在職老齢年金の対象となる人の範囲が広がります

 服部印刷は高年齢の従業員も雇用しているが、「さすがに77歳まではいなかったよな」と思いながら、大熊は門をくぐった。


大熊社労士:
 こんにちは。今日は年金と給料の調整の改正についてお話しましょう。といっても、御社にはおそらく該当者がいないと思うので、参考までにということになりそうですけどね。
宮田部長宮田部長:
 年金と給料の調整!今後の私に該当しそうな内容ですね。そうそう、年金をもらいながら働くと、年金が減額されてしまうんですよね?
大熊社労士:
 そうです。在職老齢年金といって、年金額が調整(減額)されることがあります。ただ全員ではなく、年金額と給料の額によって、その調整額は決まってきます。
福島さん:
 年金と給料の調整って、合計額が高いと調整額も大きいんでしたよね?確か、47万円とかいう数字が出てきていたな、という記憶があるのですが・・・。
大熊社労士:
 そうですね。給料といっていますが、給料とその前1年の賞与が関係しています。大雑把に言ってしまうと、いまの給料とこの直前1年間にもらった賞与の12分の1、つまり月割り額の合計が47万円を超えると年金は全額支給停止(支給されない)ということになります。
福島さん:
 1ヶ月あたり47万円ももらっていれば、生活は十分でしょう、というようなイメージですか。
大熊社労士:
 はい、そうなのでしょうね。
宮田部長:
 じゃぁ、47万円以下の人はどうなるんですか?
大熊社労士:
 気になりますよね。そのケースですと、65歳未満の場合と65歳以降の場合と計算式が分かれています。その計算式は日本年金機構のこちらのページで説明されています。今回は改正を説明することが目的ですので、ここで詳しく説明するのは省きますね。
宮田部長:
 了解しました。それにしても、65歳になっても、働き続けていると年金が減ってしまうかもしれないのですね。ふぅ。あれ?70歳でもそうなんですか?75歳でも!?
大熊社労士大熊社労士:
 そうなのです。働き続けている限り、調整の対象になってしまうんですよ。ただ、前提として、社会保険に該当する人が対象です。つまり、短時間での勤務やそもそも社会保険に加入していない会社に働くような人は対象外ですけどね。そして、今回は、その年齢の点で少し改正がありました。
宮田部長:
 年齢?
大熊社労士:
 はい。これまで、この在職老齢年金の制度は、昭和12年4月2日以降に生まれた人が対象でした。今回、平成27年10月1日以降は、対象外とされていた昭和12年4月1日以前に生まれた人も新たに対象となることになったのです。
宮田部長:
 え~!そうなんですか!?
大熊社労士:
 えぇ。ただ、一番最初にお伝えしたように、対象になる人はかなり少ないかと思います。昭和12年生まれということは、現在77歳~78歳という方ですからね。もちろん、私の顧問先でバリバリの現役経営者としてやっていらっしゃる方もいらっしゃいますし、熟練工で生涯現役なんて方もいるので、こうやって情報提供をしています。
福島照美福島さん:
 経営者の方ですと、報酬も高い可能性があって、急に年金が全額支給停止なんていう事態にもなりかねないということですね。
大熊社労士:
 はい、私もその心配をしています。
宮田部長:
 大熊先生、この改正ですが、対象者が仮にいたとして、放っておけば勝手に年金が調整されるのですか?
大熊社労士:
 よい質問ですね。実は70歳以上ですと、健康保険も厚生年金保険も資格を喪失していますよね。ですので、年金事務所が調整の対象者となる人を把握していません。それもあって、新たに「70歳以上被用者該当届」を提出する必要があります。
福島さん:
 それを提出して調整の対象になる人だよ、と報告するということですね。
大熊社労士:
 そうですね。これから70歳以上になる人についても該当すれば、都度、提出する必要のある書類ですので、気にしておいてくださいね。
福島さん:
 はい、注意しておきますね。
大熊社労士:
 それから、今日の説明はあくまでも概要ですので、どれくらい調整されるかといった内容は、年金額や過去、どのような年金制度に加入していたかということも含めて、個別に考えていかなければなりませんので、その点は理解しておいてくださいね。
宮田部長:
 了解しました。私ももらうときになったら、大熊先生に個別に相談させていただきますね。
大熊社労士:
 了解しました。ただ、ご自身のことだけでなく、従業員のことも考えてあげてくださいね(笑)。

>>>to be continued

[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス
 こんにちは、大熊です。今日は在職老齢年金の改正についてお話しました。70歳以上の手続きについては、「70歳以上被用者算定基礎・月額変更・賞与支払届」等もありますので、対象者について提出漏れのないようにしましょう。


参考リンク
日本年金機構「在職中の年金」
http://www.nenkin.go.jp/n/www/service/detail.jsp?id=3237
日本年金機構「70歳以上被用者該当・不該当届の提出」
http://www.nenkin.go.jp/n/www/service/detail.jsp?id=2082

(宮武貴美)
http://blog.livedoor.jp/miyataketakami/

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