平成24年度の社会保険料に変更はありますか?

  先週、福島さんから確認をしておきたいことがあるといわれた大熊。服部印刷に訪問すると福島さんが待ち構えていた。


福島照美福島さん:
 大熊先生、こんにちは。 お待ちしておりました。
大熊社労士:
 福島さん、こんにちは。今日は少し確認しておきたいことがあるとのことでしたが、どういうことでしたか?
福島さん:
 はい、毎年3月頃は社会保険料率が変更になる時期ですよね。今年はどうなるかな?と思いまして。
大熊社労士:
 そうでしたか。もしかしたらそうかな?と思っていました。ちょうど、改正動向をお伝えしようと思っていたところでしたからね。今年はいろいろ変更になりそうなので、事前に抑えておきましょう。
宮田部長:
 よろしくお願いします。
大熊社労士:
 まずは人件費(福利厚生費)の大きな負担になりうる健康保険料率(協会けんぽの場合)から見ていきましょう。厚生年金保険はご存じのとおり、平成29年まで引き上げが決定していますが、健康保険料もここのところ引き上げが続いています。そして、今年の3月からは遂に全体の保険料率としては10%を超えると言われています。
服部社長服部社長:
 10%超ですか。労使折半とは言え、従業員にとって5%の負担は多いですよね。大熊さんがおっしゃる通り、会社の負担も相当な額になってきますね。
大熊社労士:
 そうですね。協会けんぽでは、政府へ国庫補助率の引き上げの働きかけを行ったり、経費の節減に取り組んだりしていましたが、保険料率を引き上げざるを得なかったようですね。
福島さん:
 先月末、源泉徴収票をまじまじと見て、社会保険料の多さにびっくりしたところでした。健康保険料率は3月からの引き上げですか?
大熊社労士:
 そうですね。3月の引き上げに向け、周知方法等の検討もしているようですね。そして、4月からは労働保険料が変更される予定です。
福島さん:
 労働保険料・・・。3年に1回変更になるという労災保険料率ですか?
大熊社労士:
 お、するどいですね。そうです。福島さんのおっしゃるとおり、労災保険料率は原則として3年に1回、改定が行われており、前回が平成21年度でしたので、確かに今回見直しになりますね。
宮田部長宮田部長:
 それで、どうなるんですか?やはり、健康保険料率と同じように引き上げになるのでしょうか?
大熊社労士:
  いえいえ、こちらは多くの業種で引き下げが見込まれていますよ。
 服部社長:
 そうですか。労災事故が減少しているんですかね。もしくは、大きな労災事故が減っているとか。
大熊社労士:
 はい、そういう傾向があるようです。具体的な料率の変更ですが、平均で1,000分の5.4であったものを平成24年4月1日から1,000分の4.8へと、1,000分の6引き下げることが予定されています。引き下げは35業種、据え置きが12業種となっており、8業種は引き上げの予定です。ちなみに印刷業は1,000分の4.5から1,000分の3.5への引き下げが見込まれていますね。
福島さん:
 そうなんですね。労働保険の年度更新のときには注意する必要がありますね。
大熊社労士:
 そうですね。まだ決定しているわけではありませんので、また決定した際にはお知らせしますね。それと、注意しなければならないと言えば、労災保険料率だけではなく、雇用保険料率もありますよ。雇用保険料率も引き下げが見込まれています。
宮田部長:
 そうなんですね。いきなり健康保険料率が引き上げと出てきたので、ドキドキしましたが、雇用保険料率も引き下げですか。
大熊社労士:
 そうですね。こちらは、平成23年の法律改正により保険料率が1,000分の14となっており、平成23年度は弾力条項により1,000分の12に引き下げられています。平成24年度については、弾力条項の下限である1,000分の10に引き下げが見込まれていますよ。ちなみにこれは基本となる失業等給付に係る分です。これを労使で折半した上で、事業主は二事業分の保険料率がかかります。
福島さん:
 大熊先生、雇用保険料率も4月から変更になるのですよね?
大熊社労士:
 そうですね。4月1日から改正される見込みですよ。
福島さん:
 となると、当社では健康保険料は翌月徴収ですから、全部、4月の給与から変更になりますね。
大熊社労士:
 そうですね。現在、まだ情報を把握していませんが、これに介護保険料率の変更も加わるかもしれませんが、例年通りですとこれも3月分より変更され、4月の給与から変更していますよね。
福島さん:
 そうですね。なんだか、4月はいろいろ変更になりそうなので、しっかりチェックをしなくてはいけないですね。
服部社長:
 そうだね。できれば、従業員への変更のお知らせも作って掲示板に貼るか、配布するかしたいところだね。宮田部長、これも考えておいてくださいね。
宮田部長: そうですね。了解しました。

>>>to be continued


[大熊社労士のワンポイントアドバイス]

大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。今日は平成24年度の社会保険料率の動向についてお話しました。今や所得税の負担よりも圧倒的に大きくなった社会保険料の負担ですが、合計すると引き上げの方向が続いています。企業にとっても従業員にとっても大きな負担ですので、早めに周知する必要があるでしょう。


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2012年1月12日「いよいよ出された労政審職業安定分科会の改正雇用保険に関する報告」
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2012年1月6日「来年度の健康保険料率引き上げに向けた協会けんぽの周知方法」
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2011年12月7日「平成24年度から多くの業種で引き下げが見込まれる労災保険料率」
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2011年12月6日「来年度から10%超に引き上げられる予定の協会けんぽの保険料率とその要因」
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(宮武貴美)

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