二次健康診断等給付とはどのようなものですか?

 先週、宮田部長は健康診断の結果、要再検査となった場合の対応について大熊社労士に相談したが、今回も引続き、健康診断のことで相談があり、二次健康診断等給付について尋ねることとした。




宮田部長宮田部長:
 大熊先生、こんにちは。当社ではこれから繁忙期のシーズンに入っていきますが、先日、同業者の会合があり、二次健康診断等給付というものがあることを初めて聞きました。そこで、今日は二次健康診断等給付について教えてもらえませんか?
大熊社労士:
 わかりました。まずは二次健康診断等給付が行われている背景をお話しておきましょう。以前、過労死認定基準についてお話したことを覚えていらっしゃいますか?
宮田部長:
 はい。1ヵ月の時間外労働が80時間を超えた状態が続くと、脳・心臓疾患の発症の危険性が高くなるというお話ですね。月80時間という数字は、ばっちり頭に入っています。
大熊社労士:
 しっかり認識してくださっているので安心です。この過労死を予防するための対応として、基本的には時間外労働はできるだけ抑制し、少なくとも月80時間以内に収めるようにしていくことが求められますが、健康診断の結果に一定の項目に異常がある場合にも脳・心臓疾患を発症しやすいということが医学的見地から言われています。そこで厚生労働省では、過労死予防の観点から、次の3点を満たす者に対して、労災保険給付として二次健康診断等を現物給付する制度を設けているのです。
一次健康診断の結果、異常の所見が認められること
 二次健康診断等給付は、一次健康診断の結果において、次のすべての検査項目について、「異常の所見」 があると診断された方が受けることができます。
1.血圧検査
2.血中脂質検査
3.血糖検査
4.腹囲の検査またはBMI(肥満度)の測定
※一次健康診断の担当医師から、1.から4.の検査項目において異常なしの所見と診断された場合であっても、労働安全衛生法に基づき事業場に選任されている産業医等が就業環境等を総合的に勘案し、異常の所見が認められると診断した場合には、産業医等の意見を優先して、異常の所見があるとみなします。
脳・心臓疾患の症状を有していないこと
 一次健康診断またはその他の機会で、医師により脳・心臓疾患の症状を有すると診断された方については、二次健康診断等給付の対象とはなりません。
特別加入者でないこと
 特別加入者は健康診断の受診がその自主性に任されていることから、特別加入者は二次健康診断等給付の対象とはされていません。
宮田部長:
 なるほど。それでは具体的にどのような給付を受けることができるのでしょうか?
大熊社労士:
 はい、二次健康診断等給付には、「二次健康診断」と「特定保健指導」があり、受診者の負担なしで、以下の検査を受けることができます。
二次健康診断
1.空腹時血中脂質検査
2.空腹時血糖値検査
3.ヘモグロビンA1c(エーワンシー)検査
4.負荷心電図検査又は胸部超音波検査(心エコー検査)のいずれか一方の検査
5.頸部超音波検査(頚部エコー検査)
6.微量アルブミン尿検査
特定保健指導
1.栄養指導
2.運動指導
3.生活指導
宮田部長:
 結構いろいろな検査を受診することができるのですね。それで受診したい者がいる場合には、どのような手続をすればよいのでしょうか?
大熊社労士大熊社労士:
 手続きとしては、二次健康診断等給付請求書(様式第16号の10の2)に必要事項を記入し、一次健康診断の結果を証明することができる書類(一次健康診断の結果の写しなど)を添付した上で、健康給付医療機関等を経由して、所轄の都道府県労働局長に提出することになっています(二次健康診断等給付について都道府県労働局長の指定を受けた診療機関の窓口に直接提出)。ただし、原則として一次健康診断の受診日から3ヶ月以内に請求を行う必要があり、年度(4月1日から翌年3月31日まで)に1回のみの給付となっている点に注意が必要です。
宮田部長:
 9月に健康診断を受けたところですので、まだ間に合いますね。明日の朝礼で、該当者がいれば受診するように連絡しておきます。
大熊社労士:
 あまり知られていない制度ですので、社内アナウンスは重要ですね。

>>>to be continued


[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。今回は二次健康診断等給付を取り上げてみましたが、ここで給付を受けることができる回数について補足しておきましょう。二次健康診断等給付は一年度内(4月1日~翌年の3月31日までの間)に1回のみ受けることができます。そのため、同一年度内に2回以上の定期健康診断を受診しているような場合には、仮にいずれも二次健康診断等給付の要件を満たしていたとしても、二次健康診断等給付はその年度内に1回しか受けることができません。なお、この二次健康診断等給付は、都道府県労働局長の指定を受けた医療機関等でのみ受けることができることになっていますので、念のため都道府県労働局へ確認しましょう。



関連blog記事
2009年11月9日「健康診断で「要再検査」の結果の場合、会社はどのように対応すればよいですか?」
https://roumu.com/archives/65157994.html
2009年6月18日「二次健康診断等給付の請求手続」
http://blog.livedoor.jp/leafletbank/archives/50484583.html
2009年6月17日「[ワンポイント講座]健康診断の費用は会社が負担しなければならないのか」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51571719.html
2008年11月5日「[ワンポイント講座]派遣社員の健康診断は派遣先・派遣元のどちらが行うのか」
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2008年7月16日「社員の健康づくりに力をいれる企業が増加」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51372252.html
2008年6月4日「平成20年4月から始まった特定健康診査と特定保健指導の積極支援にかかる医療費控除」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51342924.html


参考リンク
厚生労働省「二次健康診断等給付の請求手続」
http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/rousai/040325-1.html
大阪労働局「二次健康診断等給付制度をご存知ですか」
http://osaka-rodo.go.jp/joken/anzen/kenko/kyufu.php


(福間みゆき)


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