来年1月に施行される改正育児・介護休業法はここがポイントとなります
ゴールデンウィーク中ではあるが、大熊は服部印刷で引き続き介護休業に関する説明をすることを予定していた。
大熊社労士:
前回は雇用保険の介護休業給付のことについてお話をしました。今回は、育児・介護休業法の改正のお話をしようと思いますが、よろしいですか?
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2016年4月25日「今年8月より介護休業給付金の給付率が40%から67%に引上げられます」
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宮田部長:
はい、もちろんです。よろしくお願いいたします。
大熊社労士:
現在の育児・介護休業法では、介護休業に関して、原則1回のみ、93日まで取得ができることとなっています。
福島さん:
前回もお話に出た「一家族の一要介護状態につき93日まで」というものですね。
大熊社労士:
はい、そうです。ただ、実際に介護をするとなったときに、1回のみの介護休業では満足した介護ができないという話が出てきました。介護の場面はいろいろあるので、例えば、介護施設に入所するとき、その施設間を移動しなければならなくなったとき、そして、介護の終期の看取りのとき等、休業を取りたい場面が複数回に分かれて出てくる可能性があります。
宮田部長:
確かに、明確な終わりのない介護では、先のことを不安に思う機会が多いかと思いますし、介護の状況の変化のときにはまとまった休みが欲しいということになるでしょうね。
大熊社労士:
確かにそうですね。そういうこともあり、1回のみという取り扱いを、対象家族1人につき通算93日まで、3回を上限として分割取得ができるようにしたのが今回の改正です。
宮田部長:
93日という長さがよいのかは若干疑問には思いますが、従業員にとっては取りやすいものになりますね。
福島さん:
本当にそうだと思います。ところで大熊先生、この介護休業の分割以外で変わったところはありますか?
大熊社労士:
えぇ、介護に関連したもので代表的なものを見ておきましょうか。まず1つ目は、介護休暇の取扱いです。介護休暇は休業を取るほどではない、日常的に発生する介護のニーズに対し、取得することができるものです。対象家族が1人の場合には年間5日まで、複数の場合は年間10日まで取得するできます。
福島さん:
子どもの病院の付き添いとかの休暇と似ているものですよね。
大熊社労士:
そうですね。福島さんのおっしゃったのが子の看護休暇というものです。これらについて、現在は1日単位で取ることが原則になっています。ただ、1日の休暇までは不要だという考えも出ており、今回、半日単位で取得できるように改正されました。
宮田部長:
半日単位ですか。
大熊社労士:
はい。所定労働時間の半分を基本に休めるようになる予定です。
宮田部長:
へぇ。じゃ、午前中だけの3時間働くパートさんは、1時間半働いて帰るってことになるんですね。
大熊社労士:
その可能性はありますが、現状は所定労働時間が4時間以上の人について半日単位でも取得できるようにする予定です。さすがに3時間の半分となると、働いてもらう会社側もどのように働いてもらうか悩むケースもでてくるでしょうからね。
福島さん:
そうなんですね。大熊先生、法律は改正されたのに、詳細は決まっていないのですか?
大熊社労士:
はい、この部分だけではなく、細かなことは厚生労働省が作る省令で決まってくるとされているので、まだ議論が行なわれ始めた段階です。さて、2つ目も説明しておきましょう。2つ目は時短勤務です。現在は、介護休業と通算して93日の範囲内で取得ができる制度ですが、介護休業と分離され、時短勤務の利用開始から3年の間で2回以上の利用が可能となります。
宮田部長:
なるほど。これまではかなり短い期間の利用に限られていたのですね。
大熊社労士:
そうですね。ちなみに時短勤務は必ず制度を作らなければならないものではなく、時短勤務、フレックスタイム制度、始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ、労働者が利用する介護サービス費用の助成その他これに準じる制度のうちから、いずれかの措置を選択することになります。
福島さん:
弊社では、確か以前、時短勤務の制度を導入したかと思います。まだ、利用した人はいないのですが、宮田部長の話を聞くと、いつ、そういう社員が出てきてもおかしくないのかなと思ってしまいますね。しっかり確認しておかなくては。
大熊社労士:
そうですね。妊娠・出産となれば、見た目も変わってきますので、会社としても
把握できますし、子どもが生まれるとなると喜ばしいことなので、周囲へも話しやすいでしょうけれども、介護となるとなかなか報告がされないという可能性もあります。今後は社員の状況を把握することも会社に求められるのかも知れませんね。
宮田部長:
確かにそうですね。プライベートへ立ち入るのをためらう時代になりつつありますが、必要なことは把握するように心がけますね。
大熊社労士:
そうですね。よろしくお願いします。少し話しが戻りますが、法改正の主要部分の3つ目について触れておきましょう。3つ目は残業の免除です。介護終了までの期間について、所定外労働の免除を請求することができるようになります。
福島さん:
え!介護終了まで、ですか!?
大熊社労士:
そう、よく気づかれましたね。そうなんです。
宮田部長:
介護が10年続けば10年・・・。
大熊社労士:
はい。先ほどの時短勤務については。介護休業とは別に、利用開始から3年の間となっていますが、残業の免除はこのような上限期間はありません。あ、もちろん介護終了というのが上限期間ともいえますけどね。今回の改正で個人的にはこの残業の免除が結構大きな影響があるのではないかと思います。
宮田部長:
そうですね。働き盛りの40代が親の介護で残業できないという状況が予想されますよね。
大熊社労士:
そうです。生産性をあげて、長時間労働から抜け出すことがいまの日本に求められている、その理由がここにもあるのでしょう。
福島さん:
奥深いですね・・・。
大熊社労士:
そうですね。そうそう、次回は助成金についてとり上げますので、一緒に取組みについて考えることにしましょうね。
宮田部長:
次回もよろしくお願いいたします。
>>>to be continued
[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
こんにちは、大熊です。育児・介護休業法はこの他にも有期契約労働者の取得要件が緩和することになっています。細かな改正点もあるので、詳細が決まったときにはしっかりと確認するようにしましょう。
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(宮武貴美)
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