パートタイマーの就業規則を変更した場合、パートタイマーの意見を聞けばよいのですか?

 服部印刷では、パートタイマーの就業規則を変更することになった。そのため、監督署への届出の際に必要となる労働者からの意見聴取に関して、宮田部長は大熊社労士に相談することにした。



宮田部長:
 大熊先生、こんにちは。すっかり秋めいてきましたね。
大熊社労士:
 そうですね。朝晩はすっかり涼しくなりましたね。
宮田部長:
 今日はパートタイマー就業規則のことで相談したいのですが、パートタイマーの就業規則を変更した場合も当然、労働基準監督署への届出が必要なんですよね?
大熊社労士大熊社労士:
 はい、その通りです。パートタイマー就業規則も含めて就業規則となりますので届出が必要になります。よく就業規則とは別に賃金規程や退職金規程などを作成していることがありますが、これは規則のボリュームから別にしておいた方が分かりやすいために規程を分けているだけであって、そもそもは大元となる就業規則に含まれるものですので届出が必要とされるのです。
宮田部長:
 なるほど。それで届出を行う際には意見書を添付することになっていますが、パートタイマー就業規則については、パートタイマーの代表者の意見を聴けばよいのでしょうか?
大熊社労士:
 いいえ、ここは間違えやすいポイントなのですが、この場合は従業員代表の意見を聴くことになっているため、正社員の方が代表となっている場合はその方の意見を聴けばよく、パートタイマーから代表者を出してもらう必要はありません。
宮田部長宮田部長:
 しかし、パートタイマー就業規則はパートタイマーだけに関係してくるので、十分な意見が出てくるのか心配に思いますが?
大熊社労士:
 確かにそうですね。労働基準法第90条において使用者が就業規則を作成するにあたって、労働者の意見聴取を義務づけており、その意見を聴く労働者代表は、①その事業場の労働者の過半数で組織する労働組合、または②その事業場の労働者の過半数を代表する者とされています。そのため、法的な手続きとしては、パートタイマーの代表者ではなく、従業員代表の意見を聴くことで問題ありません。
福島照美福島さん:
 そうなんですね。パートタイマーの労働条件に関する事項であっても、従業員代表である正社員の意見を聴けば、労働基準法の手続きとしては問題ないということですね。
大熊社労士:
 はい。しかし、労働基準法第2条において「労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである」として、労働条件の労使対等決定の原則が定められていますので、これをふまえると、実務上においてはパートタイマーの意見を聴くことが望ましいことは言うまでもありません。また、パートタイム労働法(短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律)の第7条においても、「事業主は、短時間労働者に係る事項について就業規則を作成し、又は変更しようとするときは、当該事業所に、短時間労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、短時間労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては短時間労働者の過半数を代表する者の意見を聴くように努めるものとする」とあります。
宮田部長:
 分かりました。それでは当社としてはパートタイマーへの説明会を開催し、実質的にはその中で意見を求めたいと思います。ありがとうございました。


>>>to be continued


[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。今回はパートタイマー就業規則の変更について取り上げてみましたが、ここでは本社一括での就業規則の届出について補足しておきましょう。そもそも、就業規則は事業場で常時10人以上の労働者を使用している場合に作成の義務があります。企業単位ではなく事業場単位であることがポイントです。そのため多店舗展開しているような場合、各事業場ごとに就業規則を届け出る必要がありますが、同一の内容の就業規則を適用する場合については、通達(平成15年2月15日 基発第0215001号)で本社の所轄労働基準監督署に一括して就業規則を届け出ることができるようになりました。ただし、これについては以下の3つの要件を満たす必要があります。
本社を含む事業場に対応した必要部数の就業規則を提出すること
本社で作成された就業規則(労働基準法第89条関連)と各事業場の就業規則が同一であること
労働組合などの意見を聴取した書面(労働基準法第90条第2項関連)の正本を各事業場の就業規則に添付すること


 また、就業規則は各事業場に備え付けておくか、パソコン等でいつでも見られるようにするなどして周知しておく必要がありますので、最新のものになっているのか確認しておきましょう。


[関連法規]
労働基準法施行規則 第6条の2
 法第十八条第二項 、法第二十四条第一項 ただし書、法第三十二条の二第一項 、法第三十二条の三 、法第三十二条の四第一項 及び第二項 、法第三十二条の五第一項 、法第三十四条第二項 ただし書、法第三十六条第一項 、第三項及び第四項、法第三十八条の二第二項 、法第三十八条の三第一項 、法第三十八条の四第二項第一号 、法第三十九条第五項 及び第六項 ただし書並びに法第九十条第一項 に規定する労働者の過半数を代表する者(以下この条において「過半数代表者」という。)は、次の各号のいずれにも該当する者とする。
一  法第四十一条第二号 に規定する監督又は管理の地位にある者でないこと。
二  法に規定する協定等をする者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続により選出された者であること。



関連blog記事
2007年6月4日「パートタイマー就業規則」
http://blog.livedoor.jp/shanaikitei/archives/54414619.html
2007年2月5日「パートタイマー労働契約書」
http://blog.livedoor.jp/shanaikitei/archives/52080828.html
2008年2月15日「[改正パート労働法]既に雇用しているパートタイマーへの労働条件通知書の切り替え」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51253168.html
2008年2月3日「[改正パート労働法]定年後の嘱託社員はパートタイム労働法が適用される?」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51242918.html
2007年11月21日「正社員と職務内容が同じパートタイム労働者の有無と賃金格差」
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2007年11月17日「パートタイム労働者の雇用理由調査に見る改正パートタイム労働法の影響の大きさ」
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2007年11月5日「[改正パートタイム労働法]労働条件の明示方法と違反時の罰則」
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2007年9月21日「平成20年4月改正 パートタイム労働法のポイント4 苦情処理・紛争解決援助」
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2007年9月18日「平成20年4月改正 パートタイム労働法のポイント3 通常の労働者への転換の推進」
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2007年9月11日「平成20年4月改正 パートタイム労働法のポイント2 均衡のとれた待遇の確保の促進」
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2007年9月7日「平成20年4月改正 パートタイム労働法のポイント」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51061223.html
2008年8月10日「チェックしておきたい有期契約労働者の雇用管理の改善に関するガイドライン」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51388430.html


参考リンク
厚生労働省「パートタイム労働法が変わりました!~平成20年4月1日施行~」
http://www.mhlw.go.jp/topics/2007/06/tp0605-1.html
厚生労働省「働くうえで知っておきたい基礎知識(パートタイム労働者向けリーフレット)」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pdf/parttime2.pdf
大阪労働局「パートタイム労働者の雇用管理改善」
http://www.osaka-rodo.go.jp/kinto/part.html


(福間みゆき)


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