土曜日に全社イベントを行うのですが、やはり休日出勤扱いになるのでしょうか?

 来年の会社カレンダーの作成を始めた宮田部長。服部社長の発案により、全社方針発表会を土曜日に行うことになったことで頭を悩ましていた。
※今回のエピソードは実際のカレンダーに基づいて作成されていますので、2012年7月のカレンダーを手元に置き、お読みいただければ幸いです。


宮田部長
 大熊先生、おはようございます。最近は急に涼しくなりましたね。
大熊社労士:
 本当にそうですね。ご存知とは思いますが私はかなりの暑がりなので、本当に助かりますよ。夏場は本当に汗だくでしたから(笑)。
宮田部長
 そうですね。先生がいらっしゃるときはいつも冷房の温度を2度くらい下げていましたから(笑)。
大熊社労士:
 ありがとうございます。実はそういうお客様が多いんですよ。まあ如何にも暑そうにしていますからね。いつもお気遣い頂き、ありがとうございます。
宮田部長宮田部長
 いえいえ、どう致しまして。さて、すっかり気候も秋めいてきたことから、そろそろ来年の会社カレンダーの作成に着手したのですが、一つ問題がありまして、今日はその相談に乗っていただきたいと思っています。
大熊社労士:
 そうでしたか。問題といいますと?
宮田部長
 はい、実は社長から「来年からは年初である1月と、半期が終了した7月に全社員を集めて、方針発表会を行いたい」という提案があったのです。
大熊社労士:
 それは素晴らしい考え方ですね。会社を取り巻く環境はどうなのか、業績はどういう状態にあるのか、そして今後、どのような方針で事業を運営していくのか。こうしたことを社員と共有することは、良好な組織風土を作る第一歩ですからね。そのアイデアには大賛成です!
宮田部長
 そうですね、私もその開催には大賛成なのですが、カレンダーをどうすればよいのかと思っていまして。具体的には期首の発表会は来年(2012年)1月15日の土曜日、そして半期の発表会が7月7日の土曜日に開催する方向になっています。1月15日についてはその週の月曜日が祝日なので問題ないのですが、7月7日については普通の週なので、土曜日を出勤としてしまうとその週は6日勤務になってしまうのです。ということは休日出勤扱いになってしまいますよね?
大熊社労士:
 なるほど、そういう話ですね。確かに7月の第1週は祝日等がありませんので、7日の土曜日に出勤させるとその週は6日の勤務になってしまいますね。御社は1日の所定労働時間が8時間で完全週休2日制を採用されていますから通常はこうした問題はありませんが、今回、土曜日に発表会を行うことで休日出勤の問題が出てきたということですね。
宮田部長
 はい、その通りです。やはり休日の割増を支払うしかないのでしょうかね。
大熊社労士:
 原則で言えばそうですが、今回は変形労働時間制を採用すればこの問題は解決できそうですね。
宮田部長
 そうなんですか!
大熊社労士大熊社労士:
 はい、具体的には1ヵ月単位の変形労働時間制を採用すれば良いでしょう。これは1ヵ月以内の一定期間を平均し、1週間当たりの労働時間が法定労働時間(40時間)を超えない範囲内において、特定の日または週に法定労働時間を超えて労働させることができる制度です。この説明では分かりにくいので、具体的な取り扱いで見ていきましょう。今回、7月7日の土曜日に出勤させることにより、7月1日(日)から7日(土)までの1週間の所定労働日数は6日となります。御社の1日の所定労働時間は8時間ですから、結果的にこの週の所定労働時間は48時間となり、原則で言えば土曜日が休日出勤となってしまいます。
宮田部長
 そうですね。
大熊社労士:
 ここで登場するのが、1ヵ月単位の変形労働時間制です。御社の給与計算期間は毎月1日から末日ですので、この1ヶ月を変形期間として定めると、その期間の暦日数は31日。そのうち日曜日が5日、土曜日が4日、そして16日が海の日の祝日となっています。よって通常であれば10日のお休みがある訳です。しかし、来年については7日の土曜日を出勤とするため、この月の休日は9日ということになります。ここまではよろしいですね?
宮田部長
 はい、大丈夫です。
大熊社労士:
 この1ヵ月単位の変形労働時間制というのは今回の場合で言えば、7月の1ヵ月を平均した週所定労働時間が、週40時間以下になっていれば良いという制度なのです。そのチェック方法は以下の算式によります。
(暦日数-所定休日日数)×1日所定労働時間÷暦日数×7日 ≦ 40時間
宮田部長
 えーっと、これを今回の7月のカレンダーに当てはめると、どうなるのかな?暦日数が31日、所定休日は9日、1日の所定労働時間は8時間なので、こんな感じですね。
(31日-9日)×8時間÷31日×7日=39.74193548時間
大熊社労士:
 そうですね。これが1ヵ月単位の変形労働時間制を採用した場合の来年7月の所定労働時間です。40時間以内に収ま
っていますので、7日の土曜日は休日出勤にはならないということになります。
宮田部長
 なるほど、そういうことなんですね。
大熊社労士:
 はい、結論から言えば、1日の所定労働時間が8時間の会社であれば、2月以外の通常の月は9日の休日が確保されていれば、週40時間に収まることとなります。
宮田部長
 これで悩みは解決ですね。相談して良かった!ちなみにこの制度を導入するにはどうすればよいのでしょうか?
大熊社労士:
 はい、基本的には就業規則にその旨を定め、カレンダーを事前に確定させておけばOKです。
宮田部長
 そうですか。就業規則の変更等についてはまた相談に乗って頂けますか?
大熊社労士:
 もちろんOKです。それではまずは会社カレンダーの案を作成しておいてください。それが決まったら、就業規則の改定などの作業を進めましょう。

