計画停電が実施される場合の休業手当の取扱について教えてください
宮田部長は先日、業界団体の会合に出席した。そのときある出席者が、計画停電で事業所を休業させた場合の休業手当の取扱について悩んでいたため、大熊に相談してみた。
宮田部長:
大熊先生、こんにちは。東日本大震災の被害状況が連日報道されていますが、関東では計画停電が実施されているようですね。先日参加した業界団体の会合で、関東に営業所がある企業の方と話していたのですが、計画停電に伴い営業所を休業とした場合に、休業手当はどうすればよいかと悩んでいました。できればその対応に関する情報を伝えてあげたいと思っているのですが、どのように対応すればよいのでしょうか?
大熊社労士:
そうですか。関東では計画停電でかなりの影響が出ているようですね。この点については先日3月15日に「計画停電が実施される場合の労働基準法第26条の取扱について」という通達が出されましたので、その内容についてお話しましょう。
宮田部長:
早速そんな通達が出ているのですね。よろしくお願いします。
大熊社労士:
分かりました。通達の解説をさせていただく前にまず、労働基準法第26条について確認しておきましょう。「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない」とあります。今回は、この停電が使用者の責に帰すべき事由に該当するのかと点が判断のポイントとなります。
宮田部長:
私は計画停電は使用者の責に帰すべき事由ではないと思うのですが、いかがでしょうか?
大熊社労士:
宮田部長のおっしゃるとおり、今回の通達においては、「1 計画停電の時間帯における事業場に電力が供給されないことを理由とする休業については、原則として法第26条の使用者の責に帰すべき事由による休業には該当しない」としています。
宮田部長:
そうですよね。計画停電は使用者には何の責任もありませんからね。
大熊社労士:
そうですね。しかし、今回の計画停電は各グループ毎に3時間から6時間程度が予定されていますので、実際に停電となっている時間以外の休業については問題が残ります。この点について、今回の通達では「2 計画停電の時間帯以外の時間帯の休業は、原則として法第26条の使用者の責に帰すべき事由による休業に該当すること」とされています。
宮田部長:
具体的には始業時刻が午前9時、終業時刻が午後6時の会社で、例えば午後1時から4時まで計画停電が実施される場合に、終日休業とするような場合を想定すればよろしいですか?
大熊社労士:
そのとおりです。そのような場合は、この通達に続く但書きの解釈がポイントになります。「ただし、計画停電が実施される日において、計画停電の時間帯以外の時間帯を含めて休業とする場合であって、他の手段の可能性、使用者としての休業回避のための具体的努力等を総合的に勘案し、計画停電の時間帯のみを休業とすることが企業の経営上著しく不適当と認められるときには、計画停電の時間帯以外の時間帯を含めて原則として法第26条の使用者の責めに帰すべき事由による休業には該当しないこと」とされています。
宮田部長:
どういうことですか?
大熊社労士:
この通達は、厚生労働省労働基準局監督課長から各都道府県の労働局労働基準部監督課長に発せられた通達ですので、この「他の手段の可能性、使用者としての休業回避のための具体的努力」についてはその解釈を各県の労働局あるいは労働基準監督署の解釈に委ねられています。よって現実的にそのような場合で休業手当の支払いを行わないとするのであれば、所轄の労働基準監督署に確認することがよろしいかと思います。通常は突発的な天災事変の場合は100%賃金を保証する会社が多いかと思いますが、今回は長期間に亘ることも予想されますので、通達をもとに取扱をよく検討される必要があるでしょう。また雇用調整助成金の活用も健闘する必要があるでしょうね。
>>>to be continued
[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
こんにちは、大熊です。今回の計画停電でも、当初計画停電を実施する予定だったものの、実際には停電が行われなかったというケースが連続しています。計画停電を想定して休業したものの、実際には計画停電が実施されなかった場合の休業手当について、本通達は「計画停電が予定されていたため休業としたが、実際には計画停電が実施されなかった場合については、計画停電の予定、その変更の内容やそれが公表された時期を踏まえ、上記1及び2に基づき判断すること」としています。このような場合においても、やはり各監督署、各労働局で見解が異なることが想像されますので、所轄労働基準監督署に個別の事情を説明して、確認するとよいでしょう。
[関連法規]
労働基準法 第26条(休業手当)
使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない。
[関連通達]
平成23年3月15日 基監発0315第1号
1 計画停電の時間における事業場に電力が供給されないことを理由とする休業については、原則として法第26条の使用者の責めに帰すべき事由による休業には該当しないこと。
2 計画停電の時間帯以外の時間帯の休業は、原則として法第26条の使用者の責めに帰すべき事由による休業に該当すること。ただし、計画停電が実施される日において、計画停電の時間帯以外の時間帯を含めて休業とする場合であって、他の手段の可能性、使用者としての休業回避のための具体的努力等を総合的に勘案し、計画停電の時間帯のみを休業とすることが企業の経営上著しく不適当と認められるときには、計画停電の時間帯以外の時間帯を含めて原則として法第26条の使用者の責めに帰すべき事由による休業には該当しないこと。
3 計画停電が予定されていたため休業としたが、実際には計画停電が実施されなかった場合については、計画停電の予定、その変更の内容やそれが公表された時期を踏まえ、上記1及び2に基づき判断すること。
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2011年3月16日「計画停電による休業における賃金取扱いに関する通達が発出[引用・転載歓迎]」
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2011年3月14日「東日本大震災の被災に伴い、被保険者証を紛失した等の場合は保険扱いで受診可能に」
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参考リンク
厚生労働省「計画停電時の休業手当について」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/other/110316.html
(中島敏雄)
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