育児短時間勤務中に取得した年次有給休暇は何時間分と計算すればよいですか?
これまでの暑さがかなり和らぎ、過ごしやすくなったなと思いながら、大熊は服部印刷の門をくぐった。
宮田部長:
大熊先生、おはようございます。すっかり秋の雰囲気になってきましたね。
大熊社労士:
そうですね。かなり過ごしやすくなりましたね。
宮田部長:
今日は、福島さんを真似して私もちょっと疑問に感じたことをお聞きしてもよろしいですか?
大熊社労士:
もちろん。どのようなことですか?
宮田部長:
福島さんの復帰のことを考えると、育児で短時間勤務になるのかなぁなんてぼーっと想像していたのですが、ふと、短時間勤務をしたときのお給料はどうなるんだろうと疑問に思ったのです。
大熊社労士:
なるほどなるほど。
宮田部長:
例えば育児短時間勤務として、1日8時間を6時間にすると決めると、毎日、原則は6時間で福島さんがいなくなってしまう。その早く帰る2時間分はお給料を払わないことにするので、お給料は4分の3にすることになりますよね。例えば、お給料が20万円だったら、短時間勤務している間は15万円。ここまではよいのですが、そこからが分からなくなってきたのです。
大熊社労士:
ん?ばっちりじゃないですか。
宮田部長:
いやいや、ややこしくなるのはここから・・・年次有給休暇を取ったときにどうなるのかと考え始めてしまったのです。もちろん、年次有給休暇を取った日はお休みになるので、お給料を払うことになりますよね。その日については、お給料は8時間分払うのか、6時間分払うのか・・・。福島さんとの契約は8時間なのだから、年次有給休暇を1日取った月は15万円に2時間分上乗せするのですかね?
大熊社労士:
なるほど、迷いやすい点ですね。これについては、直接的な特に指針や通達が出ているわけではありませんが、整理して考えると理解できると思いますよ。年次有給休暇というのは、働かなかったけれども、その日に対して、お給料を払いますよ、ということですよね。労働基準法第39条第7項では、「所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金」と書いてあるものです。
宮田部長:
あの、平均賃金や健康保険の日額だったかを使ってもいいよという3つの選択肢があるやつですね。
大熊社労士:
そうですそうです、詳しいですね(笑)。
宮田部長:
うちの場合は、月給者はお給料を控除しない、パートさんについてはその日の所定労働時間×時給分を別途払うようにしています。
大熊社労士:
そうですね。それで今回疑問に感じている育児短時間勤務ですが、これは法律上は、「所定労働時間の短縮措置」ですので、本来8時間である所定労働時間を、育児をしている一定期間、本人が希望することで例えば6時間に短くしようというものです。つまり、そもそもの所定労働時間が短くなっているんですよね。
宮田部長:
は・・・はい。
大熊社労士:
だから6時間分払うことで足りるのです。ちょっとややこしくなりましたかね。整理すると、育児短時間勤務は所定労働時間が6時間になる。その期間中に年次有給休暇を取った場合には、「所定労働時間」分の賃金を払うことになる。つまり短くなった6時間分を払えばよいということです。
宮田部長:
なるほど、「所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金」って先ほど大熊先生が強調されていたのはそういうわけですね。正社員だけどいまは6時間の所定労働時間で契約している人だよ、ってことですよね。
大熊社労士:
はい、その通りです。毎日残業を2時間している人が年次有給休暇を取ったとき、2時間分の残業手当はつけませんよね。これはあくまでも所定労働時間は残業を除いた部分だからですよね。これも同じ取扱いですよ。
宮田部長:
確かにそうですね。うん、すっきりしました。ありがとうございます!
大熊社労士:
それは良かったです。また何かありましたらお聞きくださいね。
>>>to be continued
[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
こんにちは、大熊です。今回の内容は実務上、よく質問されることです。短時間勤務を申請した労働者も含め、きちんと理解をしておきたい内容です。育児短時間勤務の申請が出た場合には、所定労働時間がどうなり、その時の賃金はどうするのか、短時間勤務取扱通知書で事前にしっかりと整理しておきましょう。
(宮武貴美)
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