>>>to be continued

[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス 
こんにちは、大熊です。今回は1ヵ月単位の変形労働時間制について取り上げました。1日8時間の会社の場合、完全週休2日制であればこうした変形労働時間制を採用する必要はありませんが、土曜日出勤があるような場合にはこうした制度を採用することで、無駄な休日出勤を制度としてなくすことが可能になります。具体的な手続きとしては、労使協定または就業規則等において以下の事項を定めることが必要です。
①変形期間は1ヵ月以内とする。
②変形期間における法定労働時間(原則週40時間)の総枠の範囲内で、各日、各週の労働時間を特定する。

 なお、変形労働時間制にはこれ以外に1年単位の変形労働時間制というものもあり、比較的多くの企業で採用されています。こちらについてはまた日を改めて取り上げたいと思います。

[関連法規]
労働基準法 第32条の2
 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、又は就業規則その他これに準ずるものにより、1箇月以内の一定の期間を平均し1週間当たりの労働時間が前条第1項の労働時間を超えない定めをしたときは、同条の規定にかかわらず、その定めにより、特定された週において同項の労働時間又は特定された日において同条第2項の労働時間を超えて、労働させることができる。
2 使用者は、厚生労働省令で定めるところにより、前項の協定を行政官庁に届け出なければならない。

[関連通達]
昭和63年3月14日基発150号
 勤務ダイヤによる1ヶ月単位の変形労働時間を採用する場合、各人ごとに、各日、各週の労働時間を就業規則においてできる限り具体的に特定すべきものであるが、業務の実態から月ごとに勤務割を作成する必要がある場合には、就業規則において各直勤務の始業終業時刻、各直勤務の組合せの考え方、勤務割表の作成手続及びその周知方法等を定めておき、それにしたがって各日ごとの勤務割は、変形期間の開始前までに具体的に特定することで足りる。


関連blog記事
2007年1月18日「1ヶ月単位の変形労働時間制に関する協定書」
http://blog.livedoor.jp/shanaikitei/archives/51659259.html
2007年1月19日「1ヶ月単位の変形労働時間制に関する協定届」
http://blog.livedoor.jp/shanaikitei/archives/51678427.html

参考リンク
厚生労働省「1ヵ月又は1年単位の変形労働時間制」
http://www2.mhlw.go.jp/topics/seido/kijunkyoku/week/970415-3.htm

(大津章敬)

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