新しい特別休暇制度の創設が求められているのですか?
今日も暑い日差しの中、服部印刷に向かった大熊は、あまりの暑さに車から降りたところでのけぞってしまった。
服部社長:
大熊さん、こんにちは。ニュースを見ていると、今年は熱中症がかなり多く発生しているようですね。当社でも対策を講じていますが、こうも多いと心配になりますよ。
大熊社労士:
そうですよね。集注しすぎて気づいたら、4時間も5時間も、食事はもちろん、水分を摂らず、トイレにもいかずに仕事をしていたという人もいるようですから、気を付けたいですよね。
宮田部長:
そんなことしたら、寿命が短くなっちゃいますよ~!
大熊社労士:
そうですね。口酸っぱく言ってもやってしまう人がいるので、1時間に1回チャイムでも鳴らすというのは、集中をよい意味でリセットするものになるのかもしれませんね。
服部社長:
さて、今日は私から質問があるのですが、よろしいですか?宮田部長から既に聞かれているかもしれませんが、小学校1年生のお子さんを持つ当社の男性従業員が、休暇の相談に来たのです。
大熊社労士:
そうですか。休暇の相談ですか。
宮田部長:
そうえいば、お話ししていませんでしたね。実は、彼の奥さんの体調が悪く、入院して手術をすることになったそうです。ちょうど子どもが夏休みでもあり、面倒を見る人がいなくて、困っているとのことで、奥さんの入院中、おそらく2週間程度、休暇が欲しいと申し出てきたんです。まぁ、年次有給休暇(以下、「年休」という)が残っているとのことだったので、それを取ればよいのではないかと話をしたのですが、彼がそれを拒みまして。
大熊社労士:
え?拒む…?
宮田部長:
はい。聞いたところ、「長期休暇をもらうのは、自分の家の問題であり、周りのメンバーにも大きな迷惑をかけることになる。それなのに年休を使って給料をもらうなんて、すごく心苦しい」と言っているんです。
服部社長:
その話を聞いて、私は少し感動してしまいました。それで、今回は周りのメンバーに宮田部長から説明をしてもらい、年休での取得ということで、対処をしてもらう予定なのですが、少し調べたら、最近「特に配慮を必要とする労働者に対する休暇」というものの推進が行われているという話を耳にしたので、それをお聞きしたいと思いまして。
大熊社労士:
謙虚な気持ちをお持ちの従業員さんですね。なるほど、了解しました。特に配慮を必要とする労働者に対する休暇・・・長いので「特配休暇」と呼びますが、これは、休暇の目的や取得形態を労使による話し合いにおいて任意で設定できる法定外休暇のことを指しています。お話しに出ていた年休とは別の位置づけ、どちらかというと、特別休暇に近いイメージです。代表的な休暇の名称としては、ボランティア休暇、リフレッシュ休暇等ですかね。
服部社長:
そういえば、東日本大震災後はボランティア休暇を創設するという同業者の社長もいましたね。
大熊社労士:
そうですね。そもそもは厚生労働省が平成22年12月に一部改正した「労働時間等見直しガイドライン(労働時間等設定改善指針)」というもので、「特に配慮を必要とする労働者について事業主が講ずべき措置」という項目を作り、配慮が必要な人に対する取扱いをまとめたのです。これが特配休暇の始まりです。その一つとして「地域活動等を行う労働者」というものもあり、東日本大震災ではボランティア志願者も増え、ボランティア休暇制度の導入も一部で進んだものと思われます。
宮田部長:
なるほど!それで、この配慮する人というのはどんな人ですか?私みたいに既に夏バテしている人も対象だったりします!?(笑)
大熊社労士:
はい、対象ですよ、と言いたいところですが、対象とするかは会社次第です(笑)。
服部社長:
却下!(笑)
大熊社労士:
さて、ガイドラインに挙げられているのは、以下の7つです。
1.特に健康の保持に努める必要があると認められる労働者
2.子の養育又は家族の介護を行う労働者
3.妊娠中及び出産後の女性労働者
4.単身赴任者
5.自発的な職業能力開発を図る労働者
6.地域活動等を行う労働者
7.その他特に配慮を必要とする労働者
服部社長:
なるほど、法律で休暇等の義務まではないけれども、一定の配慮ができるとよい人たちですね。今回の男性従業員の場合は、2.に当てはまってきそうな内容ですね。
大熊社労士:
そうですね。ちなみに、この特配休暇は服部社長がおっしゃったように、あくまでも法律を上回る休暇制度の導入ですので、無給でも構いませんし、日数の上限を作ってももちろん問題ありません。できるだけ、真に配慮が必要な人が、制度の中で大きな気兼ねをすることなく、取得できるようにしていきたいですね。
服部社長:
そうですね。ありがとうございました。
>>>to be continued
[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
こんにちは、大熊です。今回は特配休暇について取り上げました。長い職業人生の中で、一定期間、労働時間の設定を通常より短くせざるを得ない状況というのは、誰にでも起こり得るものです。すべてのものを対象にする必要はありませんが、労使双方で話し合い、必要と思われる休暇は、ルールの中でうまく活用できるようにしていきたいものですね。なお、制度を導入する場合には、就業規則の変更が必要になりますのでご注意ください。
参考リンク
厚生労働省「特別な休暇制度」
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/shigoto/kyuukaseido/index.html
(宮武貴美)
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