社有車を5台以上使用する場合は安全運転管理者を選任しなければならないのですか?

 服部印刷では、営業職の社員に社有車を貸与しているが、最近、駐車違反をする者が出るなど運転に関するルールの守れない者が出ていることが問題となっていた。そこで宮田部長は大熊社労士に社有車管理におけるポイントを相談することにした。



宮田部長:
 大熊先生、こんにちは。今日は早速ですが、社有車のことで相談させてください。
大熊社労士:
 はい、なにかありましたか?
宮田部長宮田部長:
 当社は、営業職の社員に社有車を貸与し、使用させているのですが、最近、駐車違反で捕まったり、車を手荒く使って傷をつけるなどのトラブルが連続していて困っているのです。
大熊社労士:
 そうですか。御社に限らず、そうしたご相談は他社でもよく伺いますよ。
宮田部長:
 そうですか。違反については社員の責任としているため、罰金等は本人に負担させることにしているのですが、社有車の管理において、会社の根本的な対応としてはどのような点に注意すればよいのでしょうか?
大熊社労士:
 宮田部長、「安全運転管理者」というのをご存知ですか?
宮田部長:
 安全運転管理者ですか?いいえ、初めて聞きます。
大熊社労士:
 そもそも会社は従業員が社有車を運転することについて、安全運転を確保する全般的な責任を負っていますが、実際にはその責任のすべてを直接果たすのは難しいのが実情です。そこで会社は、その代務者として「安全運転管理者」やそれを補助する「副安全運転管理者」を選任し、公安委員会に届け出なければならないことになっているのです(道路交通法第74条の3)。
宮田部長:
 そうですか。それは知りませんでした。それでその安全運転管理者というのはどのような基準で選任しなければならないのでしょうか?
大熊社労士大熊社労士:
 はい、乗車定員が11人以上の自動車にあっては1台、その他の自動車にあっては5台以上を使用している事業所で選任することになっています(※自動二輪車(原動機付自転車を除く)は1台を0.5台として計算)。
宮田部長:
 ということは当社は社有車が7台ありますので、選任が必要ですね。
大熊社労士:
 そうですね。ちなみに「副安全運転管理者」は、自動車の台数が20台以上の場合に選任する必要があります(選任人数は20台毎に1人を追加)。
福島さん:
 大熊先生、安全運転管理者を選任する従業員にはなんらかの要件があるのでしょうか?
大熊社労士:
 えぇ。安全運転管理者については、以下の資格要件を満たす必要があります(規則第9条の9第1項)。
20歳(副安全運転管理者が置かれることとなる場合にあっては30歳)以上の者であること
自動車の運転の管理に関し2年(自動車の運転管理に関し公安委員会が行う教習を修了した者にあっては、1年)以上実務経験を有する者又は自動車の運転の管理に関しこれらの者と同等以上の能力を有すると公安委員会が認定した者で、次のいずれにも該当しないものであること
(1)過去2年以内に公安委員会の安全運転管理者等の解任命令(道路交通法第74条の3)を受けたことのない者
(2)過去2年以内に次の違反行為をしたことのない者
・いわゆるひき逃げ
・酒酔い・酒気帯び運転
・飲酒運転に関し車両などを提供する行為、酒類を提供する行為及び依頼・要求して同乗する行為
・麻薬等運転
・無免許運転
・次の交通違反の下命・容認
 酒酔い・酒気帯び運転、麻薬等運転、過労運転、無免許・無資格運転、最高速度違反運転、積載制限違反運転、放置駐車
・自動車使用制限命令違反
福島照美福島さん:
 いろいろな要件がありますね。万が一、安全運転管理者が酒気帯び運転をしてしまい、資格要件を満たさなくなった場合は、解任されるということですね。
大熊社労士:
 そのとおりです。安全運転管理者になる方は自覚をもち、安全運転の確保に努めてもらう必要がありますね。もちろん安全運転者を選任することも重要ですが、併せて車両管理規程などの整備を行い、会社のルールを決め、更には安全運転等に関する社内の講習会の開催も検討したいところですね。
福島さん:
 当社にはそういった規程がありませんので、整備しないといけませんね、宮田部長。
宮田部長:
 そうだね。
大熊社労士:
 作成される際に疑問など出てきましたらいつでもお電話ください。


>>>to be continued


[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。今回は安全運転管理者について取り上げてみました。この安全運転管理者を選任した場合、選任した日から15日以内に事業所を管轄する公安委員会に届け出ることになっています。なお届出については、各都道府県の道路交通法施行細則等に定められた様式の届出書を提出することになっていますので、管轄の警察署に確認してみるとよいでしょう。安全運転管理者を選任した場合の届出書に添付する書類には、次のものがあります。
安全運転管理者に関する届出書
運転管理経歴証明書または安全運転管理者等資格認定申請書
運転管理経歴証明書:自動車の運転管理に関し、2年以上の実務経験を有する者
 安全運転管理者等資格認定申請書:自動車の運転管理経歴が2年未満の者
履歴書
戸籍抄本又は住民票の写し(外国人にあっては、外国人登録証明書の写し)
運転記録証明書:自動車安全運転センターが発行する証明書(有料700円)



関連blog記事
2009年10月15日「安全運転管理者等の履歴書」
http://blog.livedoor.jp/shanaikitei/archives/55320774.html
2007年9月12日「私有車業務使用許可申請書」
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2007年6月5日「車両管理規程」
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2007年2月15日「駐車場使用申請書」
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2007年2月14日「マイカー通勤使用登録申請書」
http://blog.livedoor.jp/shanaikitei/archives/52326892.html
2007年7月20日「私有車の業務上利用に関する規程」
http://blog.livedoor.jp/shanaikitei/archives/54732537.html


参考リンク
長野県警察本部 「安全運転管理制度について」
http://www.pref.nagano.jp/police/koutsu/kikaku/ankan.htm


(福間みゆき)


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