育児短時間勤務中に解雇された場合の雇用保険失業手当の特例とは?

 復帰したばかりの福島さんに今日もあえるかな?と思いながら、服部印刷の駐車場で車を降りた大熊。予想通り、福島さんの顔が見え、応接の入り口に急ぎ足で向かった。


福島さん:
 大熊先生、今日は少し個人的なことなのですが、お聞きしたいことがあるのでお願いできますか?
大熊社労士:
 個人的なこと?
福島照美福島さん:
 はい、実はママ友で相談に乗ってほしいなんて言われてしまって・・・彼女が勤務している会社なのですが、彼女の勤務先である名古屋支店が会社都合で閉鎖になることが決定したそうです。東京本社への転勤も選択肢として用意されているようですが、彼女の子どももまだ1歳ちょっとで、ご主人の勤務先も当然愛知県内なので、転勤なんてできない、ということになっています。
宮田部長:
 そりゃ、たいへんだね。退職しかないのかな?
福島さん:
 はい、さすがに単身赴任とはいかないですよね。だから退職を選択することになるだろうということなのですが、雇用保険の失業手当のこととか、気にしているようなのです。私も実感しているのですが、小さい子供を抱えながらの転職活動というのは厳しいはずです。一方で、子供の教育とかを考えるとお金は必要になる一方だし・・・。だから、少しでも失業中の収入も確保していたいと思っているようです。
大熊社労士: そうですか。まぁ、退職はやむを得ない選択なのでしょうね。でも、雇用保険のことを気にされている?今お聞きした内容であれば、福島さんもご存知のとおり特定受給資格者になるかと思いますよ。
宮田部長:
 失業手当が、すぐにたくさんもらえる、ってやつですよね!
大熊社労士:
 そう、その通りです。宮田部長もマスターしていますね!
福島さん:
 はい、そうなのですが、一つ問題があって・・・。彼女、育児休業復帰後に、短時間勤務をしていたそうなのです。一所懸命働いてはいたのですが、どうしても子供が熱を出したりして、お迎えに行かなければならない日もあり、そういうときは早退になっていたそうです。で、このまま退職になると、短時間勤務と早退で失業手当の1日当たりの金額がすごく低くなってしまうのではないかと思っているらしいのです。
大熊社労士大熊社労士:
 なるほど。確かにその可能性はありますね。そもそも育児短時間勤務で賃金が低くなっていて、さらに、早退で減額。短時間勤務や早退の日でも雇用保険は1日でカウントしますので、確かに低くなるかもしれませんね。
福島さん:
 もちろん、自分(子供)の都合でやむを得ないとは思うのですが、何とかならないかしら?と話をしていて・・・。
大熊社労士:
 そうですか。今回の場合には、特例措置の対象になると思いますよ。
宮田部長宮田部長:
 特例措置?
大熊社労士:
 はい、実は、「勤務時間短縮措置等適用時の賃金日額算定の特例」というのがあります。まさに今回のように育児短時間勤務をしているときや、雇用保険の日額を算定する期間に育児短時間勤務があるようなときに適用されるものです。
福島さん:
 え!そういうものがあるのですか!その特例を適用すると、彼女の日額はどうなるのですか?
大熊社労士:
 はい、育児短時間勤務を開始したときの日額と退職時の日額を比較して、高い方の日額で失業手当が計算されることになります。恐らく、彼女は育児短時間勤務の前に育児休業を取っていると思いますので、結果的には育児休業前の日額で計算されることになるでしょうね。1点、注意点があるとすれば、倒産・解雇等の理由等で退職した場合に適用されるというところですね。
福島さん:
 そうですか!出産までバリバリ働いていたなんて言っていたので、彼女にとっては、それが適用するとかなり日額が高くなると思います!
宮田部長:
 福島さん、説明してあげるとかなりママ友としても鼻が高くなりそうだね。
福島さん:
 はい、ありがとうございます!私も宮田部長に協力いただいて今、短時間勤務をしています。気持ちはすごくよくわかるので、自分と重ねあわせてもうれしく感じます!
服部社長:
 おいおい、うちは倒産も、ましてや、福島さんを解雇したりもしないから、頑張って働いてくださいよ。
福島さん:
 あ、服部社長!ありがとうございます!
服部社長服部社長:
 立ち聞きしたようすまんね。大熊さん、これからもいろいろ教えてやってくださいね。
大熊社労士:
 はい、もちろんです!宮田部長、福島さんがんばりましょうね。
>>>to be continued

[大熊社労士のワンポイントアドバイス]

大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。今回のケースは実務ではあまり見かけないケースですが、今後、更に育児休業の取得・復帰、短時間勤務が増えることで、適用される場面が出てくるかもしれません。詳細な手続き事業所の管轄ハローワークにお尋ねください。なお、育児のみではなく、介護短時間等も適用になるため、該当者が発生しそうな場合には、必ず確認しておきましょう。


参考リンク
愛知労働局「雇用保険のしおり(平成25年10月)」
http://aichi-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/jirei_toukei/pamphlet_leaflet/roudouhokenkankei/koyohoken_siori.html
(宮武貴美)
http://blog.livedoor.jp/miyataketakami/

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