社会保険の定時決定(算定基礎)とはどのようなものですか?
労働保険の年度更新に取り掛かっている宮田部長であったが、その作業中に社会保険算定基礎の資料が到着した。労働保険の年度更新が気になるものの、まずは算定基礎の概要について大熊に聞いてみることにした。
宮田部長:
大熊先生、こんにちは、先日、先生が仰っていた算定基礎届等が届きましたよ。労働保険の年度更新を進めている最中なのにつらいなぁ。
大熊社労士:
そうですね、この時期はどうしても忙しくなりますね。まぁ、頑張りましょう!
宮田部長:
そうだ、大熊先生だって忙しいってことですよね。私も頑張らなくっちゃいけませんね。それで大熊先生、この算定基礎と取り掛かっている年度更新のどちらから先に処理すべきでしょうか?申告書と届出書が一度に届くから、もう訳が分からなくなりますよ。おまけに算定基礎の封筒開けたら提出期間が7月2日(月)から7月10日(火)と、年度更新の締切と同じではないですか!
大熊社労士:
確かに仰るとおり混乱するような日程ですよね。せっかく年度更新に取り掛かっているので、まずはそちらを完了させましょう。特に算定基礎は6月の給与額が確定しないとできないものですし。
宮田部長:
そうか、確か4月から6月の給料の平均を出すとかいうものでしたよね。当社は15日締切の25日支払ですから、いずれにしても6月15日を過ぎないと計算できないということですな。ほ~、よかった。
大熊社労士:
そうですね。ちなみに社会保険の算定基礎では給与の支払日がポイントになります。例えば、末日締切の翌月15日支払というような会社では、3月31日締切、4月15日支払の給与を4月分と呼びますよ。
宮田部長:
なるほどそうなのですね。
大熊社労士:
それでは今日は算定基礎に関してまずはやらなくてはならないことの全体像を説明していきましょう。まずは算定基礎届と共に届いたこちらの「算定基礎届の記載例」を開いてくださいね。
「算定基礎届の記載例」はこちらでダウンロードできます
http://blog.livedoor.jp/leafletbank/archives/51203037.html
宮田部長:
あぁ、これ、うちの会社のも社員の名前が一人ひとり書いてありましたよ。ちらっと見ましたけど、これに支払われた4月から6月の給与額を書いていくんですよね。
大熊社労士:
はい、仰るとおりです。きちんと予習されていますね(笑)。見ていただくと、様式の中に太字で被保険者整理番号、氏名、生年月日、種別、そして従前の標準報酬月額が記載されていますね。
宮田部長:
ん、この備考欄に「平成23年9月11」と記載されているのは何ですか?
大熊社労士:
するどいですね。これは従前の標準報酬月額がいつ、どのような理由で決定されたかということです。一番下の「年金大介」の欄を見ると、「平成24年3月01」と書いてありますよね。3月に入社した人なので、資格取得の際に決定した標準報酬月額が記載されていることになります。
宮田部長:
なるほど。これ、よく見たら標準報酬月額まで記載されているので、結構センシティブな情報の宝庫じゃないですか!机のところに出しておいていましたけど、ちょっと保管場所を考えないといけないな。
大熊社労士:
そうですね。さて、実際の書き方を確認していきましょう。4月から6月の給与を記入するということですが、まずは「支払基礎日数」を書く必要があります。記載例でみると、左下に説明が載っている[ク]の欄です。
宮田部長:
なるほど、ここか。すでに4月と印字されていますね。支払基礎日数という表現からして、ここは出勤日数を書けばいいのかな?
大熊社労士:
そこは月給者とそれ以外の支払方法の方と記載する内容が異なります。今回は月給者の説明で進めましょう。月給者についてはそこは暦の日数を書くことになりますよ。
宮田部長:
暦…、4月だから30日ですね!
