傷病手当金はどのような場合に、どれくらいの期間支給されるのですか?
宮田部長:
大熊先生、こんにちは。先日は福島さんの相談に乗っていただきありがとうございました。
大熊社労士:
いえいえ、いろいろ不安なこともありますよね。私も久々に福島さんにお会いでき、お話ができてとても嬉しく思いました。
宮田部長:
そこで…いまさら恥ずかしいのですが、傷病手当金のことについて教えてもらえませんか?いやね、業務上外の私傷病が原因となって仕事ができないときに支給されるものだってことは知っているんですけど、細かな点が、その…分からないんですよ。1年半とか、あるじゃないですか…。
大熊社労士:
なるほど、概要は理解されているようですので、細かい部分の説明をした方がよさそうですね。了解しました。
宮田部長:
助かります!福島さんに「傷病手当金を請求しよう!」と言ったのはいいのですが、実は細かな部分に不安があったので、どうしようかとヒヤヒヤしていました。
大熊社労士:
あはは。そういうときのためにも私がいるんですから、頼ってくださいよね。今日はちょうど、いい資料を持っています。この協会けんぽ長崎支部から出ている「健康保険の事務手続き」という小冊子(以下、「資料」という)の22ページを開いて一緒に学んでいきましょう。
★ここから先は印刷をして読み進めると理解が深まります★
http://www.kyoukaikenpo.or.jp/resources/content/57631/20120309-115919.pdf
さて、まずは基本となる「受給条件」。これは先ほどの話や前回の話も含め、3つを満たすことが必要です。(1)病気、ケガで療養中であること、(2)4日以上仕事を休んでいること、(3)給与の支給がないことです。
宮田部長:
(1)のところに「医師が労務不能と認めている」と書いてあるので、申請書に医師の証明欄があるのですね!申請書は実は少し見てみたんですよね。
大熊社労士:
それはすごいですね!そして、理解もあっていますよ。傷病手当金は自宅療養でも支給されるのですが、あくまでも医師の証明が必要になるのがポイントになります。そして通常、傷病手当金を請求する期間と、医師が労務不能であると証明する部分は同じ日数になります。また長期の治療となると、通常は給与締日に合わせて1ヶ月~2ヶ月で請求するケースが多いように感じますね。所得の補てんという意味合いから考えても、これくらいのスパンで請求した方が本人にとってもいいでしょうね。
宮田部長:
なるほど。福島さんは2ヶ月くらい休んだってことだったから、1回の請求でよさそうですね。
大熊社労士:
そうですね。そして、よく勘違いされるのが(2)の条件です。「初めの3日間は待期期間となり支給されません」と書いてありますよね。この3日間のカウント方法が難しいのです。まず連続している必要があります。例え医師が労務不能と証明している期間であっても、無理に出勤したりして、3日間の待期期間がないと支給されません。
宮田部長:
厳しいんですね。当社は原則土日が休みなので、金曜日から労務不能となると金曜日、月曜日、火曜日が待期期間で、水曜日からの支給になるんですね。
大熊社労士:
いえいえ、実はそうではないのです。こちらの図をご覧ください。待期期間には休日も含めてよいですし、年次有給休暇を取得した日も含めてよいとされています。
宮田部長:
え?年次有給休暇も含めてカウントしていいのですか?あれ?確か前回は所得の補てんだから支給されないとかおっしゃっていませんでしたか?
大熊社労士:
いいご質問ですね。確かに傷病手当金が支給される日については、(3)給与の支給がないこと、という要件がありますが、待期期間については(3)の条件は考える必要はありません。つまり、年次有給休暇でも問題ありません。
宮田部長:
なるほど、これはポイントになりそうですね。
大熊社労士:
さて、それでは次に進みましょうか。1つ飛びますが「受給期間」を先に確認しておきましょう。資料の22ページの一番下をご覧ください。これが宮田部長が最初に仰っていた1年半というものです。
宮田部長:
ふむふむ。
大熊社労士:
傷病手当金は、受給開始日から、最長1年6ヶ月間支給されます。ここで更に押さえておきたいポイントは2つあります。(1)1年6ヶ月間というのは暦の上で計算した期間であること、(2)同一の病気やケガ(関連するものを含む)は通算されることです。(1)については、よく「出勤
日である日に欠勤した場合に支給されるのですか?」という質問を受けるのですが、そうではなく、会社が休みの日についても支給されます。そして、暦日での支給で1年6ヶ月間が最長となります。資料の図もご覧くださいね。
宮田部長:
ん?あ!受給開始からなのですね。てっきり待期期間の初日からかと思いました。福島さんは最初、年次有給休暇を取得していたから、待期期間が終わっても傷病手当金は支給されませんよね。そうなると取得が終わってからカウントするわけですね。
大熊社労士:
はい、その通りです。(2)については、先ほど上げた図の一番下を見ると分かりやすいかもしれません。同一の病気やケガ(関連するものを含む)で再発した場合にも傷病手当金は支給されますが、あくまでも1年6ヶ月までですので、超える分については欠勤していても支給されません。
宮田部長:
なるほど。傷病手当金を受給する人にはきちんといつまでが支給対象かも伝えておく必要がありますね。
大熊社労士:
おっしゃる通りですね。さて、本当は傷病手当金の金額についてもお話しようと思っていましたが、話が長くなりますので、それは次回に回しましょう。
宮田部長:
はい、よろしくお願いします!
>>>to be continued
[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
こんにちは、大熊です。今日は傷病手当金の前半を説明しました。この他に任意継続被保険者となった場合の傷病手当金の支給について質問を受けることがあります。任意継続被保険者が私傷病で労務不能の状態になったとしても、傷病手当金は支給されないことになっています。一方で、資格喪失日の前日(退職日)までに引き続き1年以上の被保険者期間があり、かつ、3日間の待期期間を経て、現に傷病手当金を受けている、または受ける要件を満たしている人には、傷病手当金が支給されることになっています。これを資格喪失後の継続給付と読んでいます。私傷病を患い、退職せざるを得ないような場合には、対象者に説明をしておきましょう。
関連blog記事
2012年10月15日「協会けんぽから受けることのできる出産にかかる給付について教えてください」
https://roumu.com/archives/65581731.html
参考リンク
協会けんぽ長崎支部「健康保険の事務手続き」
http://www.kyoukaikenpo.or.jp/resources/content/57631/20120309-115919.pdf
協会けんぽ「傷病手当金」
http://www.kyoukaikenpo.or.jp/8,271,25.html
(宮武貴美)
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