オワハラって何ですか?

 服部印刷に到着した大熊に、がっかり肩を落とす宮田部長の姿が目に入ってきた。


大熊社労士:
 おはようございます。あれ?宮田部長、元気がありませんね。どうされたのですか?
宮田部長宮田部長:
 大熊先生、聞いてくださいよ~。先日、来春に入社予定として内定を出していた学生から、「第一希望の会社に内定が決まったので、御社には入社できない」って連絡が入ったのです。期待の新人だったので、なんだかガックリきちゃいまして。
大熊社労士:
 それは残念でしたね。
福島さん:
 宮田部長、今回は特に採用に力を入れていらっしゃったので、落ち込みは相当ですよね。まぁ、その学生の内定がいわゆる一流企業でしたので、仕方ないのかなぁ、なんて思ってはいます。
服部社長服部社長:
 中小企業は中小なりの良さがあると思うのだけど、学生にそれを理解させるのは難しい。景気がよくなると、当社のような中小企業は人材確保が相当難しくなります。採用環境の厳しさを感じる採用活動となりました。まぁ、宮田部長、今回は丁寧な謝罪があったし、残念だけど、私たちの目に狂いがなかったと思うことにしよう。
大熊社労士:
 そうですね。最近は、内定を決めさせて、辞退させないようないわゆる「オワハラ」が問題になっています。
宮田部長:
 オワハラ?
大熊社労士:
 はい。就職活動を終わらせるようとする「就活終われハラスメント」ですね。厚生労働省では専用のリーフレットを作り、「自社の内々定と引き替えに他社への就職活動を取りやめるよう強要することなどの職業選択の自由を妨げる行為」や「学生の意に反して就職活動の終了を強要するようなハラスメント的な行為」は行わないように注意喚起しています。
福島さん:
 私もインターネットのニュースで見た覚えがあります。ハラスメントっていろいろあるなぁ、と感じたところでした。
宮田部長:
 でも、どうしてそれがいけないんですか?「雇ってあげるよ」って言っているのだから、就職活動を続けるだなんて、浮気みたいじゃないですか~。
大熊社労士:
 浮気ですか・・・あははは。確かに採用担当者から見るとそう思いますが、新卒で入社する会社はある意味、その後の社会生活を左右します。そういう点では、納得いくまで就職活動にチャレンジさせるべきだ、というのもありますよね。本当は最初から1社に絞って就職活動をし、その1社から内定をもらうというのがベストですが、内定をもらえない可能性もあると、複数社の就職活動をしていくのは、当然の流れですよね。
福島照美福島さん:
 そうですよね。誰でも内定を複数もらって、その中で一番強く希望する会社に入りたいと思いますよね。
大熊社労士:
 でも、採用担当者からすると、うちだけに絞って欲しい。逆に内定を辞退するのであれば、次の応募者に内定を出したい。採用予定の人数は必ず確保したいけれども、多めに内定を出して、実際に辞退がなく、当初予定よりも採用人数が増えるのは困る・・・そんな気持ちがありますよね。
宮田部長:
 私も同じ気持ちですよ。内定を出すときに、もう1名、迷った学生がいたんですよ。彼に内定を出していたら・・・うちの会社に来てくれていたのかなぁ・・・って。
大熊社労士:
 だからこそ、オワハラの問題になるのです。実際にハローワーク等には「面接担当者の目の前で、他社に就職活動の辞退を電話させたり、辞退メールを送るように強要された」というものがあります。そのようなことは、行わないようにしなければなりません。
宮田部長:
 なるほど。でも、内定辞退を防ぐにはどのようにすればいいのでしょうか。
大熊社労士大熊社労士:
 難しい質問ですね。ただ、1点言えるのは、内定後も学生とコミュニケーションをとって、学生の状況を聞き、会社の状況を伝え、会社が入社を期待して待っているということを伝え続けることなのでしょう。
宮田部長:
 もう、それなら、内定出すから、明日から毎日会社に来てちょうだい!あ、もちろん、アルバイト代は出すからさ、ってしたくなっちゃいますよ。
福島さん:
 部長、それ、きっとオワハラですよ!
大熊社労士:
 そうですよ。必要以上の身体的拘束も問題です。もちろん、学生が自主的にアルバイトをしたいというのであれば、問題ありませんけどね。
服部社長:
 まぁ、当社はまだまだ他社と比べて魅力がない・・・いや、当社にある魅力を採用活動で打ち出せていないということでしょう。次の採用からは、その点をもう一度見直して、一流企業より、当社に入りたいという学生を採用できるようにしていこう。
大熊社労士:
 そうですね。よろしくお願いします。

>>>to be continued

[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス
 こんにちは、大熊です。文部科学省では、大学等卒業予定者の就職活動の在り方について検討・協議を行う、国公立私立の大学、短期大学および高等専門学校関係団体で構成される組織である「就職問題懇談会」を立ち上げ、就職活動に関する申し合わせ等を行っています。平成27年7月30日の緊急メッセージでは、「学生を長時間拘束するような選考会や行事等の実施の自粛」を発信しています。


参考リンク
厚生労働省「 大学等卒業予定者の就職・採用活動等について ~「指針」及び「申合せ」~」
http://www.mhlw.go.jp/topics/2010/01/tp0127-2/15.html
文部科学省「公平・公正な採用選考活動の実施について~吉岡就職問題懇談会座長メッセージ~」
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/27/07/1360683.htm

(宮武貴美)
http://blog.livedoor.jp/miyataketakami/

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