ストレスチェックを実施すると助成金が支給されるのですか?
大熊が服部印刷に到着すると、社長が出迎えてくれた。
服部社長:
大熊さん、先日、同業の社長が集まる会合に行ってきたのですが、ここでもマイナンバーの話題が多くでていましたね。異常なくらいの盛り上がりですね。
大熊社労士:
本当にそうですね。私も先日、企業の人事労務担当者向けの研修の講師をしたのですが、聞きたい内容は?と尋ねたら、まさにマイナンバー関連のことばかりでしたよ。
服部社長:
ところで、その会合で、ストレスチェックの話も出たのですが、新しく助成金ができたとかいうことでした。当社も対象になるものですか?
大熊社労士:
12月から始まるストレスチェック制度に対する助成金ですね。このストレスチェックは、従業員数50人以上の事業場が義務になっています。ですので、御社も実施が義務付けられる企業規模となります。
宮田部長:
そうですね。現在は従業員数53人です。表現はおかしいかもしれませんが、ギリギリ対象ってところですか?
大熊社労士:
そうですね。実施が義務ですので、残念ながら今回の助成金の対象にはなりません。一方、従業員数50人未満は努力義務ですので、この努力義務の企業がストレスチェックを実施する場合には助成金を支給しましょう、ということになっています。
服部社長:
確かに法律で義務とされているのに助成金を支給するというのはおかしな話だな。当社は対象にならないかもしれませんが、その助成金の内容を少し教えてもらえますか?
大熊社労士:
はい、まず対象となるのは、事業場の所在地が同じ都道府県である、従業員数50人未満の複数の事業場が、合同でストレスチェックを実施した場合に、各事業主が支払った費用に対し、助成金が支給されます。ちなみに、合同で選任した産業医からストレスチェック後の面接指導等の産業医活動の提供を受けた場合も対象になっています。
福島さん:
合同・・・ですか?
大熊社労士:
そう、そこがポイントです。この助成金は、助成金の支給申請をする前に、小規模事業場の集団を形成する必要があります。1事業場のみではなく、2事業場から10事業場までの複数の小規模事業場を含む事業場で集団を構成していなければならないのです。ちなみに、支給要件を満たしているかの確認を受けるため、あらかじめ労働者健康福祉機構への届出を行うことになります。
福島さん:
そうなんですね。
大熊社労士:
その他にも、以下の4つの要件を事前に満たしているかを確認することが必要になります。
集団を構成する小規模事業場の事業者が産業医を合同で選任し、ストレスチェックに係る産業医活動の全部又は一部を行わせること。
ストレスチェックの実施者及び実施時期が決まっていること。
集団を構成する全ての小規模事業場において、ストレスチェック及び面接指導を行う予定であること。
集団を構成する小規模事業場の代表者との産業医(合同選任産業医)が同一者でないこと。
宮田部長:
なにやらいろいろ要件がありますね。
大熊社労士:
確かにそうですね。私がこの助成金を見たときに、合同・集団という点がなかなか使いにくいなと感じました。まぁ、私のように複数の企業の顧問をさせていただいている社労士が意識の高いお客様同士をつなぐ役割になるのかもしれないのですけどね。
服部社長:
それで、ストレスチェックに対しては、どの程度の助成金が支給されるのですか?
大熊社労士:
ストレスチェックの場合には、年1回のストレスチェックを実施した場合に、実施人数分の実費費用が助成されます。ただし上限額が決まっており、1従業員につき500円となっています。先ほどもチラッと話題に出しましたが、ストレスチェックに係る産業医活動も助成の対象となっていて、面接指導の結果について、事業主に意見陳述をすること等にも、実費が助成されます。こちらも上限額があり、1事業場あたり産業医1回の活動につき21,500円、活動3回までなっています。
服部社長:
なるほど、ストレスチェックは外部に委託することが多いかと思うので、会社としては、どうしても費用負担が気になりますが、少しでも費用が軽減されるとなると前向きに検討する経営者は増えるかも知れませんね。
大熊社労士:
そうですね。ちなみに、労働者健康福祉機構への届出(小規模事業場団体登録届)は、既に始まっていますし、助成金の支給申請もストレスチェック制度が始まる12月ではなく、6月15日から始まっています。申請期間中でも助成金の支給申請の受付が終了されるかも知れませんので、助成金を申請することも含めて、ストレスチェックの実施検討をしなければなりませんね。
服部社長:
なるほど、確かにそうですね。来月の会合で私からも話題に出してみますよ。
大熊社労士:
そうですね。
福島さん:
ところで大熊先生、ストレスチェック制度の詳細は出てきましたか?
大熊社労士:
はい、マイナンバーのお話ばかりをしていましたので、遅れましたが、膨大なマニュアルが厚生労働省から出てきています。来週以降は、この説明をすることにしましょうね。
服部社長:
よろしくお願いします。宮田部長、福島さん、当社での対応、よろしく頼むよ。
>>>to be continued
[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
こんにちは、大熊です。この助成金は労働局に申請するものではなく、独立行政法人 労働者健康福祉機構に申請することになります。機構では、ストレスチェック制度サポートダイヤルも開設しており、産業医、保健師等ストレスチェックの実施者、事業者、衛生管理者等ストレスチェック制度担当者等からのストレスチェック制度の実施方法、実施体制、不利益な取扱いなどに関する相談に回答しているので、こちらのダイヤルを利用してもよいかも知れません。
https://www.rofuku.go.jp/sangyouhoken/helpline/tabid/1008/Default.aspx
関連blog記事
2014年10月6日「2015年12月からストレスチェックの実施が義務付けられます」
https://roumu.com/archives/65685637.html
参考リンク
独立行政法人 労働者健康福祉機構「「ストレスチェック」実施促進のための助成金」
https://www.rofuku.go.jp/sangyouhoken/stresscheck/tabid/1005/Default.aspx
(宮武貴美)
http://blog.livedoor.jp/miyataketakami/
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