来月は労働基準監督署の過重労働調査が重点的に行われます

 来月(2014年11月)、「過重労働解消キャンペーン」が実施されることになった。服部印刷はさほど心配がないだろうと思いながらも、大熊はチラシを持って宮田部長のもとに向かった。


過重労働キャンペーン大熊社労士:
 こんにちは。今日はこのようなチラシを持ってきました。
宮田部長:
 過重労働解消キャンペーンですか?
大熊社労士:
 はい。厚生労働省は、2014年11月の1ヶ月間、このようなキャンペーンを実施することを発表しました。
福島さん:
 11月…。確か以前は労働時間に関するキャンペーンをしていませんでしたか?
大熊社労士:
 よく覚えていらっしゃいますね、さすが福島さん!以前は「労働時間適正化キャンペーン」として、36協定の遵守や残業・休日出勤の削減を目指すよう取組みを行ってきたのですが、今年はそれがリニューアルされています。
宮田部長:
 キャンペーンの名前をこのように変更するということは、やっぱり過重労働の問題が大きくなっており、国としても危機意識を高めようとしているということですよね。
大熊社労士:
 それもあるでしょうね。また、今年6月に「過労死等防止対策推進法」が成立したことも影響しています。この法律で、毎年11月が「過労死等防止啓発月間」と定められたのです。この法律では、キャンペーンについて「国民の間に広く過労死等を防止することの重要性について自覚を促し、これに対する関心と理解を深めるため」のものとしています。ですので、宮田部長のおっしゃるとおり、危機意識を高めるというのはあっていますね。
宮田部長:
 えへへ。
福島照美福島さん:
 それでこのキャンペーンで、私たちが何かすることはあるのですか?あ、もちろん、この機会に従業員の残業時間を見直そうとか、そういうことはやらなければならないと思うのですが。
大熊社労士:
 そうですね。その他にも、従業員のみなさんの意識も高めて欲しいと私自身は思っています。残業の削減には、会社から労働時間を減らすように言うだけでなく、個人が意識を持って取り組むことが重要だと思いますので。
宮田部長:
 確かに最近、私もそれを感じるところです。総務から残業を減らせということを強く言うと、逆に減らせないという不満に繋がったり、残業の虚偽申告を助長しかねないと考えています。
大熊社労士:
 確かにそうですね。それとこのキャンペーンで大きいこととしては、労働基準監督署の重点監督が実施されるということです。監督の対象とする事業場等としては、以下の2つが挙げられています。
労働基準監督署及びハローワークに寄せられた相談等を端緒に、離職率が極端に高いなど若者の「使い捨て」が疑われる企業等を把握し、重点監督を実施。
長時間にわたる過重な労働による過労死等に係る労災請求が行われた事業場等
宮田部長:
 この2つだと当社は該当しなさそうですが、一応、準備はしておいた方が良いですよね。
大熊社労士大熊社労士:
 そうですね。先ほど挙げた2つには該当しないかとは思いますが、重点的に確認される事項を見ておきましょう。それは以下の4つとされています。
時間外・休日労働が36協定の範囲内であるかについての確認
賃金不払残業がないかについての確認
不適切な労働時間管理については、労働時間を適正に把握するよう指導
長時間労働者については、医師による面接指導等、健康確保措置が確実に講じられるよう指導
 そして、については、法違反があるならば是正指導が行われることになっています。
宮田部長:
 当たり前ですが、本当に労働時間・過重労働に対しての調査がしっかりと行われるのですね。
大熊社労士:
 はい、そうですね。そして、調査の中で重大・悪質な違反が確認された場合については、送検や公表も行われることになっています。
宮田部長:
 ひぇ、怖いですね。送検や公表なんて、それこそブラック企業って言われてしまいますね。
大熊社労士:
 あ、それから、チラシにもありますが、2014年11月1日(土)に「過重労働解消相談ダイヤル」として、フリーダイヤルが設置されます。労働者から過重労働等に関する相談を受けるための相談窓口ですね。相談については、都道府県労働局の担当官が、指導・助言を行うことになっています。
宮田部長宮田部長:
 なるほど、ここに労働者から相談が入った場合には、労働基準監督署の調査が入るかも知れないということですね。
大熊社労士:
 そうですね、可能性としてはあるかも知れません。いずれにしても、従業員のみなさんの意識を高める場としても活用していきましょう。
宮田部長:
 そうですね、了解しました。それから・・・またの機会でよいので、労働基準監督署の調査というものがどのようなものか、教えてください。
大熊社労士:
 了解しました。それは追々話すことにしましょう。

>>>to be continued

[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス
 こんにちは、大熊です。過重労働解消相談ダイヤル」は11月1日(土)のみの設置のようですが、今年9月からは、平日夜間・土日に誰でも労働条件に関して無料で相談ができる「労働条件相談ほっとライン」が設置されています。厚生労働省でも電話等の比較的相談しやすい手段で、直接労働者からの相談を受け付けることで、労働に関する課題を解決する方法をとっていることがよくわかります。


関連blog記事
2014年10月8日「11月は過重労働に関する労基署の調査が増加予定 その重点ポイントはこれ!」
http://blog.livedoor.jp/otsuakinori/archives/40614382.html
2014年9月1日「ブラック企業対策の一環として本日開設された厚労省の「労働条件相談ほっとライン」」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/52047071.html

参考リンク
厚生労働省「「過重労働解消キャンペーン」を11月に実施します」
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000060042.html
厚生労働省「過労死等防止対策推進法が制定されました」
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000053525.html

(宮武貴美)
http://blog.livedoor.jp/miyataketakami/

当社ホームページ「労務ドットコム」にもアクセスをお待ちしています。

facebook最新情報の速報は「労務ドットコムfacebookページ」にて提供しています。いますぐ「いいね!」」をクリック。
http://www.facebook.com/roumu