平成21年4月に改正された障害者雇用促進法とはどのような内容ですか

 労働局から宮田部長のところへ「高年齢者及び障害者の雇用状況に係る報告」の書類が届いたことから、宮田は障害者雇用について、大熊社労士に相談することにした。



宮田部長:
 大熊先生、こんにちは。労働局から「高年齢者及び障害者の雇用状況に係る報告」の書類が届き、昨日提出しておきました。
大熊社労士:
 そうですか。それはちょうど良いですね。今日は先日改正が行われた障害者雇用促進法についてお話しようと考えてたところでした。
宮田部長宮田部長:
 法改正があるのですか。私も書類が届いたことから今後、当社として障害者雇用についてどのように取り組めばよいかと考えていたんですよ。それでは法改正など、今後の動向も含め、情報を頂けませんか?
大熊社労士:
 分かりました。まずは法改正の件からですが、今年の4月より障害者雇用促進法が改正され、段階的に適用されることになっています。今回の改正のポイントとしては以下の2点があります。
障害者雇用納付金制度の対象事業主の拡大(平成22年7月より段階的に適用)
障害者雇用率制度への短時間労働者の追加(平成22年7月より)
宮田部長:
 現行の障害者雇用納付金制度では、常時雇用労働者が301人以上の事業主が対象でしたが、これが見直されるということですか?
大熊社労士大熊社労士:
 はい、そのとおりです。現在は常時雇用労働者が301人以上の事業主が対象とされていますが、平成22年7月から201人以上300人以下の事業主、平成27年4月からは101人以上200人以下の事業主に対象が拡大されます。なお、この対象が拡大する部分の納付金については5年間の納付金減額特例が設けられ、1人不足するごとに徴収される金額が4万円/月(現行5万円/月)になるようです。
福島さん:
 当社の労働者数は現時点で50人ですから、今回の改正においても納付金制度の対象にはならないのですね。
大熊社労士:
 そうですね。とはいえ、そもそもこの対象事業主を拡大する目的としては、中小企業において障害者雇用が進んでいない現状があり、身近な雇用の場である中小企業において雇用を促進していきたいという考えがあります。そのため、雇用納付金制度の対象からは外れていますが、企業としては障害者雇用を考えていくことが求められています。
福島照美福島さん:
 なるほど。実際に雇用することを考えると、例えば所定労働時間を40時間よりも短い時間で、会社として働いてもらいたいあるいは本人が働きたいという話が出てくるのではないでしょうか?
大熊社労士:
 そういったこともありますね。ちょうどそれに関連した話が、先に挙げました法改正のの内容です。現行の障害者雇用率制度においては、原則として週30時間以上の労働者を実雇用率や法定雇用障害者数の算定の基礎としています。そのため、週20時間以上30時間未満の重度でない身体障害者等については、実雇用障害者数や実雇用率にカウントされていませんでした。しかし先ほどの宮田部長のお話のように短時間労働の要望もあることから、平成22年7月から、身体障害者または知的障害者である短時間労働者(週所定労働時間20時間以上30時間未満)についてもカウントすることができるようになります(※カウント数は0.5)。
宮田部長:
 もう1年後には制度が段階的に適用されていきますね。企業として考えていくことが求められていることが理解できました。社長にも話をしておきます。


>>>to be continued


[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。今回は改正された障害者雇用促進法について取り上げてみましたが、主な改正点のについて補足しておきましょう。上記において、障害者の短時間労働者についても0.5としてカウントされると解説しましたが、併せて、障害者雇用率制度の実雇用率や法定雇用障害者数を計算する際に、常用雇用労働者の総数に短時間労働者(週所定労働時間20時間以上30時間未満)の数を加算して計算することになりますので、この点に注意が必要です(※カウント数は0.5)。具体的な計算式は次のようになります。
実雇用率=(障害者である労働者の数+障害者である短時間労働者の数×0.5)÷(労働者の数+短時間労働者の数×0.5)
法定雇用障害者数=(労働者の数+短時間労働者の数×0.5)×1.8%


 つまり、短時間労働者の数を含めて計算することになることから短時間労働者の数が多い企業においては、現行の計算方法に比べて法定雇用障害者数が大幅に増加する可能性がありますので、一度計算してみるとよいでしょう。



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2009年5月12日「[改正障害者法]事業協同組合等算定特例の創設(第5回)」
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2009年5月11日「[改正障害者法]常用雇用労働者数のカウントへの短時間労働者の追加(第4回)」
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2009年5月8日「[改正障害者法]障害者雇用率算定における短時間労働者の算入(第3回)」
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2009年5月7日「[改正障害者法]適用から5年間に限り行われる障害者雇用納付金制度の特例(第2回)」
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2009年4月24日「[改正障害者法]常時雇用労働者101人以上の企業にまで拡大される障害者雇用納付金制度」
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2009年4月20日「4月に創設された障害者雇用に関するグループ算定特例」
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2009年4月10日「平成22年7月に予定される障害者雇用の除外率10%引き下げの概要」
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2009年3月2日「労政審の答申が行われた障害者雇用促進法の改正内容」
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2009年2月23日「徐々に明らかになってきた障害者雇用に関する法改正の詳細」
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2009年2月17日「障害者雇用に関して創設・拡充された助成金制度」
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2008年12月22日「改正障害者雇用促進法が成立 障害者納付金が中小企業にも段階的に適用」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51472063.html


参考リンク
厚生労働省「平成21年4月(一部平成22年7月、平成24年4月又は平成27年4月)より、改正障害者雇用促進法が施行されます。」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/shougaisha04/index.html


(福間みゆき)


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