大熊社労士:
期待通りのお答えをありがとうございます(笑)。残念ながら、そこは31日になります。その欄の支払基礎日数とは、報酬の支払対象となった期間の暦日数を書くことになっていますよ。御社の4月25日支払の給与は、3月16日から4月15日の31日間になるということです。
宮田部長:
なるほど!では、5月が30日、6月が31日になるということですね。ふむふむ。
大熊社労士:
はい、その通りです。そして、その横の[サ]欄には、各月に支払った総支給額を記載してくださいね。ただし、この給与額である報酬には日本年金機構のこのページにある、(1)被保険者が自己の労働の対償として受けるものであること、(2)事業所から経常的かつ実質的に受けるもので、被保険者の通常の生計にあてられるもの、の意味合いを持つものとなります。また、食事を現物として支給しているような場合には、記載例の「厚年涼子」欄にあるよう総支給額
の横の欄に記載することになっていますよ。
宮田部長:
なるほど。当社では特に報酬にあたらないものを賃金台帳には載せていないし、現物もないからなぁ、そのまま書けばよさそうだな。
大熊社労士:
そうですか、そうなるとあまり難しくないといってもよさそうですね。ちなみに実は先ほどの食事のように現物で支給されているものの価額がこちらのリーフレット「平成24年4月1日から厚生労働大臣が定める現物給与の価格が改定されます」にあるように平成24年4月1日に改正されました。
リーフレット「平成24年4月1日から厚生労働大臣が定める現物給与の価格が改定されます」はこちらでダウンロードできます
http://blog.livedoor.jp/leafletbank/archives/51174486.html
宮田部長:
へぇ、社会保険ってなんだか改正が多いように感じますねぇ。やっぱり福島さんはすごかったんだなぁ。
大熊社労士:
確かにそうですね。さて、続きをお話していきましょうか。これで総支給額と現物給与の価額(ある場合のみ)が記載できました。その合計をその横の欄に記入し、更には3ヶ月の合計を[シ]欄に記載することになります。
宮田部長:
えっと、「健保一郎」欄で見てみると、なるほど電卓で計算しましたが、確かに合計になっていますね。ん、その下の[セ]欄は3ヶ月の平均が書いてあるのですね。
大熊社労士:
はい、その通りですよ。筋がいいですね(笑)。そして、その平均によって、9月からの標準報酬月額が決定されるというわけです。これらの作業を原則として7月1日現在の被保険者全員分行うことになりますから、頑張ってやらないとならないわけですよ。
宮田部長:
うわ~、こりゃ大変な作業ですねぇ。年度更新もあるし、算定基礎もあるし、7月10日までにできるのかなぁ…、心配です。
大熊社労士:
あはは、脅かしてしまいましたね。おそらく御社が使っている給与計算ソフトには算定基礎届を作成する機能が搭載されていますので、そちらから印刷すれば1名ずつ記載する必要はないと思います。ただ、そのようなソフトを利用する際には、どうしても例外や間違いに気づきにくいという弊害が起きますので、きちんと把握しておきましょうね。
宮田部長:
では給与計算ソフトの機能を確認してみますね。
大熊社労士:
そうですね。そして、今回1点だけ、追加で説明しておいていいですか。記載例の左下[ク]の説明欄を再度見てください。「月給者で欠勤日数分だけ給与が差し引かれる場合は、就業規則等により定められた日数から欠勤日数を控除したに日数を記入してください」とありますよね。もし、月給者で欠勤控除をしているような方がいたら、この取り扱いをしなければなりません。
宮田部長:
ん?大熊先生、全然わかりませんよ~(涙)。
大熊社労士:
あはは、すみません。たとえば4月16日から3月15日の間に3日欠勤した人がいる場合には給与はどのようになりますか?
宮田部長:
う~ん、この場合には3日分を控除することになっていたなぁ。う~ん、細かいことはこの賃金規程に載っていたけど…、う~ん、あ、これこれ。基本給や各種手当を20日で割って、欠勤日数を乗じた分を控除するという方法で計算しています。
大熊社労士:
そうそう、まさにそれを聞きたかったのですよ。そのようなケースがある場合には、支払基礎日数を17日(20日-3日)と書いてくださいね。
宮田部長:
ほほう、そういうことですな。こりゃ、もしかしたら給与計算ソフトでできない部分かもしれないな、ちゃんと見なくちゃいかんな。
大熊社労士:
そうですね、よろしくお願いしますね。さて、今日はここくらいにしておきましょうか。次回は、パートさん等の取扱いについてお話する予定です。年度更新は早めに終えていてくださいね(笑)。
宮田部長:
はい…、頑張ります!
>>>to be continued
[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
こんにちは、大熊です。今週からは社会保険の算定基礎届の解説を行います。この算定基礎届にはいくつか提出しなければならないものがあります。その一つに算定基礎総括表があります。事業所1つにつき1枚、算定基礎届の表紙のような形式になるのですが、こちらのように記載例が掲載されています。届出人数や報酬の範囲を記載するものですので、自社の状況を記載することとなります。さらには、総括表附表(雇用に関する調査票)も併せて提出が求められますので、こちらも自社の状況をきちんと把握して記載しましょう。
関連blog記事
2012年6月11日「支払対象期間の途中で資格取得した場合の社会保険算定基礎取り扱い」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51935263.html
2012年6月6日「日本年金機構 早くも社会保険算定基礎届の情報ページを公開」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51934468.html
2012年2月13日「平成24年4月1日から厚生労働大臣が定める現物給与の価格が改定されます。」
http://blog.livedoor.jp/leafletbank/archives/51174486.html
(宮武貴美)
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