4月から労災保険率や工事労災の労務比率などが変更されます
大熊は、新たに来年度の労災保険率が決定されたことに伴い、服部印刷に資料を持って訪問することにした。
大熊社労士:
今日は、労働保険の年度更新に向けて、労災保険率も含めた労災保険の改正に関する話をしようと思い、伺いました。
福島さん:
確か労災保険率は3年に1回、見直しをされるのでしたよね。
大熊社労士:
よく覚えていらっしゃいますね。その通りです。労災保険率はご存知の通り、業種ごとに定められています。そのそれぞれの業種の過去3年間の災害発生状況等が考慮され、原則として3年ごとに改定が行われています。前回の改定が、2012年4月でしたので、この4月に改定ということになりました。
宮田部長:
まぁ、3年に1回なら対応するしかないかな、ってとこですかね。
福島さん:
宮田部長の場合、3年に1回なので忘れちゃう、っていう感じじゃないですか。
大熊社労士:
福島さんもなかなか鋭い突っ込みをしますね。さて、その労災保険率ですが、全体でお話をすると、全54業種ある中で、引下げが23業種、引上げが8業種となりました。そして、その平均が0.1/1,000の引下げとなっています。具体的には、こちらが新しい労災保険率表になります。
関連blog記事
2015年3月20日「労災保険率表(平成27年4月1日施行)」
http://blog.livedoor.jp/leafletbank/archives/51353358.html
宮田部長:
全体としては小幅な引下げですね。一番引下げが大きい業種が「水力発電、ずい道等新設事業」の10/1,000なのですね。いろいろ労働災害の防止に取り組んでいるんだろうなぁ。
大熊社労士:
そうですね。危険な仕事で労災保険率も高くなるということですからね。さて、この労災保険率の改定で注意しなければならないことは、年度更新の際の概算保険料の計算の際に、新しい保険率を利用するということですから、忘れないでくださいね。まぁ、申告書に確定は旧料率、概算は新料率ということで記載されていますので、最終的に申告書で確認すれば問題ないかと思いますけどね。
福島さん:
ありがとうございます。きちんと確認することにしますね。
大熊社労士:
今回の改正ですが、実はその他のことについても行われています。御社には関係ないこともあるかと思いますが、概要だけでも説明しておきましょうね。
宮田部長:
よろしくお願いします。
大熊社労士:
まず、1つ目が、労災保険に特別加入している人の労災保険率の改定です。特別加入ですので、中小企業の事業主や、一人親方、あとは・・・海外派遣の人などですよね。
福島さん:
普通では労災保険の補償の対象にならない人たちですね。
大熊社労士:
はい、そうです。その中でも、一人親方等の第2種特別加入、そして、海外派遣者の第3種特別加入の方の労災保険率が変更になっています。第2種特別加入は、あまりなじみがないかも知れませんが、第3種特別加入は可能性としてありますよね。この料率は引下げになっており、4/1,000から3/1,000となります。
関連blog記事
2015年3月24日「第二種及び第三種特別加入保険料率表(平成27年4月1日施行)」
http://blog.livedoor.jp/leafletbank/archives/51353361.html
福島さん:
海外派遣者についても事故が少ないという結果なのでしょうね。
大熊社労士:
そうでしょうね。ここまでが労災保険率のお話でしたが、他の改正として工事に関することがあります。
宮田部長:
工事?
大熊社労士:
はい。工事というのは建設業のことですね。建設業は、1社のみで行うだけでなく、請負業者に業務を委託して、複数社でひとつの工事現場での仕事を担うことが多くありますよね。
宮田部長:
えぇ、そうですね。
大熊社労士:
そのために労災保険では、元請が下請の分も含めて、全部の労災を一括して成立させるというルールがあるのです。あまりここを詳しく説明することはやめておきますが、まぁ、建設現場で労災事故が発生したときは、その事故が下請の従業員であっても、元請の労災を使うということです。
宮田部長:
へー、そんな仕組みになっているんだ。元請の会社は大変ですね。
大熊社労士:
そうなんです。で、労災保険料の計算というと・・・従業員の賃金から計算していきますよね。
福島さん:
え!すごいたいへん!
大熊社労士:
そうなんです。下請の従業員の賃金も全部全部、ぜーんぶ把握する、というのは元請の会社にとってとても大きな負担になります。そのため、「労務費率」というものが決まっています。
宮田部長:
労務比率?
大熊社労士:
はい。工事の元請金額にこの労務比率をかけて、仮の賃金額を計算し、労災保険料を計算するのですけど、もともとの請負金額のうち、これくらいが賃金額として妥当でしょうという率が計算されていることになります。今回、その労務費率が改定されました。事業の種類ごとに決まっているので、労災保険率の前にこの労務比率の計算で間違えないようにしなくてはならないことになります。
関連blog記事
2015年3月23日「労務費率表(平成27年4月1日施行)」
http://blog.livedoor.jp/leafletbank/archives/51353359.html
宮田部長:
なるほど~。
大熊社労士:
ちなみに、この請負金額には、消費税額を含んだ請負金額で計算することになっていましたが、今回の改正で含めないものとすると変更になりました。
宮田部長:
そっかぁ、消費税を引上げる・先延ばしにするなんて議論もあったりして、結構、それを考慮したりするのもたいへんでしょうからね。役所もたいへんですね。
大熊社労士:
そうですね。後半はざっと概要だけを確認しましたので、説明不足の面もあるかも知れませんが、お許しくださいね。
福島さん:
はい、また何か不明点があれば、お尋ねさせていただきますね。
大熊社労士:
いつでもお待ちしています。ありがとうございました。
>>>to be continued
[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
こんにちは、大熊です。最後に説明をした労務比率ですが、実は改正前のものは消費税が5%であると仮定して比率が決定されています。そのため、今年度は賃金総額の算定に当たり、請負金額に108分の105を乗じるといった暫定的な措置が設けられていました。今回、消費税を含めないこととする改正と合わせて、この暫定的な措置も廃止されていますので、ご注意ください。
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2015年3月24日「第二種及び第三種特別加入保険料率表(平成27年4月1日施行)」
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2015年3月23日「労務費率表(平成27年4月1日施行)」
http://blog.livedoor.jp/leafletbank/archives/51353359.html
2015年3月20日「労災保険率表(平成27年4月1日施行)」
http://blog.livedoor.jp/leafletbank/archives/51353358.html
(宮武貴美)
http://blog.livedoor.jp/miyataketakami/
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