産前産後休暇に年次有給休暇を取得することは可能ですか?

 大熊が服部印刷に到着すると、後ろから女性に声をかけられた。


福島さん:
 大熊先生、こんにちは!
大熊社労士:
 あ、これはこれは福島さん!もう復帰されてのですか?
福島さん:
 いいえ、まだ育児休業中なのですが、今日は大熊先生がいらっしゃるとお聞きしてて、会社のお手伝いも兼ねて出社しました。
大熊社労士:
 そうでしたか。それはお疲れ様です。
福島照美福島さん:
 というのも1点、ママ友から産前産後休暇のことについて聞かれまして。自分の知識としても知っておきたくて、大熊先生が見える日を狙ってきました!あ、大熊先生にもお会いしたかったし。
大熊社労士:
 いいですよ・・・そんなに気を遣わなくても・・・。
宮田部長:
 大熊先生がスネている姿ってなんだか笑えますね。ははは。
福島さん:
 ごめんなさい!でも本当にお会いしたかったのですよ。それでお聞きしたいことというのは、産前産後休暇の期間中に年次有給休暇が取れるかどうかということなのです。
宮田部長:
 そりゃ、法律でお休みすることって決められているから、取れないのじゃないの?
福島さん:
 確かに私もそのように思ったのですけどね。でも、なんだか違う気もして。
大熊社労士:
 今回の件は、法律や通達にばっちり書いてあるものではありませんが、産前産後休暇と年次有給休暇の意義を考えることで答が出てきますね。まず、産前休暇ですが、これは労働基準法の第65条第1項に規定されている休暇で、出産予定の女性労働者が請求した場合には、出産(予定)日以前、6週間(多胎妊娠の場合は14週間)の休暇を与えなければならないというものですね。
宮田部長:
 そうそう、産前は6週間ですよね。
大熊社労士:
 これに対して産後休暇は同条第2項で規程されている休暇で、出産後8週間を経過しない女性労働者を労働させてはいけないというものでしたよね。
福島さん:
 ただし、出産後6週間を経過し、その人が働きたいと言い、医師が支障がないと認めた業務においては働くことは問題ないというものですよね。
大熊社労士大熊社労士:
 お二人とも完璧ですね!さて、いまの話の中で注意しておかなければならないのは、女性労働者が休むことが義務かどうかということです。つまり、産前休暇は本人が請求した場合に休ませるものであり、産後休暇(特に産後6週)は本人の請求に関わらず、必ず休ませる必要がある休暇です。
福島さん:
 そっか!働きたくても働くことができない日だから、産後は年次有給休暇が取れないと理解すべきなのですね!
大熊社労士:
 そうなんです!
宮田部長:
 え?え?え~!?
大熊社労士:
 産前休暇は、働きたいと言えば働いても問題ない。逆に産前休暇を請求しなければ、出勤しなければならない日です。つまり、通常の労働日と考えることができます。したがって、年次有給休暇の取得請求があれば、通常通り取得させる必要があります。一方で、産後休暇については、強制的に取得させる休暇で、そもそも労務提供の義務が免除されているのです。
宮田部長宮田部長:
 なるほど!そもそも働くことができない日に年次有給休暇を取ることはできないということですね。
大熊社労士:
 そうですね。最初からお休みとなっている日曜日に年次有給休暇を取らせてくださいということはできず、あくまでも労働日に取得することになりますからね。
福島さん:
 大熊先生、勉強になりました!
大熊社労士:
 これで少しは私の株も上がったかな?(笑)この内容については、最初にお話ししたように、法律に規定されていたり、通達が出ているわけではありませんが、近しい内容として、休職と年次有給休暇に関する通達が発出されています。
宮田部長:
 どのような内容ですか?
大熊社労士:
 はい、かいつまんでお話をすると、休職が発令されると労働義務がなくなるので、年次有給休暇を請求する余地がない、つまり年次有給休暇を請求する権利もないという内容です。
福島さん:
 今回と同様の考え方ですね!ありがとうございました。

>>>to be continued

[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス
 こんにちは、大熊です。産前産後休暇中は健康保険の出産手当金を請求するケースも多いかと思います。出産手当金が受給できる期間に年次有給休暇を取得していると、報酬の支払いがあると判断され、出産手当金が支給されなくなりますので、出産予定者が産前産後休暇中に年次有給休暇の取得をした場合には十分説明をするようにしましょう。

(宮武貴美)
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