最近、ハラスメントの問題が大きくなっています

 大熊が服部印刷に到着すると、服部社長が福島さんと談笑しているのが見えた。今日は服部社長にも聞いてもらえる話にしようと思い、大熊は玄関に向かった。


大熊社労士:
 こんにちは。今日は服部社長もいらっしゃいますので、社会保険の話ではなく、労務管理の問題についてお話しましょうか。
福島さん:
 社会保険の適用拡大の話も大きいのですが、バランスよく勉強していかないといけないですよね。
服部社長:
 では、私も社会保険の件もしっかり勉強しないといけないな(笑)。
福島照美福島さん:
 あ!そういう訳ではありませんよ。実務的な細かな点は宮田部長と私の方でしっかり押さえていますから、大丈夫です!
宮田部長:
 あれ、いま「宮田部長と」って言った?えっ、僕も!?ま、いっか、それでどのようなお話ですか?
大熊社労士:
 はい。最近、お客様から相談が多い労務トラブルに「ハラスメント」があります。セクシュアルハラスメント(セクハラ)、パワーハラスメント(パワハラ)そして、マタニティハラスメント(マタハラ)等についてです。
服部社長:
 確かに、少し前にマタハラというのは新聞で目にしたりした覚えがありますね。パワハラについてもブラック企業というキーワードと共に目にするような気がします。
宮田部長
宮田部長:
 大熊先生、それらのハラスメントって増えているのですか?いろいろ騒がれれば、加害者になる人の意識も高まって、ハラスメント行為がなくなるのではないかと想像するのですが・・・。
大熊社労士:
 確かにそのような可能性ありますが、厚生労働省が発表した資料によると、平成27年度で都道府県労働局の雇用均等室が行なった指導のうち、もっとも多いものがセクハラであり、7,596件と全体の6割弱になっています。この数字は、平成26年度よりは減少していますが、平成25年度よりも高くなっており、高止まりしているような状況ですね。
宮田部長:
 へぇ。まだセクハラをする人がいるんですね。
大熊社労士大熊社労士:
 そうですね。ただ、内容的には、「お尻を触る」といった誰もが分かるようなものは減っていると想像しています。それよりも好意を持っている人に、恋愛のアプローチとしてメールを送ってしまう。それが頻繁になりすぎて、好意を抱いていない方はセクハラと感じてしまう、というような現代型の案件が多くなっているのだろうと想像しています。
服部社長:
 現代型というのはよい表現ですね。確かにそのようなことが起こっているかも知れませんね。
宮田部長:
 そうかぁ、確かにそういうのはありそうですね。こりゃ、どういうことがセクハラに該当するかというところからきちんと確認する必要がありそうですね。
大熊社労士:
 おっしゃるとおりです。そしてパワハラですが、こちらも高止まりしています。厚生労働省の別の発表資料、「平成27年度個別労働紛争解決制度の施行状況」というもので、「民事上の個別労働紛争の相談件数」、「助言・指導の申出件数」、「あっせんの申請件数」の3つで「いじめ・嫌がらせ」・・・いわゆるパワハラに近いようなものですが・・・これがトップとなりました。パワハラに関するトラブルが後を絶たない状況になっています。
服部社長服部社長:
 こちらは何となく分かるような気がしますね。熱血な上司の部下指導が行き過ぎて、結果、パワハラになってしまうような事例もあるのではないかと思っています。
福島さん:
 私も社内の話で「あの部署の部長はとても仕事ができるから、部下への要求も高いんだよね。部署のメンバーは大変だよ。パワハラ上司かもね」と従業員が話しているのを小耳に挟んだことがあります。ただ、何をもって「パワハラ上司」といわれてしまうのか、その具体的内容は何かしら?と感じたところでした。
宮田部長:
 ぼ・・・ぼくはパワハラ上司じゃないよね?大丈夫だよね?福島さん。
福島さん:
 大丈夫ですよ(笑)。
大熊社労士:
 まさに福島さんがおっしゃった問題がいま、企業が抱える問題でもあると思うのです。どうしても「パワハラ」ということができて、それが世の中に広く浸透すると、本来ではパワハラでないことも「パワハラだ」ということを言われてしまう。もちろん実際のパワハラは絶対になくす必要がありますが、そのことばだけを恐れて適切な部下指導ができないことや、それが原因となって部下を持ちたがらない人ばかりになってしまうのは、企業にとって存続問題になってしまいます。
服部社長:
 部下に遠慮して部下が育たない環境になってしまいますね。
大熊社労士:
 はい、そうです。そのために、どのようなことがパワハラなのか。上司のみならず、部下にもきちんと理解してもらう必要があります。

服部社長:
 一度、全社員に向けて研修を実施することにしよう。大熊さん、講師を引き受けてもらえますか。
大熊社労士:
 はい、もちろんです。マタハラもテーマに含めることにしましょう。
服部社長:
 詳細は、宮田部長調整お願いします。宮田部長よろしくお願いしますね。
宮田部長:
 はい、承知いたしました。

[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス
 こんにちは、大熊です。今年4月には、都道府県労働局内の雇用均等室が、「雇用環境・均等部(室)」に変わり、パワハラや解雇等に関する相談とマタハラやセクハラ等に関する相談の対応が一体的に進められるようになりました。また、来年1月には、いわゆるマタハラ・パタハラなどの防止措置が義務化される法改正が施行され、ハラスメントに対する意識はますます高まります。企業としてもハラスメントの発生を未然に防ぐための対応を進めましょう。


参考リンク
厚生労働省「都道府県労働局雇用均等室における法施行状況について」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/sekou_report/
厚生労働省「「平成27年度個別労働紛争解決制度の施行状況」を発表します」
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000126365.html

(宮武貴美)
http://blog.livedoor.jp/miyataketakami/

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