来年度の労働保険の料率はどうなりますか?

 大熊は先週決まった雇用保険料率のリーフレットを印刷し、服部印刷に向かった。玄関では福島さんが待っていた。


福島照美福島さん:
 大熊先生、こんにちは。早速ですが、確認してもよいですか?
大熊社労士:
 こんにちは、福島さん。どのようなことですか?
福島さん:
 はい、前回、健康保険料率と介護保険料率については、来年度の見通しについて教えていただきましたよね?その他の雇用保険料率や労災保険率については、どうなりそうですか?
宮田部長:
 そっか、それ、確認していなかったね。どうなるんですか、大熊先生。
雇用保険大熊社労士:
 まさに私が用意してきた資料にぴったりの質問、ありがとうございます!ちょうど先週、雇用保険料率が発表になり、リーフレットを持参したところでした。
http://blog.livedoor.jp/leafletbank/archives/51351841.html
福島さん:
 え!変更になるのですか?
大熊社労士:
 いえいえ、「平成27年度の雇用保険料率については平成26年度から変更がないですよ」というリーフレットです。私が社労士になったころには、「変更がない」というリーフットは発行されていなかったように記憶していますが、最近は厚生労働省も積極的にリーフレットを作成して、変更のないことも案内しているようです。
宮田部長宮田部長:
 確かにいろいろなリーフレットを見るようになりましたよね。あ、そういえば、大熊先生に雇用保険料率で聞こうと思っていたんだった。社労士の勉強をしているときに、労働保険の徴収法を見ていたら、料率がさっきのリーフレットと違ったんですよね。どうしてですか?
大熊社労士:
 あ、それは弾力条項を適用しているからですね。
宮田部長:
 弾力条項?
大熊社労士:
 はい。雇用保険料率は、法律(労働保険の保険料の徴収等に関する法律)で、定められているんですね。一般の事業で17.5/1,000・・・などと。ただ、雇用保険の財政状況によって、料率を変更するときに、毎回法律を変更しなくてはならないことになります。そのために、弾力条項を用いているんですよ。
宮田部長:
 はぁ。
大熊社労士大熊社労士:
 法律を変更する手続きはとても煩雑で手間であるため、厚生労働大臣が労働政策審議会の意見を聴いて、1年以内の期間を定めて、一定の範囲内で法律を変更することなく、料率を変更できるというものです。まぁ、早い話、厚生労働省の中でちゃんと手続きをとれば、一定の範囲内で料率を変更できるようにしましょう、ってことですね。これを一般的に弾力条項ということで呼んでいるのですね。
福島さん:
 料率を弾力的に変更していきましょうということですよね。
大熊社労士:
 おそらくそういうことでしょうね。で、平成27年度もこの弾力条項を適用し、下げられるいっぱいの13.5/1,000・・・などと下げているのです。速やかに変更ができるという点ではとても利点があります。
宮田部長:
 へー、そんなことができるんですね。
福島さん:
 宮田部長、弾力条項も社労士試験に出てくるのではないですか!?しっかり勉強してくださいよ。ところで、大熊先生、労災保険率はどうなりますか?
大熊社労士:
 あ、そうでしたね。労災保険率については、まだ正式決定をしていませんが、見通しが出ているので紹介しておきましょうね。
宮田部長:
 えー、労災保険率は上がるのですか~?
大熊社労士:
 えーっと、上がる業種と下がる業種がありますよ。平均であらわすと、0.1/1,000の引下げになる予定です。23業種を引下げ、8業種を引上げとなっています。全部で54業種あるので、23業種は変わらずというところですね。まだ、正式な決定ではないのですが、こちらの資料から確認することができます。ぜひ、御社の業種がどうなるかを確認しておいてくださいね。
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11401000-Roudoukijunkyokuroudouhoshoubu-Rousaikanrika/0000067949.pdf
福島さん:
 はい、了解しました!ありがとうございます。
大熊社労士:
 それから、御社には直接関係ないのですが、海外派遣者の特別加入ってあるじゃないですか。その料率も変更予定ですので、一応、変更することだけご案内しておきますね。
福島さん:
 いろいろ変わるのですね。正式に決まったら、また、教えてくださいね。ありがとうございました。

>>>to be continued

[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス
 こんにちは、大熊です。今回は前回に続き、社会保険料率について取り上げました。雇用保険料率は平成26年度から変更なしとなったため、給与計算には影響しません。労災保険率については、労働保険の年度更新に影響のある項目となるため、引き続き、正式決定を待ちましょう。


関連blog記事
2015年2月13日「平成27年度の雇用保険料率が告示 料率は変更なし」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/52064832.html

参考リンク
厚生労働省「平成27年度の雇用保険料率について」
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000073918.pdf
労働保険の保険料の徴収等に関する法律
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S44/S44HO084.html
厚生労働省「「労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則の一部を改正する省令案要綱」を労働政策審議会に諮問しました」
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000067628.html

(宮武貴美)
http://blog.livedoor.jp/miyataketakami/

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