成長分野等人材育成支援奨励金について教えてください

 知り合いの社長から成長分野等人材育成支援奨励金のことを聞いた宮田部長は、大熊社労士にその概要について確認してみることにした。



宮田部長:
 大熊先生!新しく雇用した人に教育を行うと20万円が支給される助成金ができたと聞いたのですが、この助成金は当社でも受給できるのでしょうか?
大熊社労士大熊社労士:
 情報が早いですね。成長分野等人材育成支援奨励金のことだと思います。この助成金は政府の新成長戦略の中で重点強化の対象となっている健康、環境の分野の成長を支えていくために創設された制度で、一定の条件の下に、事業主が負担した職業訓練の経費を一人あたり20万円を上限として支給するものです。本日はこの新しい助成金についてご説明しましょう。
宮田部長:
 よろしくお願いします。
大熊社労士:
 まず、この成長分野等人材育成支援奨励金の主な支給要件は2点あります。
健康、環境分野及び関連するものづくり分野の事業を行っていること。
雇用期間の定めなく雇用した労働者、または他分野から配置転換した労働者を対象に、1年間の職業訓練計画を作成し、Off-JTを実施すること。
この2点が必要とされています。
宮田部長:
 健康、環境分野および関連するものづくり分野の事業というのはどのような事業が該当するのでしょうか?
大熊社労士:
 厚生労働省がパンフレットを発行しているのですが、それによると日本標準産業分類のうち林業、電気業、情報通信業、運輸業・郵便業、スポーツ施設提供業、スポーツ・健康教授業、医療、福祉、廃棄物処理業がこの助成金を受給できる産業分野とされており、建設業や製造業、学術・開発研究機関、その他の産業であったとしても環境や健康分野に関する建築物や製品を製造するなどする場合は対象となるとされています。
宮田部長:
 当社の開発した環境負荷の低い新しいパッケージ印刷の事業は該当するのでしょうか?
大熊社労士:
 該当する可能性はあるかも知れませんね。労働局に確認してみたところ、産業分類で該当するところは比較的審査が早いのですが、産業分類上該当しないところについては、時間をかけて審査をするとのことでしたので、可能性があるなら一度トライしてみると良いかも知れませんね。
宮田部長:
 なるほど。それでは他の要件についても教えてください。
大熊社労士:
 はい。それでは訓練の対象となる労働者について説明しましょう。訓練の対象となる労働者については2種類が例示されています。
申請日の前日から起算して5年前の日以降に成長分野等へ雇入れられた、期間の定めなく雇用される労働者であること。
申請日の前日から起算して5年前の日以降に成長分野等以外の分野から成長分野等へ配置転換した、期間の定めのない労働者であること。
以上のいずれかに該当する労働者が支給対象となります。
宮田部長:
 なぜ5年前で区切られているのでしょうか?
大熊社労士:
 この助成金の目的は、成長分野の成長を支え、生産性を高めることです。5年以上であれば、ある程度実務には「慣れて」いますので教育に対する成長は経験の少ない方に比べれば緩やかだと思われます。比較的経験の少ない経験5年以内への教育を促して大きく成長してもらいたいという狙いかもしれませんね。職業訓練計画の実施期間中に、訓練を受けている労働者を雇入れた場合も対象となるようですしね。
宮田部長:
 なるほど。教育訓練の内容については、どのようになっているのですか?
大熊社労士:
 教育訓練の内容については、「職業訓練計画」と「職業訓練コース」という用語で説明されています。全体のことを「職業訓練計画」と呼び、それを構成する要素のことを「職業訓練コース」といいます。「職業訓練計画」の要件としては、
成長分野等の業務に関する内容のものに限り、趣味・教養と区別のつかないものなどは含まないこと
実施期間が原則1年であり、遅くとも平成23年度末までに開始するものであること
とされています。
宮田部長:
 えっ?それでは1年間のみの期限付きの助成金ということですか?
大熊社労士:
 はい、そうなりますね。それだけに申請を検討するのであれば、早めに行う必要がありますね。「職業訓練コース」についても二つの条件が示されており、
1訓練コースの訓練時間数が10時間以上であり、かつ、Off-JTを含むもの
労働者の所定労働時間内に実施される訓練が、原則として総訓練時間数の3分の2以上であること
とされています。
宮田部長:
 1訓練コースの訓練時間が10時間以上となると結構なボリュームになりますね。Off-JTを含むものとあるだけなので、OJTとの割合は自由ということでしょうか?
大熊社労士:
 そうですね。あまりに極端なものはどうかと思いますが、基本的にはそのような理解でよいかと思います。
宮田部長宮田部長:
 所定労働時間内に実施される訓練が、原則として総訓練時間数の3分の2以上であることとされていますが、3分の1については労働時間でなくてもよいということですか?
大熊社労士:
 そういうことになりますが、効果的な教育とするためには、参加を強制する必要がありますから、現実的には労働時間としないことは難しいでしょうね。
宮田部長:
 そうですよね。受給できる金額について教えてください。
大熊社労士:
 支給額は事業主が負担した訓練費用が、1訓練コースについて対象者1人当たり20万円を上限として支給されます。具体的には事業所内訓練の場合は
外部講師(社外の者に限る)の謝金・手当
施設・設備の借上料
学科または実技の訓練を行う場合に必要な教科書などの購入または作成費
そして事業所外訓練の場合は受講に際して必要となる入学料、受講料、教科書代などとされています。
宮田部長:
 なるほど、よくわかりました。当社でも受給できるかどうか検討してみます。
大熊社労士:
 そうですね。是非検討してみてください。


>>>to be continued


[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス 
こんにちは、大熊です。以下では成長分野等人材育成支援奨励金の受給手続きについて補足しておきましょう。この助成金を受給するためには、1.職業訓練計画を作成し、認定を受けるときと、職業訓練計画に基づいて訓練を実施した後、2.支給申請するときの計2回、ハローワークで以下の要件確認が必要となります。
職業訓練計画の認定を受けるとき
(1)一覧表に掲げる成長分野等の事業をおこなっていること。
(2)一定の要件を満たした職業訓練計画を作成していること。
(3)雇用保険の適用事業主であること
(4)職業能力開発推進者を選任し、都道府県職業能力開発協会に選任調べを提出していること。
支給申請するとき
(1)受給資格認定を受けた職業訓練計画に基づき、訓練を実施したこと。
(2)受給資格認定申請書の提出日の前日から起算して6か月前の日から支給申請書の提出日までの間に、事業所で雇用する雇用保険被保険者を事業主都合により解雇していないこと。
(3)支給申請の前々年度より前のいずれかの保険年度に、労働保険料を滞納していないこと。
(4)受給資格認定申請書の提出日から起算して3年前から支給申請書の提出までの間に、他の奨励金などを不正受給していないこと。支給申請書の提出日から起算して3年前から支給申請書の提出までの間に、労働関係法令の違反を行っていないこと
(5)対象労働者の雇入れまたは成長分野等以外の分野からの配置転換を行った事業所で、支給決定などに必要な書類を整備・保管していること。


 なお1回目の職業訓練計画の認定を受けるためには、審査に時間がかかるので訓練開始1か月前までに、支給申請をするときには訓練終了後2ヶ月以内に必要書類をそろえ、支給申請をする必要があります。



関連blog記事
2010年12月28日「健康・環境分野の人材育成に活用できる成長分野等人材育成支援奨励金」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51810550.html


参考リンク
厚生労働省「成長分野等人材育成支援事業」
http://www.mhlw.go.jp/general/seido/josei/kyufukin/f-top.html


(中島敏雄)


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