介護休暇取得を申し出てきた従業員がいるのですが無給でよいのでしょうか?

 大熊が服部印刷に到着すると、頭を抱えている宮田部長の姿が目に飛び込んできた。


大熊社労士:
 こんにちは、宮田部長。ずいぶん難しい顔をされていますね。
宮田部長:
 あれ、もうこんな時間ですか、失礼いたしました。考えこんでいたら、大熊先生がお見えになる時間になってしまっていました。
大熊社労士:
 就業規則をご覧になっていたのですね。何を悩まれていたのですか?
宮田部長宮田部長:
 えぇ、今回、従業員が介護休暇を取りたいと申し出てきたのですが、そのときの給与の取扱いについて、どうすればよいのかなぁ、と。それで、特別休暇の条文を見ていたのですが、まず介護休暇という項目がないんです。更には、他の休暇についても確認したところ、給与をどのようにするかも不明確なところがあるようでして・・・。
大熊社労士:
 なるほど。それは頭を抱えてしまいますよね。まずは原則を押さえておくと、「休暇」については就業規則の「絶対的必要記載事項」ですので、必ず書いておかなければなりません。
宮田部長:
 はい、当社の就業規則にもきちんと条文がありました。
大熊社労士:
 そうですよね。その上で、介護休暇を考えると、介護休暇は育児・介護休業法で定められたものなので、育児・介護休業規程に書いてあるかも知れません。就業規則を拝見すると・・・あ、やはり育児・介護休業規程に書いてあると記載してありますね。
宮田部長:
 なるほど!えっと・・・こちらが、当社の育児・介護休業規程です。
大熊社労士:
 それでは確認してみましょう。「介護休暇を取得した日は、無給とする」と書いてありますね。ですので、無給の取扱いとなりますね。
宮田部長:
 あ、本当ですね・・・。申出のあった従業員は、まだ年休があったかと思いますので、そちらを優先しなくても良いかを確認しておくことにします。それにしても、大熊先生にお聞きするとこんなにスムースに解決できるのですね。
大熊社労士:
 まぁ、これが専門ですので・・・。えっと、あ、もう一つ確認しなければならないことがありましたよね。
宮田部長:
 あぁ、そうだった。実は、就業規則の「母性健康管理の措置」の部分なんですけど、「母子保健法に基づく保健指導又は健康診査を受けるために申出があったときは時間内通院を認める」というような文言があるのですが、時間内通院をした時間の給与について何も記載がないのです。
大熊社労士大熊社労士:
 なるほど。最近、よく耳にする話ですね。まず、母性健康管理については、法律で請求があった場合にはとらせる必要のある内容となっています。ですので、この規定自体は必ず必要な項目になります。ただし、その時間の給与については特に定めがありません。つまり、無給でもよいということになります。
宮田部長:
 そうなのですね。では、無給と決めてしまえばよいですね。
大熊社労士:
 そうですね。ただし、現状ははっきり記載されていないので、会社としては仮にいま請求されると「無給だから」と強く主張することはなかなか難しいですよね。だからこそ、無給とするのであれば、はっきり記載しておくことが求められます。逆に有給の場合には有給であることの明記が必要になりますね。
宮田部長:
 なるほど。確かにそうですね。他の休暇等についても同じ状況が発生していないかを確認しておくことにします。
大熊社労士:
 よろしくお願いします。
宮田部長:
 ところで、介護休暇はこちらの就業規則本則に書いていなくても問題ないのですか?
大熊社労士:
 はい、大丈夫です。育児・介護休業規程も含めて、全部で就業規則ですからね。ただ、どこに書いておくのが一番よいかは、考える必要がありますよね。休暇のことだから、本則の休日や休暇の記載がある部分にするか、介護に関することなので、育児・介護休業規程の介護の記載ばある部分にするか、正解はないのかも知れません。
宮田部長:
 確かにどちらも捨てがたいですね。
大熊社労士:
 ただ、どちらに記載するにしても、もしくは両方に記載するにしても、取扱いが同じになるように、整合性が取れているようにすることがポイントとなります。特に、今回の介護休暇を有給にするというような場合には、一方は無給から有給に修正し、もう一方は無給のままになっている、なんてことが発生しやすいので。
宮田部長:
 ありがとうございます!修正する際には、慎重に検討しますね。

>>>to be continued

[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス
 こんにちは、大熊です。今日は、休暇について取り上げました。休暇につい
ては、法律で必ず設けなければならない休暇と、会社が任意で決めることのできる休暇があります。両方について、有給/無給の違いをはっきりさせておくことが重要になります。

(宮武貴美)
http://blog.livedoor.jp/miyataketakami/

当社ホームページ「労務ドットコム」にもアクセスをお待ちしています。

facebook最新情報の速報は「労務ドットコムfacebookページ」にて提供しています。いますぐ「いいね!」」をクリック。
http://www.facebook.com/roumu