社会保険適用拡大(2)新たな4分の3基準を確認しておきましょう

 服部印刷での社会保険適用拡大の説明は第2回目。今回は社会保険を適用している多くの事業所に関係ある4分の3基準について、大熊は確認することとした。
前回の記事はこちら
2016年5月23日「社会保険適用拡大(1)パートタイマーへの社会保険の適用拡大が始まります」
https://roumu.com/archives/65742081.html


福島照美福島さん:
 大熊先生、今日は10月から変更となる4分の3基準についてですよね?
大熊社労士:
 そうですね。かなり前・・・約5年前になるのですが、社会保険の4分の3要件の根拠に関し、説明したことがありますが覚えていらっしゃいますか?こちらの内容になります。
宮田部長:
 あぁ、何だかぼやっと・・・も覚えていません(汗)。4分の3というのだけ記憶に残っています。
大熊社労士:
 まぁ、重要な部分は覚えていらっしゃったということでOKにしましょうか。現状の4分の3の基準は、法律ではなく、昭和55年6月6日付けの内かんと呼ばれるものに書いてあります。
福島さん:
 法律ではないというところがポイントですよね。
大熊社労士:
 そうですね。そして、その中身のもっとも重要となる部分が「1日又は1週の所定労働時間及び1月の所定労働日数が当該事業所において同種の業務に従事する通常の就労者の所定労働時間及び所定労働日数のおおむね4分の3以上である就労者については、原則として健康保険及び厚生年金保険の被保険者として取り扱うべきものであること」という点です。
宮田部長:
 そうそう、労働時間と労働日数と両方を見るんでしたよね。
大熊社労士大熊社労士:
 そうですね。今回、この内かんの内容が法律へと移るのですが、この法律に移る際に少しだけ取扱いが変わりました。具体的には、1週の所定労働時間および1月の所定労働日数で見ることになったのです。
宮田部長:
 ん?変わってないじゃないですか?
大熊社労士:
 そう見えますよね。ポイントは「1日又は」という表現が取れていますので、今後は1週間の所定労働時間と1ヶ月の所定労働日数の2つで判断することになります。
宮田部長:
 ん?でもそれって、変わるのですか?実態として何も変わらないように感じますけど・・・。
大熊社労士:
 う~ん、確かに該当するケースは多くはないでしょう。ただ、正社員が1日8時間、1週4日の事業所で、パートとして1日6時間、1週3日働くような場合には、10月前後で加入する・しないの取扱いが変わります。
福島さん:
 1日の所定労働時間で見ると、パートさんは正社員の4分の3。そして、1ヶ月の所定労働日数で見ても4分の3。現状の基準であれば、社会保険に加入するということですね。
宮田部長宮田部長:
 それが、1週間の所定労働時間で見ると、正社員は32時間、パートは18時間。あ!1週間で見ると、パートさんは正社員の所定労働時間の4分の3に満たないじゃないですか。なるほど~、そういうことかぁ。
大熊社労士:
 そうなんです。ケースとしては多くはないかと思いますが、きちんと押さえておきたいですね。さらに通達では、もう少し詳しく留意点が示されています。それは、4分の3未満の契約をしていても、その契約内容と実態が乖離していることが続いている場合には、実態を確認して取扱いを決めるよとなっています。
福島さん:
 1週間25時間の契約なのに、ずっと35時間働いているようなケースですね。
大熊社労士:
 はい、その通りです。その流れとしては、事業主等にヒアリングをし、タイムカード等の書類を確認し、残業等を除いた実際の労働時間または労働日数が直近2ヶ月で4分の3基準を満たしているような場合には注意信号。その後も4分の3基準を満たすような状態が続くことが見込まれる場合には、社会保険に加入することになります。
福島さん:
 2ヶ月間の実態と、今後の見込がポイントになりそうですね。
大熊社労士:
 そうですね。表現として「残業等を除いた実際の労働時間」とありますので、どこまでどのように受け止められるかは分かりませんが、当然、社会保険に加入させないために雇用契約書上の所定労働時間を短くし、常に残業させるというようなことはもってのほかです。きちんと契約書の内容と実態を一致させておく必要があります。
福島さん:
 そうですね。現場にもこのパートさんはどのように勤務する人なのかをしっかりと認識してもらい、業務指示を出してもらうことを徹底します。
大熊社労士:
 そうですね。よろしくお願いいたします。

>>>to be continued

[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス
 こんにちは、大熊です。今日は4分の3基準について確認しました。次回は、社会保険の適用拡大となる事業所で、新たに社会保険の対象となる人の要件について確認しておきましょう。


関連blog記事
2016年5月23日「社会保険適用拡大(1)パートタイマーへの社会保険の適用拡大が始まります」
https://roumu.com/archives/65742081.html
2016年5月18日「通達で示された社会保険適用拡大後の「4分の3基準」取り扱い」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/52104501.html
2016年5月17日「必見!ついに公開されたパートタイマーへの社会保険適用拡大のQ&A」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/52104428.html
2016年5月18日「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大Q&A集」
http://blog.livedoor.jp/leafletbank/archives/51408571.html

(宮武貴美)
http://blog.livedoor.jp/miyataketakami/

当社ホームページ「労務ドットコム」にもアクセスをお待ちしています。

facebook最新情報の速報は「労務ドットコムfacebookページ」にて提供しています。いますぐ「いいね!」」をクリック。
http://www.facebook.com/roumu