社会保険のパートタイマーへの適用拡大の検討状況を教えてください
最近、社会保険のパートタイマーへの適用拡大のニュースが新聞紙上などを賑わしている。宮田部長はそうした記事を読み、自社への影響を懸念していた。
宮田部長:
大熊先生、こんにちは。
大熊社労士:
こんにちは、いつもお世話になります。もう3月後半だというのに寒い日が続きますね。
宮田部長:
本当にそうですね。この週末も風が強く、結構肌寒かったですからね。桜の花見ももう少し先という感じでしょうか。さて、最近新聞を見ていると社会保険のパートタイマーへの適用拡大の記事をよく目にするのですが、当社でも数名とはいえパートタイマーを雇用しているので、その影響を心配しています。
大熊社労士:
このテーマはどの企業でも大きな関心があるようですね。特に流通やサービスなど多くのパートタイマーを雇用しているような企業では戦々恐々としているというのが実態ではないかと思います。
宮田部長:
そうでしょうね。当社はそれほど人数が多くありませんが、それでも気になるくらいですから、スーパーや飲食店などの経営者は頭を悩ませているのではないかと思います。それでこの件について、現在はどのような検討が行われているのでしょうか?
大熊社労士:
はい、まだ具体的な法律案などは出されておらず、現在は厚生労働省内に設置された「社会保障審議会短時間労働者への社会保険適用等に関する特別部会」において、議論が行われています。
宮田部長:
新聞を見ている限り、ほぼ決定のような感じを受けたのですが、まだそのような段階なのですね。
大熊社労士:
はい、よって実際に社会保険の被保険者範囲の拡大が決まるのかどうかは未だ不透明ではあるのですが、最新の資料によれば以下のような基準で議論が行われています。
(1)所定労働時間 週20時間以上
(2)月額賃金 78,000円以上(年収94万円以上)
(3)勤務期間 1年以上
(4)学生は適用除外
(5)従業員 501人以上
宮田部長:
なるほど、当社の場合は仮に改正が行われたとしても、従業員数が少ないので当面は適用にならないということですね。
大熊社労士:
そうですね。現在の案では2016年4月にこの基準での適用拡大を行い、そこから3年以内に対象を拡大すると法律に明記されるとされています。よって早ければ2019年には適用という話が出てくるのかも知れませんね。
服部社長:
なるほど、そのような状況なのですね。まあ、わが国の労働の構成も昔とは大きく変わって、いわゆる非正規と呼ばれる方々が多くなっていますから、社会保障制度も見直しせざるを得ない部分もあるのでしょうね。とはいえ、業績低迷に喘いでいる企業としては、コスト増に繋がる内容だけに苦しいところです。
大熊社労士:
まったくその通りですね。先日からこちらも新聞紙上を賑わせているAIJの厚生年金基金の問題もあり、年金不安が再び高まっています。今後、更に少子高齢化が進む環境や非正規の増加などの環境を考えると抜本的な年金制度の改革が求められているのは間違いありません。今回の改正の議論がそれに繋がっていけば良いのですが。
服部社長:
確かにそうですね。
大熊社労士:
いずれにしても今回の被保険者範囲の拡大については、正式に決まりましたらまたその内容と影響についてお話ししたいと思います。
宮田部長:
了解しました。ありがとうございます。
>>>to be continued
[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
こんにちは、大熊です。今回は最近、多くの企業の担当者から質問を受ける社会保険被保険者範囲の拡大についての検討状況について取り上げました。文中にも記載した通り、現在は厚生労働省の部会で議論がなされている状況で、予定通りに進めば、この通常国会に法案が提出されることとなっています。さて、文中で挙げた(5)の従業員数の要件ですが、この従業員数をどのように計算するかは大きな注目を浴びるポイントではないかと思われます。この点については先日の部会の資料に記載があり、「現行の基準で適用となる被保険者の数で算定」とされています。このように考えると、当面影響があるのは大企業のみということになるのかも知れません。
参考リンク
厚生労働省「第13回社会保障審議会短時間労働者への社会保険適用等に関する特別部会」
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000025mv0.html
(大津章敬)
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