パートに残業をさせた際の時間外手当はどのように計算すればよいですか?

 服部印刷では、3月にパートタイマーの退職があったため、4月から新しくパートタイマーを雇うことになった。本日はそのパートタイマーに交付する労働条件通知書の記載方法について大熊に相談をすることとした。



宮田部長:
 大熊先生、こんにちは。実は3月にパートさんの退職がありましたので、今月から2人補充することになりました。
大熊社労士:
 そうですか。確かパートさんについては長年勤められる方が多いというお話でしたね。
宮田部長宮田部長:
 はい。当社のパートさんは、みんな長く働いてくれています。今回はご主人の転勤ということで退職せざるを得ず、本当に残念でした。そこで相談なのですが、久しぶりに労働条件通知書を作るものですから、一点教えてください。労働条件通知書の様式の中の「賃金」のところに、「所定時間外、休日または深夜労働に対して支払われる割増賃金率」を書く欄がありますが、「法定超」と「所定超」という二つがあります。この違いは何でしょうか?
大熊社労士:
 なるほど。それでは、具体例を挙げて解説しましょう。Aさんは1日の所定労働時間が8時間、Bさんは1日の所定労働時間が6時間で、二人とも週3回の同じ日に勤務するとします。パートのため基本的には残業をしてもらうことは少ないと思いますが、もしAさんが残業した場合、8時間以降の勤務については、労働基準法に基づいて時間外割増を支払わなければなりませんね。
福島さん:
 もちろんです。
大熊社労士:
 それでは、Bさんはどうですか?Bさんとの雇用契約では、1日6時間働くことになっています。Bさんに残業をお願いする場合、6時間以降の勤務については時間単価をどのように取扱いますか?
宮田部長:
 Bさんは残業になりますので、25%増の単価になるのではないでしょうか?
福島照美福島さん:
 いや、宮田部長、それはおかしいように思います。同日に同じように勤務を行って、Aさんの場合、8時間働いた以降の勤務についてはじめて割増賃金がつくにも関わらず、Bさんは6時間勤務した後であれば8時間以内であっても割増された賃金になってしまいます。
大熊社労士:
 そうなのです。例えば二人の時給が同じ1,000円とすると、Aさんの場合、8時間以降の勤務については時間単価が1,250円となりますが、Bさんについては、6時間勤務した後の時間単価から1,250円となってしまいます。同じように働いておきながら、6時間勤務した後の時間単価をみると、Aさんは1,000円、Bさんは1,250円となり、Bさんだけが高くなってしまいますね。
宮田部長:
 確かに比較してみると変な感じがします。Bさんも8時間までは同じ1,000円で、8時間を過ぎたら、1,250円とすることはできないのでしょうか?
大熊社労士:
 それを示しているのが、労働条件通知書にある「法定超」「所定超」という区分です。そもそも割増賃金の支払いが必要となるのは、労働基準法第37条に定められているように「法定(労働時間)超」となる1日8時間、1週40時間を超えた場合です。
宮田部長:
 なるほど。「法定超」には法定割増率、つまり当社であれば25%と記入すればよいのですね。では「所定超」はどのようにすればよいのですか?
大熊社労士大熊社労士:
 「所定超」については、所定労働時間を超えた時間、つまりBさんであれば契約時間である6時間を超えた以降8時間に至るまでの時間単価についてどのような取扱いにするのかを記入するのです。所定超については法律で何も定められていませんので、割増をつけず0%としても、法定超と同じように25%の割増をつけるといった取扱いとしても構いません。
宮田部長:
 なるほど。それでは「所定超」のところを0%とすれば、Bさんが残業したとしても、8時間を超えるまでは割増をつけない1,000円の時間単価で働いてもらうことができるということですね。わかりました。当社ではどのような取扱いにするのか社長に相談してみます。


>>>to be continued


[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。平成20年4月1日にパートタイム労働法が改正され、パートタイマーについては、採用する際、労働基準法で書面による明示が義務づけられている項目に加えて、次の3点を文書の交付等により明示することになりました。
昇給の有無
退職手当の有無
賞与の有無


 この明示については、新規に採用する場合だけでなく、契約を更新した場合で再度契約を結び直すような場合も必要になります。また、この明示に違反した場合については罰則(10万円以下の過料)がありますので、様式に不備がないかチェックしておきましょう。



関連blog記事
2007年11月2日「ダウンロード開始!平成20年4月改正パートタイム労働法対応モデル労働条件通知書」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51145821.html
2007年11月2日「モデル労働条件通知書(平成20年4月改正パートタイム労働法対応版)」
http://blog.livedoor.jp/shanaikitei/archives/54869701.html
2007年9月21日「平成20年4月改正 パートタイム労働法のポイント4 苦情処理・紛争解決援助」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51063284.html
2007年9月18日「平成20年4月改正 パートタイム労働法のポイント3 通常の労働者への転換の推進」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51062853.html
2007年9月11日「平成20年4月改正 パートタイム労働法のポイント2 均衡のとれた待遇の確保の促進」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51062839.html
2007年9月7日「平成20年4月改正 パートタイム労働法のポイント」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51061223.html


参考リンク
厚生労働省「パートタイム労働法の改正について」
http://www.mhlw.go.jp/topics/2007/06/tp0605-1.html


(福間みゆき)


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