育児休業期間の業務の引継ぎ・代替はどうすればよいのでしょうか
服部社長は最近、女性活躍という言葉をよくに耳にするようになったと感じていた。女性が活躍するためには、出産や育児の問題を解決することが不可欠だが、その期間の業務をどのように対応すればよいのか、なかなか答えが出ない状態が続いていた。そこにたまたま大熊が通りかかった。
服部社長:
大熊さん、今日が定例の来社日だったのですね。ちょうど私の中にモヤモヤしていることがあるので、是非、今日はその話を聞いてくださいよ。
大熊社労士:
服部社長がモヤモヤされているということであれば、それをテーマにしないわけにはいかないですよね。今日は急ぎのテーマがない日でしたので、ちょうどいいですね。
宮田部長:
今日は私からも特に質問もありませんので、社長のモヤモヤ、教えてください。
服部社長:
女性が長く働いてくれて、会社に貢献してくれる。会社も本人を支援することで、キャリアアップをして、能力に見合ったパフォーマンスを出してくれる。これは理想的なことだよね。あ、もちろん、男性も同様のことが言えるが。
宮田部長:
そりゃそうですよね。人材がバンバン入れ替わっていたら、教えることだけで時間が過ぎていってしまいますよ。
服部社長:
ただ、女性が長く働くことを考えると、どうしても避けられないこととして、出産と育児の問題がある。これを否定するつもりはないし、その経験を仕事にも生かすこともできると思うのだけど、どうしてもある程度の期間、働くことができない、この期間に対する業務の対応をどうすればいいのかな、と思って。
福島さん:
私自身も育児休業を取らせてもらって、とてもありがたいと思ったのですが、休む期間について、自分の仕事はどうなっちゃうのだろうか?と正直不安に思いました。
大熊社労士:
そうですね、難しい問題だと思います。すぐに思い浮かぶ対応の選択肢は、①休業する人の業務を現在の社員で分担する、②代わりに人を雇う、③派遣社員をお願いする、ということでしょうね。もちろん、根本からその業務が必要かを検討し業務を圧縮したり、業務自体をアウトソーシングしたり等の違った解決方法もあると思うのですけどね。
服部社長:
3つの選択肢は私も考えました。後段の部分については、そこから考える必要があるのか、といま気づかされたところです。
大熊社労士:
確かに後段はしっかりと考える部分でもありますよね。
宮田部長:
福島さんが育児休業を取ったときには、派遣の人をお願いし、さらに私が業務を見るようにしましたが大変でした。そこで福島さんの業務の大変さや、持っている専門性・・・これは当社の特性という面も含めての専門性ですけど、感じたところでした。
大熊社労士:
そうですね。単純に派遣の人に来てもらえばその業務をすぐに担うことができるわけではありません。ですので、現在の社員で何とか分担するという方法を取ることも考えることになります。ただ、育児休業が1年となると、これがなかなか大変で、過重労働の問題さえ出てきます。
服部社長:
確かにそうですね。
大熊社労士:
しかし、代わりの人を雇うとなると、育児休業から戻ってきた人をどうするか、という問題も発生します。つまり、人員の余剰が出る可能性もあるんですよね。いずれも深刻な問題です。
福島さん:
確かに私の場合には派遣の方だったので、漠然と以前の業務に戻れるのだろうなぁ、と思っていたのですが、そうでなければ復帰後の仕事を不安に思っていたかもしれません。
大熊社労士:
そうですね、やはり原職に復帰できるか不安に感じる人は多いようです。私としては、育児休業を取る人の業務をしっかり棚卸しし、その業務の内容によって、どのような対応を取るかを決める必要があると思っています。また、妊娠したからということで、棚卸しをするのではなく、日頃から自分の業務をしっかり把握し、先ほどの業務の圧縮なども検討していかなくてはならないのだと思います。
宮田部長:
福島さんのときは、聞いてから私が動揺してバタバタしてしまったからなぁ。
福島さん:
私ももう少ししっかりと普段から業務を整理しておくべきでしたね。
大熊社労士:
いえいえ、丁寧な業務をされていたことも、そして、宮田部長がしっかりフォローをされていたことも、さらには宮田部長が福島さんをかなり頼っていたことも分かりましたよ(笑)。
宮田部長:
それ、社長には内緒のことじゃないですか!(笑)
大熊社労士:
妊娠・出産で退職する人も多いですが、働き続ける人も増えています。だからこそ、今日お話したようなことはしっかりと検討しておく必要がありますし、また、国もそれを支援しようとし
ています。
服部社長:
国の支援?
大熊社労士:
はい。助成金という形ですけどね。前回お話をした両立支援等助成金の中には、育児休業取得者の原職復帰を前提に代替要員を確保したときに支給される助成金や、育児休業取得者の円滑な育休の取得や育休後の職場復帰を支援できるように支援プランを作成した場合等に支給される助成金が用意されているのです。
服部社長:
なるほど、そうなんですね。
福島さん:
大熊先生、当社でも今後、育児休業取得者が出る可能性があります。その助成金も教えてもらってもいいですか?
大熊社労士:
もちろんです。では、次回は再度、助成金の話をすることにしましょう。
>>>to be continued
[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
こんにちは、大熊です。これまでは育児休業取得者について、負担を軽くするような配慮をする企業も多くありましたが、人材不足が深刻になる中、たとえ、育児短時間勤務を選択しても、女性の能力を十分に発揮してもらおうという流れもきています。女性の仕事や育児への思いを聞きながら、どのように活躍してもらうか、考えるときが来ているのでしょう。
関連blog記事
2016年2月17日「支給額も示された来年度の両立支援等助成金案 2つの制度が新設」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/52097320.html
参考リンク
厚生労働省「事業主の方への給付金のご案内」
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/shokuba_kosodate/ryouritsu01/index.html
(宮武貴美)
http://blog.livedoor.jp/miyataketakami/
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