[有期雇用特措法(1)]定年後の有期雇用契約の特例を適用する場合にはこの手続きが必要です

 気温も上がり、温かくなったなと外に出た大熊は思った。今日は服部印刷に向かう日。服部社長はいるかな?と思っていたところ、会議室に社長の姿が見えた。


大熊社労士大熊社労士:
 いつもお世話になっています。今日は服部社長もいらっしゃいますね。社長にも聞いていただきたいことがありましたので、ちょうどよかったです。
服部社長:
 年度末でもあるので何か聞いておくべきことがあるのではないかと思っていました。大熊さんの心が読めたのかも知れません(笑)。
大熊社労士:
 まさに2015年4月1日から施行される「有期雇用特別措置法」についてご説明しようと思っていました。
宮田部長:
 ユウキコヨウトクベツソチホウ?
大熊社労士:
 あ、分かりづらいですね。以前、「定年後に嘱託社員になった従業員の無期転換ルールが変更になります」ということでご説明した内容のものです。ご説明したときには、法律しか決まっていませんでしたが、先日、施行規則も官報で公告され、基本指針も決定しました。
福島さん:
 定年退職した従業員の継続雇用について特例を設けるものでしたよね。
大熊社労士:
 さすが福島さん!その通りです。概要をさらっと復習すると、労働契約法が2013年4月に改正され、有期労働契約が反復更新され、その期間が通算5年を超えたときは、有期雇用の労働者は期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できる権利(無期転換申込権)が得られるということでしたよね。
宮田部長宮田部長:
 おぉ、私が70歳までこちらの会社でご厄介になれるかどうか、という話ですね。
大熊社労士:
 ちょっと違う気がしますが・・・確かに、60歳の定年後、継続雇用制度で5年間、有期雇用を繰り返していると、65歳以降も雇用契約を更新したところで無期転換権が発生するということになります。つまり、定年もなく、辞めるというまで働ける可能性が出てくるということですね。これについて、何も手当しないと、おっしゃるように70歳まで働くことができます。そこで有期雇用特別措置法で特例が設けられました。
服部社長:
 確か、定年後の継続雇用の従業員には、無期転換申込権が発生しないのでしたよね。
大熊社労士:
 その通りです。ただし、定年後の継続雇用者であれば、自動的にこの対象になるわけではありません。ここが大きなポイントですね。この特例を適用するためには、①適切な雇用管理に関する計画を作成し、②都道府県労働局長の認定を受ける必要があるのです。
服部社長服部社長:
 なるほど、特例を適用するということなので、事前の認定が必要になるのですね。それで、「①適切な雇用管理に関する計画」とはどのようなものなのですか?
大熊社労士:
 はい、「第二種計画認定・変更申請書」というものを作成することになるのですが、高年齢者雇用推進者の選任や、身体的機能や体力等の低下を踏まえた職場の安全性の確保といった健康管理、安全衛生の配慮等を行うことになり、申請書に記載することになります。
福島さん:
 ということは、当社で必要なことを考えて、申請書に具体的な内容を書くことになりますか?
大熊社労士:
 いえ、申請書には、有期雇用労働者の特性に応じた雇用管理に関する措置の内容として既に以下の項目が挙げられており、どれを計画するかのチェックを入れることになっています。これらのいずれかの措置を実施することが必要とされています。
 □高年齢者雇用推進者の選任
 □職業訓練の実施
 □作業施設・方法の改善
 □健康管理、安全衛生の配慮
 □職域の拡大
 □職業能力を評価する仕組み、資格制度、専門職制度等の整備
 □職務等の要素を重視する賃金制度の整備
 □勤務時間制度の弾力化
 申請書自体に会社が計画した措置の内容までは記載しませんが、添付資料として、契約書の雛形や就業規則等の措置を実施することが分かるものが必要になります。
服部社長:
 なるほど、それでは適用することを考えるのであれば、まずはその措置を考えなければならないな。了解しました。宮田部長・・・。
宮田部長:
 その申請書を作成するということですね!
福島照美福島さん:
 その前に、65歳以降も継続雇用する従業員がいるかを確認ですよね、社長!
服部社長:
 そうそう、二人、仲良く協力して取り組んでくださいね。
大熊社労士:
 よろしくお願いします。

>>>to be continued

[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス
 こんにちは、大熊です。今日は有期雇用特別措置法の詳細についてお話しました。この特例は申請後に認定されるかどうかという点も問題になります。申請後に認定を受けて特例が適用されるため、ご注意ください。次回は、高度専門職に関する特例を取り上げます。


関連blog記事
2015年3月2日「4月に施行される有期雇用特別措置法のパンフレット ダウンロード開始」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/52066505.html
2014年12月1日「定年後に嘱託社員になった従業員の無期転換ルールが変更になります」
https://roumu.com/archives/65691406.html
2014年11月22日「来年から定年再雇用者と高度専門知識を有する有期雇用者は労働契約法の無期転換から除外に」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/52056534.html
2013年2月18日「定年後に嘱託社員になった従業員が5年勤務したら無期転換になるのですか?」
https://roumu.com/archives/65599459.html

参考リンク
厚生労働省「労働契約法の改正について~有期労働契約の新しいルールができました~」
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/keiyaku/kaisei/index.html

(宮武貴美)
http://blog.livedoor.jp/miyataketakami/

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