで、現時点においては会社に報告する必要はないと断った上、最高裁判所の名前の入った白い封筒が来ていないか、もう一度確認してもらうように促しておいた方がよいでしょうね。
宮田部長:
 そうですか?なぜ確認する必要があるのでしょうか。
大熊社労士大熊社労士:
 はい、送付されてきた同封物の中に、調査票が入っています。この調査票は何かといいますと、そもそも裁判員になることができない、辞退できる理由に該当する、あるいは裁判員になることが特に難しい月がある場合にそれを申し出るものことができるようになっています。調査票を返信しなければ、いつでも裁判に参加できるということになってしまいます。来週の12月15日(月)必着で返信することになっていますので、もしも通知を受け取った人がいれば、場合によっては繁忙期の時期を指定して返信しておくように伝えておくことが重要です。
宮田部長:
 そうでしたか。では早速、明日の朝礼で連絡します。裁判員制度について、実はよく分かっていないものですからこの機会に教えてください。
大熊社労士:
 わかりました。裁判員制度とは、国民に裁判員として刑事裁判に参加してもらう制度です。6人の裁判員と3人の裁判官が刑事裁判に立ち合い、被告人が有罪かどうか、有罪の場合どのような刑にするかを裁判官と判断することになります。
福島照美福島さん:
 裁判員に選任されると、どのような事件の裁判に参加することになるのですか?テレビでは重大な犯罪が中心になるなんていうことを見たのですが…。
大熊社労士:
 そうなんですよ。裁判員制度の対象となる事件としては、一定の重大な犯罪とされています。原則としては、死刑または無期懲役もしくは禁固に当たる罪に係る事件と、法的合議事件であって故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪にかかるものとされています。代表的な例をあげますと、次のようなものが対象となります。
・人を殺した場合(殺人)
・強盗が、人にけがをさせ、あるいは、死亡させた場合(強盗致死傷)
・人にけがをさせ、その結果、死亡させた場合(傷害致死)
・ひどく酒に酔った状態で自動車を運転して人をひき、死亡させた場合(危険運転致死)など
福島さん:
 重大な犯罪事件が対象となっていますね。何の知識もない自分が参加してもよいものかどうか、戸惑います。
大熊社労士:
 そのように感じられる方は多いでしょう。しかしこの裁判員制度は、国民が参加することによって、一人ひとりの感覚や経験に根ざした多様な視点が裁判にもたらされることを目的にしています。一人でも多くの国民が参加することが期待されています。
宮田部長:
 そのためには、会社としても社員が裁判員制度に積極的に参加できるように、サポートしていくことが重要ですね。
大熊社労士:
 そうですね。裁判員として出頭する際の休暇の取り扱いを決めることや、場合によっては管理職や社員向けに裁判員制度についての研修会を行うといった対応が求められますね。
宮田部長:
 もう少し裁判員制度について教えてもらってから、管理職向けに研修会を開催してみます。
大熊社労士:
 わかりました。次回は、裁判員の選任についてお話しましょう。


>>>to be continued


[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。裁判員候補者名簿に記載された方への通知が始まったことから、裁判員制度への関心が高まってきたのではないでしょうか。裁判員候補者に選ばれたことを公にしてはいけないとされていますが、法律で禁止されている「公にする」とは、例えばインターネット等で公表するなど,裁判員候補者になったことを不特定多数の人が知ることができるような状態にすることを言います。社員が上司や会社に裁判員候補者になったと話すことは、周囲の理解を求める上でも重要ですので、会社としても積極的に相談するように促していくことが望まれます。



関連blog記事
2008年11月29日「裁判員候補者に選ばれた際の注意点」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51452216.html
2008年11月24日「裁判員制度で支給された日当等は雑所得の取扱いを」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51454719.html
2008年11月21日「裁判員休暇規程」
http://blog.livedoor.jp/shanaikitei/archives/55178248.html
2008年11月19日「お待たせしました!裁判員休暇規程のダウンロードを開始!」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51453215.html
2008年11月11日「いよいよ11月28日より裁判員候補者への資料送付が始まります」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51444106.html
2008年9月18日「裁判員休暇の賃金取り扱い 日本経団連調査でも86%が「有給」と回答」」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51412397.html
2008年9月16日「裁判員休暇の賃金取り扱い 9割の企業が「有給」と回答」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51410564.html
2008年8月13日「求められる裁判員制度導入に伴う特別休暇制度の検討」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51389871.html
2008年4月16日「裁判員制度 平成21年5月21日にスタート」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51307054.html
2008年1月21日「政令により裁判員辞退の申立てをすることができる事由が明らかに」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51232135.html
2007年10月29日「裁判員制度の取扱いを既に決めている企業はわずか6.9%」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51143352.html
2007年8月31日「平成21年度スタートの裁判員制度に対応する就業規則等の見直し」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51056431.html


参考リンク
最高裁判所
http://www.saibanin.courts.go.jp/
最高裁判所「裁判員候補者名簿に登録されたことを公にすることは法律上禁止されていますので,ご注意ください(2008.12)」
http://www.saibanin.courts.go.jp/topics/saibanin_meibo_attention.html
法務省
http://www.moj.go.jp/SAIBANIN/index.html


(福間みゆき)


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