育児休業中の社会保険料について確認させてください

 いつもどおり服部印刷に着き、車を降りると、宮田部長が大熊が到着するのを待ちわびた様子で迎え入れてくれた。


宮田部長:
 大熊先生、こんにちは。今日は社会保険料のことについて確認させてもらってもよいでしょうか?
大熊社労士:
 はい、どのようなことですか?
宮田部長宮田部長:
 以前、育児休業や産前産後休業の社会保険料の免除についてお聞きしたかと思うのですが、整理ができなくなってしまって…。
大熊社労士:
 なるほど。福島さんも育児休業に入っていますよね。それでは、まず対象となる社会保険料から確認しておきましょう。
宮田部長:
 え?社会保険料って全部が免除の対象ではないのですか?
大熊社労士:
 はい、健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料が対象になりますよ。
宮田部長:
 え!先月の福島さんのお給料、雇用保険料をゼロにし忘れたような気がします…。
大熊社労士:
 たぶん、大丈夫ですよ。雇用保険料はあくまでも支払われる賃金に対し、料率をかけますので、賃金がゼロの場合は雇用保険料もゼロになりますからね。
宮田部長:
 そうか~、安心しました。
大熊社労士:
 逆に言うと、賃金を支払った際には、雇用保険料を徴収する必要があります。例えば、育児休業中でも賞与の算定期間について勤務している人に対しては、その期間分の賞与を支給するケースがありますが、このような場合にはお休みをしていても雇用保険料を控除する必要があります。
宮田部長:
 なるほど~。
大熊社労士:
 さて、次に社会保険料が免除になる時期ですが、これについては育児・介護休業法による育児休業等の期間となっています。ポイントの一つ目は産前産後休業の期間は現在のところ含まれていないということです。
宮田部長:
 現在のところ?
大熊社労士:
 はい。この点は以前もお話ししましたが、法改正が決まっており、平成24年8月22日から2年を超えない範囲で今後施行日が決定されることになっています。具体的な日付はまだ決まっていないのですが、今後、免除になることは確実な状況です。
宮田部長:
 なるほど。
大熊社労士:
 ポイントの二つ目は最長、子が3歳に達するまで免除が受けられるということです。
宮田部長:
 あれ?育児休業は原則1歳までではありませんでしたか?
大熊社労士大熊社労士:
 おっしゃるとおりです。パパ・ママ育休プラスなど、一部例外がありますが、原則は子が1歳に達するまでですね。いま3歳と説明したのは、育児・介護休業法による育児休業に準じる休業等として、満3歳未満の子を養育するというのがあるからです。法律上の措置義務ではないのですけどね。
宮田部長:
 なるほど。会社で少し長い育児休業の措置を定めている場合には、3歳未満であれば、その期間も免除になるということですね。
大熊社労士:
 そうですね。ちなみに、先ほど雇用保険料のところで賞与の話をしましたが、この健康保険等について、雇用保険料より注意しなければならない点があります。
宮田部長:
 え~!おどさないでくださいよ。
大熊社労士:
 あはは。まずは社会保険料が免除される期間を確認しておくと、育児休業等開始月から終了予定日の翌日の月の前月(育児休業終了日が月の末日の場合は育児休業終了月)までとなります。確認しておきたいのは「月単位」ということです。
宮田部長:
 あ!わかった!日割計算はしないということですか!?
大熊社労士:
 宮田部長、そんな基本的なことを今更おっしゃるんですか…(苦笑)
宮田部長:
 違うのですか?何ですか?
大熊社労士:
 はい、月単位で考えますので、育児休業等開始月に賞与を支払った場合には、その賞与から社会保険料を控除する必要はないということになります。確か福島さんは2月10日から育児休業を取得していますので、2月に福島さんに対して賞与を支払ったとしても、免除の申し出をしていれば、その賞与から社会保険料を控除する必要はありません。
宮田部長:
 なるほど、そんな取扱いがあるのですね。難しいなぁ。
大熊社労士:
 確かにややこしいですよね。給与計算の際には十分に注意しましょうね。
宮田部長:
 ところで、この免除期間というのは、健康保険証を返す必要があるのですか?
大熊社労士:
 いえいえ、免除期間中も被保険者資格に変更はなく、健康保険証は従前どおり利用できますし、保険給付には育児休業等取得直前の標準報酬月額が用いられることになっていますよ。
宮田部長:
 なるほど、じゃ、安心ですね。
大熊社労士:
 そうですね。会社も社員も社会保険料を「徴収されること」が免除されると言ったほうがよいのかもしれませんね。

>>>to be continued

[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス
 こんにちは、大熊です。今日は社会保険料の免除について取り上げました。ちなみに、この社会保険料の免除の手続きですが、最初から子が3歳に達するまで育児休業を取得することになっていたとしても、育児・介護休業法が定める育児休業期間(子が1歳に達するまで)で1回、免除の申請を行い、その後、再度、育児・介護休業法が定める育児休業に準じる休業として子が3歳に達するまでの期間について申請することになります。長期間の育児休業を認めている場合には提出タイミングも十分に留意しましょう。


関連blog記事
2012年10月1日「産前産後休業中の社会保険料が免除になると聞きました」
https://roumu.com/archives/65579463.html

参考リンク
日本年金機構「育児休業保険料免除制度」
http://www.nenkin.go.jp/n/www/service/detail.jsp?id=2062

(宮武貴美)

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