マイカー通勤者の通勤費非課税額が多くなったのですか?

 先週月曜日、大熊は服部印刷の福島さんに電話をして今月(10月24日支給)の給与計算が終わっているかを確認していた。いま、総務担当者の中で話題になっているマイカー通勤者の通勤手当非課税範囲の拡大について話す予定だったからである。


福島照美福島さん:
 大熊先生、いつもお世話になっております。どこかのブログで4月から?10月から?通勤手当の税金に関する部分が変更になったというのを読んだのですが、詳しく教えてもらえませんか?
宮田部長:
 え、なにそれ、なにそれ。また増税?困っちゃうなぁ。
大熊社労士:
 いえいえ、御社でもいらっしゃるかと思いますが、マイカー通勤をしている方の通勤手当の取扱いが若干変わるというお話ですよ。
宮田部長:
 で、どうなるのですか?
大熊社労士:
 まずは基本的な内容から確認しておきましょうか。通勤手当は一定の額まで所得税がかからない、つまり非課税となる金額が決まっています。
宮田部長:
 あー、あれですか、公共交通機関だと非課税になるとか言うやつ。
大熊社労士:
 そう、そのやつです。もう少し正確にお伝えすると、公共交通機関を利用している人に支給する通勤用定期乗車券は、1ヶ月あたりの合理的な運賃等の額の全額が非課税になります。ただし、条件があり、最高限度100,000円となっています。
福島さん:
 100,000円あれば、新幹線通勤とかしていない限り、通常の人は全額が非課税になりますね。
大熊社労士:
 そうですね。そして今回、変更となったものが、自動車や自転車で通勤している人の非課税の範囲です。これに関しては、通勤距離数によって細かく非課税となる範囲が定められています。
宮田部長:
 あ、確か新入社員に通勤経路を書いてもらうときに、通勤距離数も書いてもらっていたよね、福島さん。それがこの非課税の範囲に影響しているんだね。
福島さん:
 はい、そうです。総務でも念のために調べていますけどね。
大熊社労士:
 今回、その距離数に応じた非課税の範囲が変更になりました。変更点は大きく分けて2点あります。1点目が、非課税限度額の引上げという点です。具体的には以下のように引上げられました。
【課税されない金額(1ヶ月当たり)】
片道の通勤距離     課税されない金額
2km未満     全額課税→変更なし(全額課税)
2km以上10km未満 4,100円→4,200円
10km以上15km未満 6,500円→7,100円
15km以上25km未満 11,300円→12,900円
25km以上35km未満 16,100円→18,700円
35km以上45km未満 20,900円→24,400円
45km以上55km未満 24,500円→28,000円
55km以上     24,500円→31,600円(区分新設)
福島さん:
 距離数が多くなるにしたがって、非課税の範囲も大きくなっているのですね。
大熊社労士:
 はい、そのとおりです。そして、2点目。これは先ほど既に挙げたのですが、新たに「55km以上」という区分が創設されました。
宮田部長宮田部長:
 あ、本当だ!55km以上かぁ。確か当社にも結婚して引っ越した人が遠くからマイカー通勤をしていたなぁ。彼みたいな人には、大きなメリットだね。
福島さん:
 確かにそうですね。彼の場合、これまでと比較して、月々7,000円以上が非課税として認められるってことですもんね。
大熊社労士:
 そうなんですよ。2~10kmの方は月々100円ですから、大したことないように思いますが、通勤が遠くなればなるほどメリットを感じられますね。
福島さん:
 ところで、大熊先生。一番最初にお話をしましたが、これはいつから適用になるのですか?
大熊社労士:
 はい、2014年10月20日に適用になっています。
福島さん:
 え!もう適用されているのですか!?
大熊社労士:
 はい、そうなんです。実は、10月17日(金)に官報で発表になり、10月20日(月)以後に支給する通勤手当から変更することができるとなっていたのです。改正から施行までにあまりに時間がなく、私自身、驚きました。
福島さん:
 どうしよう・・・24日のお給料、改正前のもので計算しちゃいました・・・。
大熊社労士大熊社労士:
 もっと早く連絡すればよかったですね。実は、先週の月曜日、福島さんに「給与計算、数字確定していますか?」とお電話したじゃないですか。あれが、これに関係する質問だったのです。既に数字が確定されていたので、今回の説明は後回しにしたのです。
福島さん:
 え?
大熊社労士:
 実は、この改正ですが、10月20日施行には間違いないのですが、2014年4月1日に遡及して適用できるということになっているのです。

島さん:
 え?え?
大熊社労士:
 つまり、4月から改正後の非課税枠で計算してよいということになっているのです。ちなみに計算した上での調整は年末調整で行うことになっています。お電話したときに今月の給与計算が確定していたので、混乱させてはならないと思って説明は控えたのですけどね。
福島さん:
 あ、そういうことだったんですね。ほっとしました。
宮田部長:
 ん?ということは今年の年末調整は大変ってことですね。
大熊社労士:
 (にこりとして)はい!(笑)
宮田部長:
 えー、先生、変更は「若干」と言ったのにまったく「若干」じゃないですか~!
大熊社労士:
 これは失礼いたしました(笑)。いずれにしても対応が必要ですので、よろしくお願いします。次回は年末調整での調整について、その概要を説明することにしましょう。

>>>to be continued

[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス
 こんにちは、大熊です。今回の改正は事前の告知がなく、総務担当者にとってはとても大きな驚きになったようです。国税庁のホームページからは案内が発表になっていますので、こちらもご確認ください。
https://www.nta.go.jp/gensen/tsukin/index.htm


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参考リンク
国税庁「通勤手当の非課税限度額の引上げについて」
https://www.nta.go.jp/gensen/tsukin/index.htm
国税庁「No.2585 マイカー・自転車通勤者の通勤手当」
https://www.nta.go.jp/taxanswer/gensen/2585.htm

(宮武貴美)
http://blog.livedoor.jp/miyataketakami/

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