平成22年6月30日に施行される改正育児介護休業法のポイントを教えて下さい(1)

 服部印刷では、改正育児介護休業法の施行によってどのような取扱いに変わるのか、社員から相談が寄せられていた。そこで宮田はどのような準備が必要なのかを大熊社労士に相談することにした。



宮田部長宮田部長:
 大熊先生、こんにちは。以前、改正育児介護休業法の概要について少しお聞きしましたが、今日は具体的な取扱いについて教えてさせてください。
大熊社労士:
 施行日が今年の6月30日に決まりましたので、そろそろ準備も必要になりますね。今回の改正は企業に非常に大きな影響を与える内容を含んでいますから、今後数回に分けて詳しく解説することにしましょう。それでは本日は基本的な育児休業の取扱いについてお話します。
宮田部長:
 よろしくお願いします。
大熊社労士:
 女性が出産する場合、使用者は6週間(多胎妊娠の場合は14週間)以内に出産予定の女性が休業を請求した際にはその者を就業させてはならず、産後8週間を経過しない女性については就業させてはならないことになっています。
福島照美福島さん:
 産前休暇については本人の請求に基づいて与えられるもので、産後休暇は本人の請求の有無に関係なく与えられなければならないのですね。
大熊社労士:
 そのとおりです。産後休暇については必ず休んでもらう必要があります。次に育児休業ですが、改正前の現時点(平成22年2月)においては、労使協定を定めることで配偶者が専業主婦(夫)や育児休業期間中である場合、社員は育児休業を取得することができません。
宮田部長:
 当社でも取得することができないようになっています。これがどのようになるのでしょうか?
大熊社労士:
 はい、今後はこの取扱いそのものが廃止され、専業主婦(夫)や家庭の夫(妻)がいる場合でも育児休業を取得できるようになります。これは父親も子育てができる働き方を実現しようという考えが背景にあるようです。
宮田部長:
 なるほど。
大熊社労士:
 次に、上記の内容と関係してくることですが、両親ともに育児休業を取得する場合、特例として、育児休業の対象となる子の年齢が原則1歳までから原則1歳2ヶ月までに延長されることになります。これがパパママ育休プラスと呼ばれる取扱いです。ただし、これは配偶者が子の1歳到達日以前のいずれかの日において育児休業をしていることが要件とされ、育児休業の開始日が1日でも遅れると取得できなくなくなりますので、厚生労働省から発表されている「改正育児・介護休業法のあらまし」の具体例を参考に確認しておく必要がありますね。
福島さん:
 担当者としては休業の開始日・終了日の管理が必要ですね。
大熊社労士大熊社労士:
 そうですね。これは結構実務は煩雑になりますので、また対応を検討しましょう。それでは次の改正点に進みましょう。育児休業の取得は子につき1回とされていますが、父親の産後8週間以内の育児休業の取得について特例が設けられます。この特例の対象となる期間は、原則として出生から8週間後までの間に育児休業を取得した場合とされていますが、(1)出産予定日前に子が生まれた場は、出生日から出産予定日の8週間後まで、(2)出産予定後に子が生まれた場合は、出産予定日から出生日の8週間後までとなります。注意点としては、この再度取得の特例を受けるためには、産後8週間以内に育児休業が終了している必要があるということです。
宮田部長:
 上記に当てはまるように、育児休業を開始して、かつ終了していなければならないのですね。社員にとってはこの細かな取扱いは分かりにくいものですから、ポイントを説明して、事前に相談してもらうようにしておきます。
大熊社労士:
 社内報などを活用して、制度を分かりやすく伝えるという方法もひとつですね。
宮田部長:
 なるほど、よいアイデアですね。


>>>to be continued


[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。今回は改正育児介護休業法をとり上げましたが、育児休業の申出方法について補足しておきましょう。現在、育児休業の申出は書面で行わなければなりませんが、改正後は書面のほかに、ファックスや電子メールなどでも可能になります。また、この取扱いは、育児休業の開始予定日および終了予定日の変更の申出、育児休業の撤回の申出、育児休業申出後に子が出生した場合の通知についても、同様の取扱いとなり、申出の方法が複数になることによって手続きの負担が軽くなることが期待できるでしょう。ただし、社員からの申出が期間内に行われなかったり、あるいは送信の不達によってトラブルにもなりかねないため、お互いに電話を一歩入れて確認するなどの配慮が望まれます。



関連blog記事
2010年2月5日「厚生労働省より公開された改正育児・介護休業等に関する規則の規定例」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51692789.html
2010年2月4日「改正育児・介護休業法のあらまし」
http://blog.livedoor.jp/leafletbank/archives/50641551.html
2010年1月22日「「[新改正育児介護休業法]所定外労働の免除の義務化が除外できるケースと注意点(2)」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51686226.html
2010年1月18日「[新改正育児介護休業法]1歳までの再度の育児休業申し出(1)
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51683890.html
2009年12月29日「改正育児介護休業法に関する省令が公告されました」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51673737.html
2009年12月28日「[改正育児介護休業法]所定外労働の制限からも除外された専業主婦(夫)の除外規定(8)」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51670243.html
2009年12月24日「[改正育児介護休業法]義務化された子を養育する労働者の残業免除制度の請求手続き(7)」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51670241.html
2009年12月22日「[改正育児介護休業法]義務化された子を養育する労働者の残業免除制度(6)」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51667511.html
2009年12月18日「[改正育児介護休業法]労使協定の締結により介護休暇の対象から除外できる者の範囲(5)」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51667053.html
2009年12月17日「[改正育児介護休業法]新設された介護休暇の内容(4)」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51667050.html
2009年12月15日「[正式決定]改正育児・介護休業法 短時間勤務義務化などの施行日は平成22年6月30日」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51666819.html
2009年12月14日「[改正育児介護休業法]子の看護休暇の日数と看護の対象範囲の拡充(3)」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51665994.html
2009年12月10日「[改正育児介護休業法]出産後8週間以内の父親の育児休業の取得の促進(2)」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51664565.html
2009年12月8日「[改正育児介護休業法]労使協定で除外できる育児休業の取得者の範囲(1)」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51663036.html
http://blog.livedoor.jp/shanaikitei/archives/55243810.html


参考リンク
厚生労働省「育児介護休業法の改正について」
http://www.mhlw.go.jp/topics/2009/07/tp0701-1.html
21世紀職業財団「両立支援のひろば」
http://www.ryouritsushien.jp/


(福間みゆき)


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