最低賃金の決定方法と平成26年10月から発効予定の最低賃金

 厚生労働省のホームページで全国の最低賃金が答申されたと見た大熊は、今日も服部印刷に向かった。


福島照美福島さん:
 大熊先生、こんにちは。今日はちょうど質問したいことがあったんです。先日、新聞に最低賃金のことが載っていましたよね。愛知県は800円になると書いてありました。
大熊社労士:
 そうなんです、今日はそのお話しをしようと思って来ました。おっしゃる通り、愛知県は2014年10月1日から20円引き上げられ、最低賃金が800円になる予定です。
福島さん:
 「予定」ということはまだ決まっていないんですか?
大熊社労士:
 ええ、現状は全都道府県の答申が出揃ったところであり、正式に決定したわけではありません。最終的には官報に公示されて効力が発生することになります。ちなみに効力が発生する「発効日」は、各都道府県により異なっていますよ。
宮田部長宮田部長:
 そうなんですね!私も新聞を見て決定したと思っていましたし、すべての都道府県が10月1日から変更されると思っていました。でも大熊先生、そもそも最低賃金ってどのように決まるのですか?労働局が勝手に決めるとか・・・?
最低賃金大熊社労士:
 いえいえ、実はかなりの手順があります。まず、毎年、厚生労働省の中央最低賃金審議会で金額改定のための引上げ額の目安が提示されます。その目安の前提には、賃金の実態調査結果などの各種統計資料も参考にして作られるのですよ。
宮田部長:
 へぇ、「うちの都道府県はこんな感じで」って決まるわけじゃないんですね。
大熊社労士:
 はい、まずは中央で決定し、その後、地方最低賃金審議会で、その目安を参考にした上で審議が行われます。具体的には、一方的に決定するのではなく、労働者側と使用者側、両方の意見などを聴いたりすることになります。
宮田部長:
 じゃぁ、20円も上がるということは労働者側の意見が通ったってことになりますか?
大熊社労士:
 いえいえ、そもそも最低賃金は、以下の3つの要素を考慮して決定・改定されることになっています。
 労働者の生計費
 労働者の賃金
 通常の事業の賃金支払能力
 むやみに引上げをしても、企業経営が成り立たないのでは意味がないですからね。もちろん、労働者の意見も影響の一つですけど、そればかりじゃないですよ。
宮田部長:
 なるほど。そうでしたか。
服部社長服部社長:
 そういえば、大熊さん。少し前にお聞きしたときには、愛知は19円の引き上げと言われていたような覚えがありますけど・・・
大熊社労士:
 そうなんです。今年は中央で示された目安が19円だったのですが、愛知県はそれ以上の20円の引き上げとなりました。通常は中央最低賃金新議会の目安額が最低賃金とはなることが多いのですが、愛知は景気がよいと判断されたのかも知れません。ただ、800円となることで、業務改善助成金という時間給800円未満の労働者がいる場合で、もっとも低い時間給労働者の賃金を40円引き上げた場合に、事業主に支給される助成金が2014年9月30日までで終了します。友人のブログでも取り上げていましたね。
服部社長:
 なるほど、そんな点にも影響が出たりするのですね。ちなみに、今回の引上げで生活保護との逆転現象がなくなったとか。
大熊社労士大熊社労士:
 はい、今まで北海道、宮城、東京、兵庫、広島の5つで最新データに基づいた生活保護と最低賃金の逆転現象がありましたが、これがすべて解消されることになりました。最低賃金における一つの問題点がクリアされた感じがありますね。
服部社長:
 確かにそうですね。来年はどうなるか、また、注目することになりますね。これで引上額が小幅になるとよいのですけどね。
宮田部長:
 確かにそうですね。うちの従業員もきちんと確認しておこう。よろしくね、福島さん。
福島さん:
 はい、了解しました。正式発表される前ですが、確認しておきます。大熊先生、正式決定したらまた教えてくださいね。
大熊社労士:
 はい、了解しました。そういえば、宮田部長。社労士試験の方はいかがでしたか?
宮田部長:
 (ドキッ)

>>>to be continued

[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス
 こんにちは、大熊です。地域別最低賃金については、以上のような段階を経て決定されます。もう少し詳しい流れを見ると、会話途中にある図表のような流れになっています。最低賃金の発効日は都道府県によって異なってきますので、金額と発効日を確認し、給与計算の際にきちんと修正しましょう。


関連blog記事
2014年7月31「平成26年度地域別最低賃金額改定の目安は全国加重平均16円」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/52044307.html
2014年8月29日「最賃引き上げにより愛知県の業務改善助成金の申請は9月30日まで!」
http://blog.livedoor.jp/nagoyaroumu/archives/40554172.html

参考リンク
厚生労働省「平成26年度地域別最低賃金額改定の目安について」
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000052740.html

(岡田陽子)

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