[改正派遣法]労働者派遣の期間制限の見直し(1)

 服部印刷に到着すると、珍しく服部社長が大熊が来るのを待ち構えていた。


服部社長:
 大熊さん、そういえば、先月、労働者派遣法が改正されたのですよね?当社にも派遣をしていただいている方がいるので、気になっていたのですが、内容を教えてもらえませんか。
宮田部長宮田部長:
 社長、私もその件、気になっていました。先日も行政が主催する説明会に行ってきたのですが、より具体的な内容を聞きたいと思っていたところです。
大熊社労士:
 そうでしたか。それでは説明することにいたしましょう。ただ、今回の改正はいくつかポイントがありますので、何回かに分けて説明したいと思います。まずは一番注目されている派遣期間の制限についてお話することにしますね。
服部社長:
 よろしくお願いします。
大熊社労士:
 そもそも労働者派遣というのは、臨時的・一時的なものという前提があります。これは法改正前後で変わりがない理解です。ですので、ずっと同じ人を同じところで派遣する・してもらうというのは原則認められません。
福島照美福島さん:
 ずっと同じ人に来てもらうのであれば、会社の正社員・・・直接雇用するべきだということですよね。
大熊社労士:
 そうですね。常用雇用の代替としてあるべきではない、ということですね。それは派遣という形態を取る限り、雇用に不安定さがあったり、キャリア形成が難しかったり、また、賃金も低く抑えられがちだったりするからです。様々な問題をはらんでいるのですよね。
宮田部長:
 確かにそうですね。
大熊社労士:
 そのため、改正前は物の製造や一般事務のような業務では、同一の業務で原則1年間、過半数労働組合等の意見を聴いた上で、3年間まで派遣が認められていました。
宮田部長:
 あれ?でも、うちに来ていただいている方は、すでに3年を過ぎているような気がするけど・・・問題ですか?
大熊社労士大熊社労士:
 いえ、おそらく、専門的な業務、26業務なのでしょう。このいわゆる26業務は、ソフトウェア開発や秘書、アナウンサー等なのですが、専門性の高い業務として派遣の受入期間に制限がなかったのです。御社の場合ですと、事務用機器操作で派遣されているのかも知れませんね。
福島さん:
 はい、確かそうだったかと思います。ですので、問題ないのですよ、部長。
大熊社労士:
 そうですね。ただし、改正後はこの26業務という括りがなくなりましたので、今後の対応を考えていく必要がありますね。
宮田部長:
 え!そうなのですか?優秀な方なので、いつまでもいて欲しいと担当の部署から声が出ていましたが・・・。これはしっかりと話を聞いておかないといけないな。
大熊社労士:
 そうですね、というか、そうでなくてもしっかりと話を聞いてくださいね(笑)。この派遣期間の制限ですが、改正後は2つに分かれました。1つ目が「派遣先事業所単位の期間制限」で、2つ目が「派遣労働者個人単位の期間制限」です。
宮田部長:
 ん?ややこしくなりそうな予感ですね。
大熊社労士:
 いえいえ、比較的シンプルになりました。26業務に関しては、2つ目の派遣労働者個人単位の期間制限と関係が深いですね。これは、どの業務についても、同じ人に派遣労働者として働いてもらうのは3年までにするというものです。つまり、これまで26業務として派遣の期間制限がなかった人も、3年までとなるということです。
宮田部長:
 え!じゃぁ、まさに、いま来ていただいている方も3年でおしまいということなのですね。そりゃ、まずい。
大熊社労士:
 経過措置はあるものの、そのとおりです。ただし、この3年というのは、「派遣先の事業所における同一の組織単位に対して」となっています。
福島さん:
 なんだかややこしいですね。
大熊社労士:
 そうですね。もう少し分かりやすくすると、3年経ったときに「課」や「グループ」が変われば、同じ派遣の方であっても来ていただけるということです。
服部社長服部社長:
 ということは、いま来ていただいている方が優秀だから、3年経ったところで、今度はいまの部署から総務へ派遣先を変わってもらうということですね。
大熊社労士:
 そうです。それであれば3年を超えても問題ないことになります。この際に「課」や「グループ」というのは、業務としての類似性、関連性があり、組織の長が業務配分、労務管理上の指揮監督権限を有するものととして実態に即して判断されることになっているので、もちろん、名称だけを変えればよいというものではありません。
服部社長:
 当然のことですね。それにしても、大熊さん、いまの話ですと、これまで専門性をもって26業務で派遣されていた人というのは、たまったものではありませんね。
大熊社労士:
 はい、そうなんです。これまで26業務で働いていた人たちに対し、期間制限ができたことで、派遣元の会社は雇止めをすることもありえます。そのため、行政も改正法の施行を理由に雇止めを行うことをしないようにアナウンスしています。また、専用の相談窓口を設置することにもしています。
服部社長:
 なるほど。今後、どの程度が問題として出てくるか分かりませんが、確かにありそうな事案ですね。
大熊社労士:
 そうですね。大きなトラブルに発展することがないように願うばかりです。次回は、派遣先事業所単位の期間制限のほうを説明することにしましょう。
服部社長:
 よろしくお願いします。

>>>to be continued

[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス
 こんにちは、大熊です。改正労働者派遣法の説明を始めました。今回の派遣労働者個人単位の期間制限には経過措置があり、施行日である平成27年9月30日時点で既に締結されているものについては、改正前の法律の期間制限が適用されることになっています。


参考リンク
厚生労働省「平成27年労働者派遣法の改正について」
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000077386.html

(宮武貴美)
http://blog.livedoor.jp/miyataketakami/

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