改正労働契約法が成立したと聞きました

 服部印刷に向かう大熊の手元には前回予告した改正労働契約法の資料がある。確か服部印刷でも数名のパートさんを雇っていたなと思いながら、部長の宮田のもとに向かった。


宮田部長:
 大熊先生、こんにちは。今日は労働契約法のお話でしたよね~。ちょっと予習しようと思って厚生労働省のホームページを調べてみたら、専用のページまで用意されているのですね。「順次掲載していきます」なんて書いてあるから、これからリーフレットとかも出てくるんでしょうね。
参考リンク:厚生労働省:改正労働契約法について
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/keiyaku/kaisei/index.html
大熊社労士大熊社労士:
 おっ、勉強熱心ですね(笑)。2週間ほど前に公布されたばかりですから、これから厚生労働省のホームページや官公署で配布されるリーフレットが整備されてくると思いますよ。さて、それではまず改正労働契約法に関する基本的な内容を押さえておくことにしましょうね。
服部社長:
 そうそう、大熊さん、同業者仲間で話をしたら、パートさんが雇いにくくなるとか耳にしました。これは影響が大きいな、なんて感じていたんですよね。
大熊社労士:
 そうですね。今回の労働契約法の改正は大きく分けると以下の3点になります。
有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換
有期労働契約の更新等(「雇止め法理」の制定法化)
期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止

宮田部長:
 む、…難しい…。
大熊社労士:
 あはは、確かにそうですね。先ほど服部社長がおっしゃったパートさんのことはにかかる部分だと想像します。今回の改正では、このの影響が大きいとも言われていますので、本来はその点からお話すべきなのかもしれませんが、今日は②についてお話をしたいと思います。
宮田部長:
 え~、影響が大きいなら、早めに聞きたいじゃないですか~。からというのは何か理由があるのですか?
大熊社労士:
 はい、については既に施行されているからです。の施行日は、今後決まることになっているので確定はしていません。遅くとも来年の4月までには施行されることになろうかとは思いますが。
宮田部長:
 おっと、ということははすぐに対応しなければならないのですね。そりゃまずい、から行きましょう!
大熊社労士:
 あはは。そうですね。御社のパートさんは、1年契約の人がほとんどでしたよね?そして、特にその人に問題がなく、業務も継続してあれば、契約を更新していますよね。
服部社長服部社長:
 そうですね。時折、本当に臨時的にアルバイトで来てもらう学生もいますが、もうかなり長く…、先代の社長の時分から勤めてもらっているパートさんもいますよ。
大熊社労士:
 今回の改正では、そのように長く勤めてもらっているパートさんを「今回限りの契約でおしまいです」というのはそう簡単にできませんよ、ということを法律にしたというものです。
宮田部長:
 うちは雇用契約書もちゃんと結んでいますよ。その期間が来れば契約はおしまいって、普通のことなんじゃないですか。
大熊社労士:
 おっしゃることはもっともなのですが、なかなかそう簡単にはいかないのです。先ほどは長く勤めてもらっているという表現をしましたが、少し難しい言い方をすると、以下のような場合には、期間満了として雇止めすることが客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないとされ、有期労働契約が更新され、契約が締結されたものとみなされてしまうのです。
(1)有期労働契約を反復更新することで、無期労働契約と実質的に異ならな状況になっている場合
(2)有期労働契約の期間が満了した後であっても、契約が更新されることに合理的期待が認められる場合

服部社長:
 そういえば、以前、この話を聞いたことがありましたね…。大熊さんにでしたっけ?
大熊社労士:
 そうですね。以前もお話をしたことがあったと思います。この内容や判断の仕方は今回新しく出てきたものではなく、以前から裁判で確立されていた内容を整理し、改正で労働契約法に入れられたものなのです。
服部社長:
 確か、パートさんに「ずっとここで働いていてね」という言葉掛けを私がしたりすることには注意が必要だというやつですよね。
大熊社労士:
 おっしゃる通りです。そのような発言は、継続雇用の期待を抱かせることになりますからね。
宮田部長宮田部長:
 そうかぁ。まぁ、いまのパートさんは真面目な方が多いし、特に問題ないとは思うけど、今後雇う人にはきちんとしなくちゃな。ところで、そのような発言以外に注意することはありますか?
大熊社労士:
 そうですねぇ。残念ながら、雇止めする際にどのようなケースであれば絶対に大丈夫ということは言えません。その雇用の臨時性・常用性、更新の回数、雇用の通算期間、契約期間管理の状況、雇用継続の期待を持たせる使用者の言動の有無などを総合考慮されることになっています。しかも個々の事案ごとに…。
服部社長:
 まぁ、現場が勝手に、気軽にいろいろなことを言うのは禁止して、総務でもしっかりと人員の必要性の調査、契約後の期間管理をしていくことが必要なんでしょうね。もしかすると、人員確保の仕方、働かせ方でも考えるところがあるかもしれんなぁ。
大熊社労士:
 そうですね。それは次回お話する部分にもかかるところですので、また、今後議論できればと思っています。今回説明した②については、実務上、何か劇的に変更になったわけではないのですが、法律の条文になったことはインパクトが強いですし、有期労働契約が締結または更新されたものとみなされることは大きいですね。
服部社長:
 そうですね。また、次回、よろしくお願いします。


>>>to be continued


[大熊社労士のワンポイントアドバイス]

大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。改正労働契約法は、今年の8月10日に公布され、今回のの内容は同日施行となりました。これは有期労働契約の雇止めトラブルが非常に多く問題になっているからです。考え方が大きく変わったわけではありませんが、今後、より一層、有期契約労働者の管理が重要になってきますので、実務上の対応をしっかりとやっていきましょう。


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有期労働契約法制をはじめとした労働関係法改正の現状と今後
講師:岩出誠弁護士
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[日時および会場]
(1)東京会場
平成24年8月31日(金)午後1時30分~午後4時30分
 総評会館 大会議室(御茶ノ水)
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[詳細およびお申込み]
 本セミナーの詳細およびお申し込みは以下よりお願いします。なお、LCG会員のみなさんは専用ホームページ「MyKomon」よりお申し込みをお願いします。
http://www.lcgjapan.com/sr/seminar/1209sr3rd.html


関連blog記事
2012年8月27日「[改正労契法(2)]有期労働契約の無期転換ルールにおける5年の考え方」
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2012年8月16日「改正労働契約法に関する通達が発出されました」
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2012年8月10日「改正労働契約法が公布 改正労働者派遣法は10月1日施行で決定」
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2011年9月19日「期間契約従業員の雇止めでも事前の30日前の予告が必要なのですか?」
https://roumu.com/archives/65513715.html

参考リンク
厚生労働省「労働契約法が改正されました~有期労働契約の新しいルールができました~」
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002hc65.html
厚生労働省「改正労働契約法について」
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/keiyaku/kaisei/index.html

(宮武貴美)

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