精皆勤手当の見直しを行いたいと考えているのですが

 宮田部長は毎月の給与計算のチェックを行っていて、精皆勤手当のあり方について疑問に感じるところがあった。


宮田部長:
 大熊先生、最近、他の会社では精皆勤手当を支給している事例は多いのでしょうか?
大熊社労士:
 精皆勤手当ですか?どうしてまた突然、そんな話になっているのですか?
宮田部長宮田部長:
 はい、当社では福島さんが毎月の給与計算をしてくれているのですが、一応私が最終チェックをしています。もっとも細かいところではなく、全体を見て、おかしなところがないかを確認しているということなんですけれどね。それで今月も全社員の明細一覧を眺めていたのですが、そこで精皆勤手当が気になったのです。というのもほとんどの社員は毎月これがきちんと支給されており、欠勤や遅刻をして手当が減額になるという者はそれこそ数ヶ月に一人といった感じなのです。このような状態であれば、もう精皆勤手当を支給する意味はないのではないかと思ってしまったという次第なのです。
大熊社労士:
 なるほど。それは遅刻や欠勤をする社員がいなくなったということですから、御社にとっては喜ぶべきことかも知れませんよ。もっとも最近は年次有給休暇が拡充され、また企業によっては時間単位の年休を認めるような場合もあることから、精皆勤手当が減額されるようなことが本当に少なくなりましたね。その意味では確かに多くの企業にとって、精皆勤手当の役目は終わったと言えるのかも知れません。
宮田部長:
 やはりそうですよね。それで他社はこの手当を廃止しているのですか?
大熊社労士:
 そうですね。まだまだ根強く支給されている企業が多いとは思いますが、賃金制度改定を行う際にはこれを廃止し、基本給に組み入れる例が増えているのは間違いないでしょう。求人対策上も同じ金額を支払うのであれば精皆勤手当ではなく、基本給で支給した方が遡及できると考えられますので。
宮田部長:
 なるほど、そうですよね。でも、精皆勤手当を廃止し、基本給に組み入れることでなにか影響はありませんか?
大熊社労士大熊社労士:
 まず時間外手当についてはそもそも精皆勤手当も除外賃金ではありませんので、基本給に組み入れたところで影響はありません。考えておかなければならないのは賞与と退職金ですね。多くの企業では基本給に支給月数を乗じることで賞与や退職金の計算をしていることから、単純に手当を廃止し、基本給に組み入れてしまうと賞与や退職金の支給額が増加してしまうという恐れがあります。
宮田部長:
 当社では退職金は中退共の確定拠出型で行っているので問題ありませんが、賞与制度については基本給に一定の支給月数を乗じて算出しているので影響がありそうですね。
大熊社労士:
 そうですね。このような場合、賞与にしても退職金にしても、基本給とは非連動の制度を導入することが基本方針となります。例えば賞与制度としてはポイント制と呼ばれる仕組みを導入することが多いですね。
宮田部長:
 ポイント制ですか?それはどのような制度なのでしょうか?
大熊社労士:
 はい、それについては次回、じっくりお話させて頂きますね。まず今回の件について言えば、賞与制度を基本給非連動の制度に変更した上で、精皆勤手当は廃止し、基本給に組み入れていくのが良いのではないかと思います。
宮田部長:
 わかりました。それでは次回、そのポイント制という賞与の仕組みについてレクチャーをお願いします。
大熊社労士:
 了解しました。

>>>to be continued

[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。今回は精皆勤手当の見直し状況について取り上げました。労働基準法においては減給の制裁について一定の制限が設けられていることもあり、昔から勤怠不良の社員への対応として精皆勤手当を支給する例が多く見られました。例えば毎月10,000円の精皆勤手当を支給し、遅刻をするとこれが5,000円に減額され、複数回の遅刻や欠勤があると全額支給停止になるといったものです。かつては欠員による生産活動へのマイナスを避ける意味などから製造業を中心にこの手当の採用率は非常に高かったのですが、近年は年次有給休暇の拡充などもあり、今回の例のようにあまり機能していないという話が少なくありません。諸手当の原則は必要のあるものを必要最小限設定するということにありますので、最近の賃金改定の事例を見ると精皆勤手当を廃止し、基本給に組み入れるという取り扱いが非常に多くなっています。もし同様の状況が見られる場合には、その必要性から吟味されることをお勧めします。

(大津章敬)

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