2014年10月1日から拡充される雇用保険の教育訓練給付金(1)現行制度の取扱いと拡充される講座

 大熊は汗を拭きながら、服部印刷の門をくぐった。いつもどおり宮田部長と福島さんが待っていてくれた。


宮田部長:
 大熊先生、こんにちは。だんだん夏季休暇も近づいてきましたね。今年の夏は勉強するぞ!と思っています。
大熊社労士:
 そういえば、宮田部長、今年は社労士試験を受験されるのでしたよね?
宮田部長:
 はい、一応頑張ってはいるのですが、ほら、暑いでしょ。なかなか勉強が進まなくて・・・ちゃんと受験はするんですけど、どうもね・・・。
大熊社労士:
 暑いのは全国的なものですから、言い訳にしないで、最後の追い込みをしてくださいね。ちなみに今年度の受験申込者数は約57,000人だそうですよ。昨年度、合格率が5.4%と急落した反動なのか、過去10年間で最少人数となっていますのでチャンスかもしれませんよ!
宮田部長:
 そうなんですね!残り時間は少なくなってきましたが、その情報を糧に頑張ります!
大熊社労士:
 それで勉強しようかな、とおっしゃっていたのはどのようなことについてなのですか?
宮田部長宮田部長:
 一応、経営のことなど、経営に関する全般的な知識を身に付けたいなぁ、と漠然と考えていました。社労士試験の勉強をしていると、かなり細かな知識を身につける内容になっていますよね。それも重要だけれども、総務部長としてはもっと経営に関する知識を増やしていきたいと思えてきたのです。
福島さん:
 それで、私のほうから確か10月から教育訓練給付金の制度が変わるので、利用できるものがあるかも知れませんね、と提案したのです。
大熊社労士:
 なるほど。確かに今年の10月から教育訓練給付金が拡充になるので、利用できるようになるかも知れませんね。実はまだ対象となる具体的な講座は発表されていませんが、高度専門職業人を目的とした過程を備える専門職大学院も給付の対象となるので、宮田部長が目指されているような内容も含まれるかも知れません。
福島さん:
 そうなのですね!宮田部長、やる気が起きますね。
宮田部長:
 確かに勉強するにもお金がかかるので、その部分がネックになったりもするからなぁ。あ、そうそう、福島さんの話を聞いて、私だけではなく、従業員にも勉強の勧めをしたいと思っていたのです。大熊先生、いま分かる範囲でよいので、その教育訓練給付金について教えてもらえませんか?
大熊社労士:
 そうですね。それでは現在の教育訓練給付金の制度について復習しておきましょう。現在は、対象となる講座を受講し修了した際に、本人が支払った訓練経費の20%が支給されます。
福島さん:
 確か、10万円まででしたよね。
大熊社労士大熊社労士:
 そうですね。上限が10万円ですので、例えば100万円の受講料がかかったとしても支給されるのは10万円までです。そして、支給期間は最長1年間となっています。長期に亘って勉強することには向かないのかも知れませんね。
福島さん:
 確かに、社労士試験の勉強も対象でしたよね。ということは社労士資格は1年の勉強でパッと合格しちゃいましょう、ってことですかね(笑)。
宮田部長:
 もう!そうやってプレッシャーをかけるのだから。
大熊社労士:
 あはは。社労士試験は運にも左右されると言われていますから、最後まであきらめずに運を味方につけることにしましょう。さて、この教育訓練給付ですが、現行の制度は「一般教育訓練」として、そのままの給付内容のまま継続します。そして、拡充されることで「専門実践教育訓練」が新設されるようなイメージになります。
宮田部長:
 「専門実践教育訓練」?
大熊社労士:
 はい。専門的・実践的な教育訓練として厚生労働大臣か講座を指定することになっていて、資格試験の受験率、合格率、就職・在職率などの指定基準を満たしたものからなるようです。今回の拡充は、中長期的なキャリア形成を支援することが目的とされているので、キャリアに活かせるようなものが指定されるのでしょう。そのため、対象となる講座は大きく次の3分類に分かれることになります。
 業務独占資格・名称独占資格の取得を訓練目標とする養成施設の課程
 専門学校の職業実践専門課程
 専門職大学院
福島さん:
 先ほど、大熊先生がお話されたのは、ということですね。
大熊社労士:
 はい、そうです。訓練期間が2年または3年以内を予定されているものになります。そのため、支給額も上限額もかなり拡充されることになりますが、その点まで話すと長くなりますので、今日はこのくらいにしておきましょう。
福島照美福島さん:
 ありがとうございます。今日の
ポイントは、現在の制度は「一般教育訓練」として残るということですね。これはこれで使いやすいものだと思うので、しっかりと押さえておきます。
大熊社労士:
 そうですね。宮田部長もしっかり押さえておいてくださいね。
宮田部長:
 は・・・はい。なんだか社労士試験のことで頭がいっぱいになってドキドキしてきましたが、仕事と両立させて、よい結果発表を迎えられるように頑張ります。
大熊社労士:
 応援していますね!

>>>to be continued

[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス
 こんにちは、大熊です。今日は10月1日から改正される教育訓練給付金について説明しました。訓練期間について補足をしておきますと、①業務独占資格・名称独占資格の取得を訓練目標とする養成施設の課程は、1年以上3年以内(職業能力開発局長の定める1年未満の養成課程を含む。)、②専門学校の職業実践専門課程は2年となっています。期間も長くなったことで、より長期の取組みが必要な教育訓練にも使いやすくなることでしょう。


参考リンク
厚生労働省「教育訓練給付制度について」
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/shokugyounouryoku/career_formation/kyouiku/
ハローワークインターネットサービス「教育訓練給付制度(平成26年10月1日から教育訓練給付制度が拡充されます)」
https://www.hellowork.go.jp/insurance/insurance_education.html
社会保険労務士試験
http://www.sharosi-siken.or.jp/

(宮武貴美)
http://blog.livedoor.jp/miyataketakami/

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