改正パート法(1)正社員と差別的取り扱いが禁止されるパートタイム労働者の拡大

 大熊が服部印刷を訪ねると、福島さんが出迎えてくれ、社長室に案内をしてくれた。社長室をノックし開けると服部社長と宮田部長が何やら話し込んでいた。


大熊社労士:
 こんにちは、大熊です。
服部社長服部社長:
 あ、大熊さん、ようこそお越しくださいました。打ち合わせをしていてこんな時間になっていることに気づきませんでしたよ。さぁ、どうぞどうぞ。
宮田部長:
 社長と賞与のことなどを話していたんですよ。おおよそ方向性は決まったんですけどね。
服部社長:
 そうそう、大熊さん、これまた小耳に挟んだ話なのですが、今後パートさんに適用する法律が変わるとか。どのような内容になるのですか?
大熊社労士:
 パートタイム労働法の改正ですね。まだあまり注目を浴びていないように思うのですが、さすがですね、服部社長。さて、この改正パートタイム労働法ですが、いくつかの改正点がありますが、まだ施行日が明確に決まっていないものがほとんどで、詳細がつめられていないものがほとんどという状況です。
服部社長:
 それであまり話題になっていないということですね。私自身「何かが変わるらしいよ」程度の話を聞いただけでしたので。
大熊社労士:
 そうですね。ですので、今日は概要のみをお話することにしておきましょう。
宮田部長:
 よし、しっかりお話を伺うぞ。
大熊社労士大熊社労士:
 そもそも法律を改正する目的としては、パートタイマ労働者の公正な待遇確保、納得した働きというところにあります。いまや全労働者の3分の1超が非正規雇用という現状ですから、これらの方の労働環境の改善というのは重大テーマなのですよね。
宮田部長:
 確かに当社でもパートさんにしっかり働いてもらっているもんな。
大熊社労士:
 そうですね。そこで、前回の改正で整理された「正社員と差別的取り扱いが禁止されるパートタイム労働者」の範囲が今回拡大されることになりました。
宮田部長:
 「正社員と差別的取り扱いが禁止されるパートタイム労働者」・・・ですか?
大熊社労士:
 はい。現状の法律では、職務の内容(業務の内容と責任の程度)、人材活用の仕組みや運用など(人事異動などの有無および範囲)、契約期間(無期労働契約締結・無期と同等)の3つすべてについて、パートタイム労働者といわゆる正社員とが同じであれば、賃金・教育訓練・福利厚生においてパートタイム労働者について差別的取り扱いをしてはならないとされています。
福島照美宮田部長:
 何か以前、大熊先生に「正社員とパートさんの違いはどこにありますか?」という質問をもらった気がするな。
大熊社労士:
 そうですね、そんな覚えもありますね。さて、改正法ではこの3つある要件のうち、が削除されました。つまり職務の内容、人材活用の仕組みや運用などが同じであれば、差別が禁止されることになります。
服部社長:
 継続雇用のリスクを恐れ、有期労働契約とすることは多いですし、労働契約法の無期転換などを考えると、最初から「有期労働契約」ということを明確にしつつ、正社員と同等の仕事をさせるということも実際にあるでしょうからね。
大熊社労士:
 そうですね。以前は非正規雇用を正規雇用へ移すという方向性だったように思いますが、最近はこれに加え、非正規雇用の労働条件の改善やキャリアアップという方向に国の方針が向かっているように感じます。
服部社長:
 確かに。そうなると我々も如何に納得を持ってみなさんに働いてもらえるかということを真剣に考えて処遇を検討していく時期なのでしょうね。
大熊社労士:
 そうですね。おっと、全体像を解説するはずがこんな時間になってしまいました。続きは次回にしましょう。

>>>to be continued

[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス
 こんにちは、大熊です。先月、パートタイム労働法が改正されました。改正の多くの施行期日について「公布の日(平成26年4月23日)から起算して1年を超えない範囲内で政令で定める日」となっています。


参考リンク
厚生労働省「パートタイム労働法の改正について」
http://www.mhlw.go.jp/topics/2007/06/tp0605-1o.html

(宮武貴美)
http://blog.livedoor.jp/miyataketakami/

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