改正労基法における特別条項付き36協定に関する事項についてはどのように対応すればよいのですか?

 宮田部長は先日、大熊社労士から2010年に予定されている法改正のポイントを聞いたが、それを受け、本日は改正労働基準法への対応について相談することにした。


宮田部長:
 大熊先生、こんにちは。
大熊社労士:
 こんにちは。今日は4月1日に施行される改正労働基準法への対応についてお話することになっていましたので、早速、本題に入りましょう。
宮田部長宮田部長:
 よろしくお願いします。さて前回、法改正のポイントとして特別条項付き36協定に関する事項、法定割増賃金率の引上げに関する事項、代替休暇に関する事項、時間単位年休に関する事項という4つのポイントがあるとお聞きしましたが、今回はまずの特別条項付き36協定への対応について教えてください。
大熊社労士:
 分かりました。そもそも従業員に時間外労働を行わせる場合には、36協定を締結し、労働基準監督署へ届け出る必要があります。その際、この時間外労働については限度時間が定められていますが、その時間数を覚えていらっしゃいますか?
宮田部長:
 はい。1ヵ月45時間、1年間360時間ですね。
大熊社労士:
 そのとおりです。ちなみに1年単位の変形労働時間制を採用している場合は、1ヵ月42時間、1年320時間となりますので注意が必要です。このように時間外労働については限度時間が定められていますが、実務上、繁忙期や機械の故障などの突発的な対応のために、この限度時間を超えて働く必要が出てくることもあるでしょう。御社だと年度末でしょうか?
宮田部長:
 そうですね。当社では2~3月が繁忙期となり、月80時間近い残業を行なう場合ももあります。
大熊社労士大熊社労士:
 このような場合、特別条項付きの36協定を締結する必要がありますが、4月から新たに以下の3点に対応する必要があります。
(1)限度時間を超えて働かせる一定の期間(1日を超え3か月以内の期間、1年間)ごとに、割増賃金率を定めること
(2)(1)の率を法定割増賃金率(2割5分以上)を超える率とするよう努めること
(3)そもそも延長することができる時間数を短くするよう努めること
宮田部長:
 ということは会社としては4月までに、限度時間を超えて働かせる場合の割増賃金率を決める必要があるということですね。(2)に法定割増賃金率(2割5分以上)を超える率とするようにとありますが、必ず2割5分以上にしなければならないのでしょうか?
大熊社労士:
 いえ、これは努力義務ですので労使で協議した結果、2割5分とするのであれば問題ありませんが、できれば協議をした際の議事録などを残しておくとよいでしょう。
宮田部長:
 分かりました。当社の36協定は4月1日から1年間となっていますが、3月中に提出する場合も法改正に対応しておく必要がありますか?
大熊社労士:
 これについては、平成22年4月1日以降に協定を締結または更新した場合に適用されるため、平成22年3月31日以前に締結する場合には適用されないことになっています。具体的には、3月30日に締結し、31日に届出されたもの、あるいは30日には締結されたが届出が遅れて4月1日を過ぎたものについては適用を受けません。しかし、今回の改正に適合したものにすることは望ましいことですね。
宮田部長:
 当社としては今回から対応していくようにします。時間外労働を少なくしていくためにも、労使で話合いの場を持ち、しっかり対策を検討した方が良いのではないかと考えています。
大熊社労士:
 そうですね。ちなみに今回、2割5分を超える割増賃金率を定める場合には賃金規程と労働契約書の記載を見直す必要もありますので、忘れないようにお願いしますね。

 

>>>to be continued

[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。今回は改正労働基準法のうち、特別条項付き36協定に関する事項への対応を取り上げてみましたが、ここで「時間外労働の限度に関する基準」が適用されない事業について補足しておきましょう。そもそも、以下の事業・業務については事業等の特性からこの限度時間の適用を受けないことになっています。
・工作物の建設等の事業
・自動車の運転の業務
・新技術、新商品等の研究開発の業務
・厚生労働省労働基準局長が指定する事業又は業務(※1年間の限度時間については適用あり)

 そのため、以上の業務については4月に行われるこの基準の改正は適用されません。しかし、これらの業務の中には長時間労働となりやすいと業務も含まれておりますので、過重労働防止の観点から時間外労働の時間数を削減していくことが望まれます。


関連blog記事
2010年1月4日「今年もいろいろな法改正が予定されています」
http://localho
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2009年11月16日「動画で見られる厚生労働省労働基準局による改正労働基準法解説」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51651686.html
2009年10月30日「改正労働基準法の詳細パンフレット ダウンロード開始」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51643966.html
2009年8月21日「改正労働基準法のポイント」
http://blog.livedoor.jp/leafletbank/archives/50521596.html
2009年6月8日「改正労働基準法の施行にかかる通達・省令・告示が発出」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51565876.html

 

(福間みゆき)

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